スリー、ジロ、ジロ!!
人称を揃える為に、今回も数多の物語が消えて行きました。
一団の前に突如現れた黒い壁。
200人前後の彼らを包む程の大きさのそれは、日光を遮って暗闇へと彼らを引きずり込んだ。
「ぜ、全班中央へ固まれっ!遮断魔法展開!」
隊長が即座に指示を飛ばし、兵達は迅速に行動を開始する。
そして土の波に押し潰される前に遮断魔法は半球状に展開され、波を割って一団の命を守りきった。
しかし遮断魔法とは名前の通りに遮断するだけなのだ。
ボールの様に中と外を遮断はしても、外からの力には対抗できない。
魔術師の力が強ければ鉄のボールの様に圧倒的な防御を生み出せるが、咄嗟に発動させた魔法のせいか、展開させた魔術師の力量よりも弱いものになっていた。
故に彼らは、命に別条は無くとも、遮断魔法がひしゃげて地面に倒れ伏していた。
そんな一団に竜也はゆっくりと近づく。
「おいおい、結局潰されてるじゃん。偉そうにしといてソレとか、センスあるよお前ら、色々と」
竜也が煽っても彼らはうめき声をあげるばかり。
さっきのお返しと一方的に竜也は話続ける。
「魔女だっけ?そいつがなんだか良くわかんねえけど、怒りヶ丘ってあの焼け野原だろ?そこの小屋に住んでたクソ女ならとっくにくたばってるよ。
ギャーギャー喚くだけのお前らは知らなかったと思いますがね。」
「ぐっ、そ、それは…本当か」
指示を出していた隊長らしき人物が苦しそうに問いかける。
「えっ俺の言葉信じるんすか?人間性疑うよマジで。
さっきまで話聞かなかった癖にボコボコにされたら素直になるとか、お前の処世術かもしれないけど、気持ち悪いね。長い物には巻かれろ?反吐が出る。」
そう言って竜也は隊長の腹を蹴り上げる。
軽々と飛んだ隊長は、折り重なった兵達の上に豪快な音をたてて落ちた。
「はっ!されるがままかよ、そんな気持ち悪く育てた親の顔が見て見たいわ。ブッサイクなんだろうな。」
竜也がそう吐き捨てると雑多に転がった兵達の中から一人が立ち上がった。
華奢な身体つきをした彼女は、修道服らしき物に所々プレートの付いた武装をしていた。
隊列の奥に配置されて居たのだろう。
竜也からそれなりに距離のある位置に佇む彼女は、右手を前に出して叫ぶ。
「女神降り立つ慈愛の秘境!!」
右手が光り輝いた後、彼女は意識を失い、ふらっと倒れる。
なにがしたかったんだ、と竜也が呆れていると兵達がモゾモゾと動きだし始めた。
驚く竜也をよそに彼らは次々に立ち上がる。
そして先程と変わらない隊列を組み直すと、再び竜也と対峙した。
「姫様ありがとうございます。」
ボソリと呟いた隊長の言葉に、あいつ姫だったのか、と王女に恥じない彼女の美貌を思い出している竜也に、攻撃命令が下された。
「第1級戦闘!!目標前方正体不明の男!!魔法兵!!スリー、ジロ、ジロ!!」
魔法兵達が詠唱を始める。
竜也はスリー、ジロ、ジロでなにがわかるんだよ、と考えを張り巡らしながら魔法兵を警戒していた。
詠唱は竜也の思っていたよりも素早く終わり、魔法兵達が揃って叫ぶ。
『雷の瞬撃!!』
すると竜也に大木の太さもありそうな雷が放たれる。
予想していなかった攻撃に竜也は、回避もままならず、全身に雷を受けた。
色々と世界観などの設定は決めてあります。
しかし、そういった物は物語の中で出していきたいので、意味不明な所などは質問なさって下さい。
なるべく早めに説明を話に書いていきたいと思います。