表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/35

黒いバインダーの中身 01

 お集まりの皆さま、と主査がマイクを通して話し出した。

 皆の目がそちらに揃ったその瞬間、サンライズはプラータだけはこちらを見守る中でバインダーを入れ替えた。そして人差し指をさりげなく額に当てる。

 片隅のカメラ脇にいたプラータがかすかに首を動かし、自分も指を上げた。

 主査の進行で、まず館長が挨拶をした。

 何を言っているのかほとんど判らないが、進行表は頭に入れていたので、その時点に神経を集中させた。あと少しだ。

 それでは、と主査がマイクに向かった時、かすかな合図をみた。

 動け。

「Entschuldigung Sie(あの、ちょっとすみませんが)」

 発音もメチャクチャだろうが、彼はさっと前に出た。

 みな、無表情のまま見守っている。

「お話しておきたいことがあります」

 はっきりとゆっくりと、あえて日本語にした。警備すら何が起こったのか、という顔をしている。

 ただし、二人だけわずかに動いた。サンライズは目の端で左後ろにいる一人を確認。

 パウラは気づいただろうか? 衝立のかげにいる彼がわずかにそちらに動いたような気がした。


 よし、今だ。


 彼ははずみをつけて後ろの額絵にダイヴ。悲鳴が上がり、警備が走り寄る。

 ワイヤーが外れ、絵が床に落ちた。装飾の多い額の縁から木の破片が飛び散り、ガラスがこなごなに砕け散り、彼はまともにそれらを浴びた。ご丁寧に、警報ブザーが鳴り響く。

「何をする!」

 いつの間にか目の前に、プラータが躍り出ていた。サンライズに向けて、ぴたりと銃を構えている。プラータが距離をつめようとした時、警備があわてて駆け寄ろうとした、が、

「来るな」

 の一言でぴたりと凍りついたように足を止めた。

 サンライズはいまや、黄金の兜の男を背中で支えるように、床に膝をついていた。

「撃てよ」

 サンライズは割れたガラスの破片を頭からそっと滑り落とし、顔に当らないようにややうつむきがちにしながら、それでも目だけ上げた。

 彼はプラータに静かに語りかける。

「オレと一緒に、この絵も撃ち抜くといい」

 後ろで騒ぎが聞こえ、もう一人の男がパウラたちに捕えられたのをちらりと目に入れた。


 さあ、これで一対一だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ