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 02

 今回は任務というより研修のようなものか、サンライズにとっては初めてのヨーロッパ、ドイツに一週間の出張だった。

 リーダーになると、ミッション以外に年に一度の海外出張が義務付けられている。

 内容はそれほど難しいものではない。各国にあるMIROC関連機関への表敬訪問、またはそちらで進行しているミッションの補佐などが多い。

 言葉もロクに分からない人間がすぐに補佐できるようなシゴトなので、そう危険なこともない。

 今回の仕事は、まずベルリンにあるMIROCのヨーロッパ機関ROCKERにいる特務員と会い、彼の仕事を補佐しながら、ドイツでの犯罪抑止についての対応を学んでくる、という内容だった。

 会うことになっているのは、タウンゼントという男だった。だいたいは単独で行動しているらしい。しかし

「タウンゼントは今いないんだ」

 電話して早々、ベルリン支部長に軽く言われてしまった。

「ヤツが今、ハンブルクに行ってしまってて……戻り予定になっても帰らない」

 それって問題じゃないのか? そう言ってやると

「いや、仕事半分遊び半分だったんで、そのまま休暇に入ってしまったかも知れん。女のコと」

 ドイツ人というのは勤勉なイメージがあったので、そんなに軽いノリの男がROCKERで活躍している、というのが驚きだった。

 ここの支部長も支部長だ。部下がシゴト中なのか休暇中かも把握できていないとは。

 サンライズはあらためて、先にもらっていたタウンゼントの顔写真を眺めてみた。

 金髪でごつい顔、あごが丈夫そうで爽やかな笑み。確かに人生を楽しみそうな感じだった。

「キミに会うのを単純に忘れていたのかも知れない。今回は代わりの人間に担当させるんで、ソイツと一緒に行動してくれないか?」

 相方は、近頃ROCKERのベルリン支部に来たばかりの契約社員だという話だった。

 名前はプラータ。

「写真をいただけますか?」

 そう頼んでみると、申し訳なさそうに

「それがね、まだ身分証明写真しか撮ってなくて……実は数週間前に雇ったばかりなんだ」

 何だって? かなりアバウトではないのか? 彼は眉をひそめる。

「今夜、ホテル前のカフェに行かせるから、そこで直接会ってくれないか?」

「しかし顔が判りませんからね」

「背は185センチくらい、中肉。プラチナブロンド、少し長くて後ろで縛っているかな。眼鏡だし、すぐ分かると思う」

 メガネ族か、仲良くなれるかもな、と少しだけ気分を切り替える。

「彼に今、美術館関係の仕事を頼んでいる。一緒に行動してくれないか? 四日間。こちらの事務所には帰りに寄ってくれればいいから」

「了解しました」

 とにかく、ごめんなさいの一言もない。ベルリンに行く前にボビーからよく言い聞かされていたから、特別驚きもしなかったが。

―― ドイツ人はね、とにかく謝らないから。ごめんねを言った方が負けなの、覚えておいて。

 あまり謝らないアメリカ人からそう言われているようでは、ドイツ人の『負けない精神』もたいしたものなのだろう。

「とりあえず彼の個人調書をホテルにFAXしてもらえませんか」

「ああ、そのホテルにはファクシミリがない。彼に直接持たせるよ」

 面会の時間は今夜18時と決定。サンライズは、ベッドに仰向けになった。

 時差のせいか、ものすごく眠い。そのまま眠ってしまいそうだ。


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