魔法少女・残念(33)
デブと歩いて300M。
薄暗い雰囲気の寂れた建物が豚の店らしい。
「へへっ、どうぞ中へ。」
導かれるまま、小汚い店内へと入っていく竜也。
肉は揉み手をしながら竜也の後へと続く。
「うへへっ、兄さんどんな奴隷がお望みで?」
汚い笑みを浮かべながら竜也に擦り寄る肉団子。
それを竜也は気にも留めず、店内を物色していく。
「げへへっ、兄さんこいつはどうです?正真正銘サキュバスの女子!証明書付きですぜ」
「こいつがサキュバス?…貧相だな。」
二人が眺める檻に入ったサキュバスは、種族ではあり得ないほどスタイルが悪かった。
まな板寸胴薄い尻。顔は悪くないのだが、情欲を駆り立てるものではない。
あと、ぶっちゃけ美人って程綺麗じゃない。
言いたい事を言い終えると竜也は別の檻へ移動する。
サキュバスは檻の隅で泣いていた。
ちなみにお値段金貨50枚、サキュバスという種族の箔だけである。
「ぶひひっ、兄さんこいつはどうです?元Aランク冒険者の戦士!下手な剣じゃかすり傷一つ負いませんぜ!」
デブの言う通り鋼のように鍛えられた体、鋭い眼光、凄まじい威圧感を放つ戦士だ。
ただし、隻眼隻腕である。
この店にまともな奴隷はいないのか、と竜也は項垂れる戦士に一瞥もくれず、次の檻へ歩き出した。
「ひょっひょっ、兄さんこいつはどうです?魔法使いですぜ!それもトップクラスの!得意な氷魔法は夏のお供に最適ぃ!」
笑い方の安定しない豚の声を聞き流し、竜也は檻に入れられた少女を観察する。
年齢は12から15ほど、スタイルは年齢に対して普通、容姿はよくもなければ悪くもない。
髪はボサボサ、生気のない瞳で竜也の足元をずっと見ている。
「こいつの欠点は?」
「へ?」
「こいつの欠点だよ。目が見えないとか耳が聞こえないとか」
「へ、へい、無口で無抵抗なのですがなにぶん受動的過ぎる所がありまして、命令を受けないと一日中動かない事もちらほら。…あと容姿が微妙な点でしょうか」
竜也は小太りの応えるを受けて一考した後、小さく買った、と呟いた。
「へ?」
「だからこいつを買うって言ってるんだ。幾らだ?」
「へいっ金貨33枚ほどで」
「ん」
金袋からきっかり金貨を取り出し、即金で支払う。
「ありがとうござーす!!」
満面の笑みで料金を受け取った店主は、竜也に首輪を渡す。
「こちらの奴隷紋を首にはめていただければ商談成立です。」
首輪を受け取った竜也は、迷わず開けられた檻へ入り少女に首輪を付ける。
その時竜也はもう一度少女を観察する。
ボサボサで腰まで伸びた黒髪、生気のない瞳、微妙な容姿、ぼろ切れを纏った13才少女。
何と無く買ってみた竜也だが、この先の行動を決めていなかった。
そこでとりあえず少女に
「俺から3M以上離れるな」
と命令し、店主の元気な見送りを受けながら目的も無く歩き始めた。




