ランラララン
祝10話
文字数少ないからどうっていうわけではないんですが…。
怒りに満ちたとしても竜也の計画に変更はほとんど無い。
「人質を取り交渉する」が「人質を取り魔女と呼ばれるクソ女の墓標に連れて行く」に変わっただけだ。
実際にクソ女の墓標を見て、竜也が魔女ではない、と判断することを祈って。
一団の前へと駆け出した竜也は、地面を蹴り彼らの後列に飛び込む。
部隊の後ろに配置されている奴らは、先ほどの姫とやらのように、武器を持たず、戦闘よりも補助を重視していると踏んだからだ。
突然の竜也の奇行に兵達は容易く侵入を許し、敵が内部のため隊列が混乱している。
その隙に竜也は素早く、横になっていた一人の修道女を抱え込み、跳躍で再び一団を飛び越えて森へと向かった。
その後ろ姿を確認し、彼らも慌てて森へと進軍を開始する。
怒りのあまり、それなりの速度で森へと向かっていた竜也は、一団との距離がかなり離れている事に気がついた。
このままでは彼らが竜也を見失い、クソ女の所へと連れていけない、と思った竜也は、人質を下ろして少し待つことにした。
そこで竜也が驚き、若干の冷や汗をかいたのは、攫った人質が「姫」とやらだったからだ。
考えてみれば横になっていた時点でわかっていた筈なのだ。
しかし怒りに身を任せていたためか、気付くのが遅れてしまった。
(これ、奴ら死に物狂いで来るんじゃないか?姫だし)
竜也の予想は的中し、近づいてきた一団の顔はまるで般若の如く、怒りで歪んでいた。
怒った人ほど怖い者はない。
何をするかわからないし、何をされるのかもわからない。
竜也はとりあえず森まで人質を抱えて飛ぶことにした。
助走をつけて飛び上がる。
一団は撃ち落そうと、進軍しながら魔法を放つが、竜也の速度に魔法が追い付けず、命中することはなかった。
森の入り口まで難なく到着した竜也は、一団が来るまで金粉草を探すことにした。
(珍しい草だって書いてあったし、暇つぶしにはなるだろ)
暇つぶしなのだから見つけても、見つけれなくてもいい、と竜也は考えていたが…。
(10分で見つかった…)
一団が進軍しているのは、歩いて丸1日ほどかかる草原だ。
10分やそこらで到着するものではない。
(次の暇つぶしは一服の後に考えよう)
そう思いたち、タバコを制作しようとしたが、道具各種が入った魔法の袋は先の戦闘で消滅していた。
そのことに竜也は苛立つ。
(雑魚共が楽しみを奪いやがって)
人質が何か持っているかもしれない、と思い付き、姫を叩き起こそうとする。
「おい、起きろ」
「んんっ」
姫は、竜也の乱暴な起こし方に眉を顰めるが、起きる気配はない。
仕方が無い、と竜也は人質を置いて、草原を駆ける一団に軽く飛んで近づき、叫んだ。
「魔女の家で待ってるから〜!!」
少しお酒のCMを意識して目的地を伝えた後、人質を回収して焼け野原の方へ飛ぶのだった。