悪役
雨音に混じる地響きは、確実に小屋へと近づいてきていた。
しかし音が小屋の手前に聞こえると、金属同士を打ち合わせた耳障りな不協和音と共にぱったり聞こえなくなった。
「な、なんでしょう今の音」
クソ女二号はすっかり怯えて、部屋の角に若干小さくなっていた。
音に心当たりのある竜也は、ゆっくりと立ち上がり出入り口へと向かう。
(頑張ってダーリン!)
クソ女一号がゆらゆらと体を動かしていたが、竜也はガン無視を決め込んで小屋の外へと出た。
そこにあったのは竜也が予想した通り、結界に阻まれ高々と積み上げられたマヌケ兵団の姿だった。
先陣を切った隊長は、見事部下の下敷きにされている。
隊長に話のあった竜也は山を蹴り飛ばして散りじりにした。
「おーい、隊長サン生きてますか?」
竜也が呼びかけるも突っ伏したまま動かない隊長。
仕方なく竜也は、隊長の首根っこを掴んで、背中から軽く地面に叩きつけた。
「くはっ」
肺から無理矢理空気を出され、呼吸困難になる隊長。
その苦しむ姿を見ながら内心背骨が折れなくて良かった、と安堵した竜也だった。
隊長が息を整える間、竜也は思案する。
一団の到着が速すぎるのだ、竜也が小屋に到着して何時間経ったのか、正確にはわからないが人間の走れるスピードではない。
大方魔法でも使ったのだろうが、これだけの人数を数日短縮して移動させるのだ、魔法ってすごい。竜也は純粋にそう思った。
「き、貴様…姫を」
「姫なら無事だ、俺の要求を飲めば、の仮定だが」
「何が望みだ」
「そうだな…とりあえず、お前らの国を治めている奴に合わせてもらおうか」
竜也は自分がちょっと悪役になった気がして、ニヤニヤしながらそう告げた。
新しい物語書きたい。
どうせ飽きるけど書きたい。