表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/35

 02


 つい立ち上がる。「今どこだ?」

 荒い息づかい。かなり動揺しているようだ。

「ライニッケンドルフ。アパートの近くです。カバンをどこかに落としたみたいで……」

 携帯とアパートの鍵が入ったカバンをどこかに置き忘れたらしい。財布はコートに入っていて無事だった、スーパーに寄ってさて、家に戻ろうとして気づいたのだと。またかよ、とつい軽く舌打ちが出そうになる。

「今からあなたの部屋に行ってもいいですか? よければ今夜泊めてください」

「あー」額を押さえて少し考えてから、送話口をしっかり押さえてパウラに聞く。

「プラータが今からホテルの部屋に来たいと。携帯と家の鍵を落としたと言ってる」

「かわってもらえないか」手を出したので、まずプラータに

「副支部長のパウラと替わる」

 と伝えた、がプラータは焦っている。

「もうカードがなくて電話が切れそうだ。とりあえず、Uバーンに乗ってそちらに向かいます。連絡は少しの間つきませんが」

「支部から留守電が入っていただろう?」

 その質問には「えっ?」という答えが返ってきた。「ぜんぜん、気がつきませんでした」

 どこまで持っていたか知らないが、カバンに入りっぱなしでは気づくまい。

「ここまで何分くらいで来られる?」

「50分くらいで」では、という間もなく電話が切れる。

「会ったら警察に紛失届を出したか聞いてくれ、すぐ出すように、と。あと、ホテルではなくこちらに泊まるように彼に言って。仮眠室がある」

 パウラはまた仕事らしい顔に戻った。

 ここからホテルまでは案外近い。とりあえずホテルに帰ることに決めたサンライズ、彼女にようやく聞いてみた。

「プラータの個人調書、今見せてもらってもいいか?」

「なんだ、一昨日彼から預かって……ああ、データを電車に忘れた、と言ってたらしいね」

 パウラは脇のキャビネットをがさがさと漁って、分厚いファイルを取り出した。

「登録した名前がヤン・ホルツ、コード『プラータ』で登録日11月16日。個人調書は……」

 支部長のデスクだ、と彼女は舌打ちした。

「11月に入ってから、業務をためている」今日はもう帰ったらしく、デスクの引き出しは副所長でも開けられないらしい。

「直接彼に会ったことは?」

「一度だけ、タウンゼントと話をしていたのを遠くからみた。支部長に、あれがプラータだ、今度から仕事を手伝ってもらう、と聞いていたが」

「彼の出身地はどこか判るか?」聞くと、即座に「ミュンヘン」と答えが返ってきた。

「眼はかなり悪いのか?」

 パウラは、やはりメガネのサンライズに少し遠慮したのかまた宙をみて

「裸眼視力は0.1もない、と書いてあったな、確か」

 それから彼の眼鏡をみた。

「落とすからベルトをするようには言ったが。キミもそのままかけているんだね」

「作戦時にはストラップをするようにはなったがね」

 サンライズの方が視力はいいくらいだろう。

「それから……彼は旧東独に住んでいたことは? 身内などはいるのか?」

「いや、記録にはなかったな……何か気になったのか」

「何となくね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ