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 02

「ふむ……」

 口頭である程度説明してもらうしかないだろう。

 ちょうど大皿に乗ったソーセージが運ばれてきた。

 何の宴会かと思われるようなものすごい量にみえる。

「すごいね、注文したものを全部いっぺんに持ってきたのか?」

 サンライズが聞くと、プラータは、え? と顔を上げて

「これ、カリーヴルストですよ」

 そう言った。そこに次の皿、ポテト山盛りだ。

「さ、食べましょう、どうぞ」

 まだ皿が来るから、早くこれから片付けよう、とプラータはがぜん、張り切りだした。サンライズも負けずにフォークを繰り出す。

 ビールがビンごと運ばれてきた。空のグラスが目の前に置かれる。プラータの方はすでにグラスに入った黄金色の液体。浮遊物はグレープフルーツの果肉らしい。

「じゃあ、乾杯」二人は軽くグラスを持ち上げる。

 サンライズは、しばし異国に一人なのも忘れ、アツアツのソーセージに無心にかぶりついていた。カレー味のソーセージなのかと思ったら、普通のソーセージをぶつ切りにしてカレーソースをかけたものだった。どちらにせよ、つまみにいい。ビールもごく普通の感じで美味い。

 ふとプラータを見ると、彼もかなり前向きに食事に取り組んでいる。

 半分くらい済んだところで、次のヴァイセヴルストがきた。これも量が多い。

 置き場所に困ったウェイターが、ポテトの皿をぐいと押して、無理やり場所を作っていった。がちゃんと皿が鳴ってポテトが山から数本、テーブルに滑り落ち、一本は彼の膝にまで転がり落ちる。ウェイターはそれを一瞥すると、わずかに肩をすくめて去って行った。

 うん、謝ってくれなくても別にいいんだ。

「食いきれるのかなあ」

 少し心配になってきた。プラータは平然と

「どうだろうなあ」

 それでも手を止めずに、いい勢いで口を動かしている。

 少し腹が落ち着いてきてから、ようやく本題に入る。

「旧東側に、今度取り壊しになるビルがあるんですが」

 かつて、国立美術館の一施設だったらしい。

「そこで、レンブラントではないかと疑われる一枚が見つかったんです」

「ふうん」ボビーならばここで反応がかなり違うのだろうが。

「名前くらいは知ってる」確か昔のニンゲンだ。

「ダーレムをご存知ですか?」

 いや、知らんなそんなヤツ。そう言うとプラータは可笑しそうに言った。

「ダーレムは、地区の名前なんです。東西に分かれていた時代には、莫大なコレクションをダーレムの美術館で展示していました」


 見つかった絵は、早速ダーレムに運ばれた。

 今までダーレムで展示されていた十七世紀のヨーロッパ絵画は次々と近くにある新しい絵画館に移されていたのだが、レンブラントとその周辺の作品だけは、まだ全て残されていたので、調べるにはもってこいの場所だった。


「レンブラント再調査委員会というのができたんです、少し前に」

 今までずっとレンブラント本人の作品だと思われていたもの、あるいは逆に他の人物の手によるものだと思われていた作品などがすべて、真偽を問われることとなった。

「日本でもレンブラントは人気がある」何枚か、それらしいものを思い出した。

 ボビーにも言われていたし。


―― リーダー、ベルリンに行くなら、まず美術館と博物館よ。

 いくらリーダーでも、レンブラントくらいは知ってるでしょ?


「新しく見つかった絵は、スケッチ(素描)でした。小さいものでしたが」

 プラータが身を乗り出して、ポテトの皿をぐいと押した。中身が跳ね上がり、半分くらいこぼれてしまう。サンライズも更に膝に数本くらった。

「うわあすみません」あわてて皿を押さえる。「つい話に夢中になって」

 やはりうっかり者だ。粗忽ということばを思い起こさせる。


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