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 光になりたかった。

 それが、少年が最後に残した願いである。


 交通事故。

 まばらに通行人が歩みを進める道路の一角で、無残にも大型トラックに撥ねられた一人の少年が居た。

 質量を持った鉄塊が、風に飛ばされる落ち葉のように軽々と少年の体をはじき飛ばした結果、その場に崩れ落ちた彼はもはや虫の息となっていた。


 沈みゆく体。手や足の感覚が抜けていく。なのにも関わらず少年の体は燃やされているかのように熱くて、赤々とした鮮血が全身にべっとりと付着している。


 もう彼の人生は長くなかった。

 徐々に消えていく視界。明るさで満たされていた光景が暗雲降り注ぐように少しずつ、黒に満ちていく。


 そんな彼の周りには、多くの人が駆け付けていた。

 死に近づいていく彼を助けようとしている人々だ。ある人は車が行き交う交通の整理をしようとし、ある人は現状を打破しようと手持ちの携帯電話を鳴らし、またある人は彼の意識をなんとか現世に戻そうと声を掛け続ける。


 少しずつ世界が見えなくなっていく少年であったが、彼の心は安息と隣り合わせだった。周りの人達は自分を本気で助けようとしてくれているのだと、感じることが出来たからだ。そのひととき、彼の心には光が降り注いでいた。死んでいくことによる絶望に浸った心に差し込んだ、一筋の光。彼の気持ちを奮い立たせるには充分だった。


 だからその時、少年は考えていた。

 もし自分が次に生まれ変わったときは……誰かの心に降り注ぐ光になりたいと。

 絶望を吹き飛ばし、どんな暗闇の中からでも充足の輝きを届ける、光であろうと。


 彼の生きる意味、原動力は、光のような人間になることだった。

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