謁見
時は飛んで飛んでアスターン公国の王城。
その間はなんてことない、魔女の丘から炎に見送らられ、姫を人質…侍らせながらゆっくりと向かって来ただけ。
玉座の前で跪き、女王の来訪を首を長くして待つ竜也は、大きな欠伸を一つ吐き出した。
すると欠伸に釣られたように誰か、玉座の間へと入ってきた。
(あくびちゃんの登場か?)
あまりにもタイミングが良すぎたので肩を震わせて笑いを堪える竜也。
「おもてを上げてください」
まるで日本のかあちゃんが電話に出る時の様な声音。
その声を懐かしく思いながら竜也は顔を上げた。
玉座にはこれまた美しいべっぴんさんが座って居た。
金髪碧眼泣きぼくろ。三拍子揃った顔の造形は元の世界で見たことがないレベルだった。
「タツヤ?でしたっけ?私に謁見したいという事でしたが、なにかお話が?」
「ええ、魔女について少し」
「そう、貴方は魔女の丘から来たのでしたね。お聞きしましょう。」
「結論から言うと魔女は死亡しました。」
「それは娘から聞きました。それで貴方は何故魔女の丘に居たのですか?」
「魔女を殺して勇者になろうと思いまして。乗り込んだまではいいのですが、既に魔女は事切れていました。」
「魔女を倒して勇者に?面白い事を思いつくのね。いいわ、監視は解いてあげます。あと、魔女の情報として国連から金貨10枚を与えます。話はこれで終わりかしら?」
こんな馬鹿みたいな言い訳で通るのか、と呆然としていた竜也の心中を悟ったのか女王が声をかける。
「娘が…第二王女が貴方の事を気に入っていてね。女の勘とは当たるものよ。」
そう言ってあくびちゃんは謁見の間からゆっくりと退室した。
其の後は辺りにいた衛兵に促され竜也も退室。
大臣らしき人から金貨10枚を受け取った竜也は城から追い出された。
突然自由になった竜也は、これからどうすっかな、と金貨を握りながら呟くのだった。