キャラメル
「落ち着いた所で、名前は?」
二人共服装を整え、今にも雨が降りそうな空の下で向かい合う。
「えっ、く、クラメルです。クラメル・ビー・バッハ・アスターン」
「へー、無駄にゴツくて長い名前だな。姫なんだっけ?」
「はい、第二王女です」
クラメルは何の警戒無く竜也の質問に応えた。
(あれ?俺って魔女扱いされてなかったっけ?)
「キャラメルさん、俺が怖くないの?」
「えっ、確かに強面ですが、恐怖を煽られる程では。あと、クラメルです」
「いや、魔女扱いされてるんじゃないの?俺」
「近いてわかりましたが、貴方からは魔力が感じられません。たとえ魔女でもそこまで完璧な隠蔽魔法は使えませんので。」
部隊の後方に居たクラメルは、竜也が魔法を難なく受け止めた事実を知らない。
その異常性を少しでも知っていたなら、彼女は警戒を続けていただろう。
「それでは、私の魔女疑惑は晴れたという事でしょうか」
突然敬語に変わる竜也。
「えっ、はい。私の中では白です。…そういう言葉使いも出来たんですね。私一応王女ですよ?」
「でさぁキャラメルさん、色々と教えて欲しい事があんだけどぉ」
「クラメルです。王女に敬意を払わない人には何も教えません」
(うるさいなコイツ)
「君人質なんだよ?立場わかってる?」
「私に何かあったら、貴方もただじゃおきませんよ」
「そうか、じゃあ」
「な、ナニをするんですか!?」
竜也は問答無用でクラメルをくすぐり始めた。
効果は抜群だ。彼女は声も出せずビクビクを震えるばかり。
「ほーらほら、俺の質問に応えてくれるかい?え?」
息も絶え絶えに、クラメルはコクコクと頷いた。
「じゃあまず、あの二つの太陽は何だ?」
「ぁ、あれは、夏に南を向いて、東がアズマ、西がウェートで、この星の衛星、です」
意識が朦朧としているのか、この世界の常識的な質問に何の疑問も持たず応えるクラメル。
竜也は都合がいい、とクラメル先生に色々教えてもらうことにした。
「衛星?恒星が?んじゃ季節とかどうなってんの?」
「この星は、一年をかけて、自転します。アズマとウェートは、楕円を描いて公転、してるので、日照時間の長い時期が夏になります。」
「へー、んじゃ魔女ってなに?」
「それは…」
もういいや