全裸。ぶっかけ。
攻撃をモロに受けた竜也は、着ていた服が全て焼け焦げ、全裸になりながらも耐えきっていた。
耐えきる、というよりは全く効かなかったというべきか、竜也に肉体的ダメージは全く入っていなかった。
見知らぬ人々に己の裸体を晒すという精神的なダメージはそこそこ竜也のキャパシティを削ったが…。
腕を前に交差させ、身を守る姿で雷が過ぎ去った後も、依然として立つ竜也に一団は内心、驚愕と混乱で渦巻いていたが、それを表には出さず、再び竜也への攻撃を再開した。
「魔法兵!!ツースリージロ!!」
隊長の指示で詠唱が始まる。
一方竜也は、人間離れした自分の身体に感動を覚えていた。
(すげぇ!俺の身体すげぇ!あいつらの魔法全く効かないわ!無敵なんじゃね?)
たった一度ノーダメージで攻撃を耐えただけではしゃぐ竜也。
魔法という未知の物に対する恐怖が無くなった竜也は、次に物理攻撃を警戒する。
魔法兵達の詠唱など耳にはいっていない。
竜也の目に映るのは、手入れ行き届いた剣、槍、斧、盾などだ。
竜也は想像する。
あの剣が自分の身体を薙いだら、槍が突き刺さったら、斧を叩きつけられたら…。
シミレーションではどれも無事ではすまない。
しかし、この場を切り抜けるため、身体能力を生かして人質をとる計画を組んでいく。
(キビキビしてるけど、俺の様に異常な動きはできなさそうだし…)
竜也は推測で、計画の成功を半ば確信する。
それでも刃物が怖い事に変わりはない。
(計画の開始は次の攻撃が終わった直後。いける、やれる!)
自らを奮い立たせ、四肢に力を込めて、いつでも飛び出せる状態を作る。
すると魔法兵達の詠唱が終わり、魔法を発動させる。
『山覆う粘波』
竜也の前に突如現れたのは大波。
さらにソレは糊やスライムの様な粘つきをみせ、ゆっくりと竜也に襲いかかる。
避けるつもりが毛頭無かった竜也は、無防備に粘っこい液体を被った。
ドロドロのソレは粘性によって相手を拘束するための魔法なのだが、竜也にとっては屁でもなく、ただある物を想起させ不快になるだけだった。
「気持ち悪りぃなクソが!!」
拘束に成功したと高を括っていた一団は、突然動き出した竜也にまたもや驚愕する。
そんなことはどうでもいい竜也は、「ぶっかけられた」事に激怒していた。
「いっぺん死ねや雑魚どもがあああぁぁ!!!」
竜也は憤怒の形相で一団へと突っ込んで行った。
全裸で。