ブルーマンデー
竜也は激怒した。
いつも通りの日曜日だった。いつも通りの就寝前の一服、と思い箱を漁るが…ない。
一本も入ってない。箱を振ってみるがシャカシャカと葉っぱが擦れる音がするだけで…出てこない。ソフトの奥に挟まってる現象と思い、指でほじくり返すが…ない。
箱をビリビリに引き裂いても……ないっ!
時刻はもうすぐ日付が変わろうとしている。一番近いタバコ屋はもう閉まっているし、次に近いのは少し先にある駄菓子屋の自販機。コンビニはさらに遠かった。
ため息をつきながら、適当にジャージを着て、財布を持ち、竜也は家を出るのだった。
やや早足で向かった自販機は暗い駄菓子屋を寂しく照らしていた。
財布から千円札を取り出しながら自販機へ向かうと…
『いらっしゃいませ!!冷たい〜いお飲み物は如何ですか?』
「うるせぇっ!!」
ガンッ!とタバコ自販機の隣にある飲み物自販機に蹴りをいれる。
些細な事に苛立ちを見せる、明らかにニコチン不足である。
そして念願のタバコの自販機に千円札を入れる。
…ウィーン…ウィーン。
返ってくる千円札。
「このポンコツがっ!!」
タバコの自販機にも蹴りをぶち込む。
気を取り直し、向きを変えて千円札を入れ直す。
今度は赤い「1000」が光り、しっかりと反応した。
『タス…』
タスポを素早くかざし、お目当ての「メイビーセブゥンス」を連打する。
カタカタッと落ちてきた箱を手に取り、無造作にビニールを剥ぎ取る。
紙を抉るように破り、タバコを一本咥えてポケットをまさぐるが…ライターを忘れていた。
無言で自販機を蹴る。
そしてふとタバコの自販機を見ると、隅にライターが売ってるではないか!!
ニヤケ面で小銭を取り出し、ライターを購入する。
値段は四百円、ボッタクリもいいところだが、背に腹はかえれない。
早速ライターを手に取り火をつけようとするが、…固い。
「チャイルドうんたら」だとしても固すぎた。
もしかしたら横をカチッと押してセーフティを外す奴かも、と思い調べてみるが、そんなものは見当たらない。
それによく見てみると、このライターは若干変だった。
見よう見まねで作った様な、雑なライターだった。
だが、そんな事よりも火が着けばいいのだ。
もう一度ライターを握り直し、掛け声と共に力を込める。
「ファイアッ!!」
パキッ、ボォォォ
ライターの中で何かが砕ける音と、感触と共に火がついた。
竜也の立っている辺り一面に…
驚きのあまり半開きになった口から、ポロッとタバコが落ち、火の海に飲まれて消えていった。
そして竜也は燃え盛る炎を見ながら、意識を失った。
目が覚めるとそこは自室のベッドの上だった。
という事はなく、だだっ広い焼け野原だった。
横になっていた身体を起こし、立ち上がって辺りを見回す。
どこを見ても…いや、足元には花が添えられた墓標らしき物と、背後には小さな木造の小屋があった。
それ以外は草一つ生えていない大地が広がるのみ。
「まて、落ち着け、落ち着くんだ竜也、とりあえず一服だ、タバコが俺を救ってくれる」
そう思いたち、ズボンに入れておいた箱を取り出そうと、ポッケに手を入れようとしたが…
ない。タバコがない。ポッケがない。ジャージがない。服がない。
辺りを見ても落ちていない。
竜也は全裸で焼け野原に佇んでいた。
「クソがっ!!」
竜也は激怒した。