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憤怒の王  作者: スモーキー
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ちょろい女

飛翔を数度繰り返し、魔女の家へと辿り着く。

着地の度に作り上げられた小さなクレーターが、焼け野原の景色を乱していた。

そんなことには目もくれず、人質を抱えて小屋に近く竜也。

しかし、突然何かが竜也の腕を引っ張り、後ろへつんのめった。

何事か、と人質を見てみると、姫が空気に潰されていた。


その空間だけ空気が固体になったように、むぎゅーっと押し付けられている人質。

押しても引いても変わらない、竜也は入れるが姫の接近は阻まれる。

竜也は結界が貼られている、と結論をだした。

人質を置いて、渋い顔で小屋へと入っていく。

そこでは竜也の予想した通り、暖炉の中で怒り狂ったように暴れる炎の姿があった。


魔女はまだ生きている。

肉体はないが、炎として竜也の事を監視し続けている。

その現実に竜也は呆れて何も言えなくなり、無言でタバコの作製に取り掛かる。


(私がいるのに他の女を連れてくるってどういう事〜?ちょっとダーリン聞いてるの?)


そんな声が聞こえてきそうな動きをする炎にツバを吐きかける。

そのツバを嬉しそうに飲み込む炎を見て、やってしまったと、溜息をつく竜也だった。


タバコを燻らせながら、小屋を出て人質の元へと向かう。

しゃがんで端正に整った姫の美貌を覗き込み、その顔に吸い込んだ金の粒子を吐きかける。

すると煙を吸い込んだ人質が突如目を覚ました。


「お、起きたか?」


竜也が声を掛けても警戒しているのか言葉を発しない。

しばらく竜也を睨んでいたかと思うと、その目が驚愕に見開かれる。


「どうした?」

「そ、それは、き、金粉草?」


よく通る声でそう言って、彼女が指差す物は、竜也の左手に持つ異世界タバコ。


「ああ、そうだけど?」


竜也がそう応えると、彼女は醜く白目を向いて再び気絶した。

なんなんだコイツ、と思いながら竜也はタバコを吸って彼女が目覚めるのを待つことにした。



竜也がタバコを吸い終わり、しばらくすると、彼女はゆっくりと目を開けた。


「おはよう。」


一服の後で機嫌が良い竜也は、優しく声をかける。

やはり警戒して無言を貫く彼女は、竜也の姿を見て顔を真っ赤に染め上げた。


「な、なんで裸なんですか!?」


両手で目を塞ぎ、叫ぶように竜也へ訴えかける。


「お前の仲間に燃やされたから。」


美女と美少女の中間の様な彼女に、全裸を見せつける事で、若干の興奮を覚えた竜也は、しれっと返す。


「ふ、服を着てください!」

「着るものがないんだよ。」


予想していた言葉に、竜也は当然の様に応えた。

すると彼女は、


「え、服がないんですか?」


両手で目を塞ぎながら、竜也の方を向く。

見えねぇのに、こいつ馬鹿か。と考えながら竜也は、ああ、と肯定した。


「…わかりました!私の服を貸します!」


目を瞑りながらガッツポーズを作って立ち上がった彼女は、竜也に背を向けて武装修道服を脱ぎ始めた。

その事に何の感動も覚えない竜也は、ぼんやりと生着替えを見つめる。

修道服を脱ぎ終えた彼女は、キャミソールとレギンスらしき服装で、竜也の方を見ない様に修道服を渡してきた。


「ありがとう。でも、これ全裸の上に着てもいいの?」

「あっ、だ、ダメです!下着は着けてください!」

「下着もないんだよね。」


やっぱりコイツ馬鹿だ。と確信を持った竜也は、肌に触れないよう修道服で前を隠しながら小屋へと入っていった。

そして、ベッドのシーツと裁縫道具を持って彼女の所へと戻る。


「これで適当に下着作れる?」


おずおずと目を開けた彼女は、竜也の差し出している物を見る。


「作れます!」

「んじゃ、よろしくね。」

(馬鹿って扱いやすい)


馬鹿にかなり失礼な事を思いながら、竜也は小屋にある女物の服を彼女の為、取りに行くのだった。

小屋へ入ると炎が竜也に向かって騒いでいる。


(ちょっと!あの女に構いすぎじゃない!?それに!私の服なんだから私に一言言ってから貸しなさ、にゃぁ〜ん)


ツバをかけて黙らせた竜也は、適当に服を選んで小屋を出た。

彼女に服を渡した竜也は、彼女から下着を受け取る。


それはもう酷かった。


この短時間で作ったとは思えないほど針が潜った後が残り、足を通す輪は左右で大きさが違い、腰の部分は斬新な切られ方をしている。


(異世界の男物の下着ってこんなんなのか。いやでも、女物は普通だったし…。)


竜也が思考を巡らせていると、彼女が小さな声で呟き始めた。


「す、すいません。私不器用で、神聖魔法以外何も出来なくて、頑張ったんですけど…。」


そう言って彼女が見た先には、無残に殺害されたシーツの姿があった。


(馬鹿にハサミは使えません。これ、ことわざね。)


竜也は溜息をつきながら無言で服を着たのだった。

感想等お待ちしております。

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