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日光

 今日も私は公園にいた。変な二人組みに襲われたのもここだし、赤ちゃんをたべてみたのもここ。食べ歩きをするときもここが多かったし、こころちゃんにあったのもこの公園。何かと新しい発見に縁があるこの公園に今日も足を運んだのは、今私の旨にある穴の埋め方が見つかるかもしれないとの期待を込めてだった。

 その日、公園はそこだけ人間の営みから切り離されたように人気がなく、風の音と、そよぐ木の葉の音ぐらいしか、私の耳には届いてこなかった。

 私はしばらく特に何をするでもなく、ベンチに腰掛け、私は青空に輝く太陽の光を独り占めした。

 暖かく、光溢れる場所。

 それは私が生まれたとき、この世界に対して抱いた感想だった。そのファーストインプレッションは当たっていた。

 そして、私が生まれた時に抱いた予感……私の身体は大きくなっていき、色んなことを知って、たくさんの人と出会う、ということも、あながち間違いではなかった。しかし、期待していた形とははるかに懸け離れていた。

 昨日の夢に出てきたような形で実現することを望んでいたんだろうが、どこで間違ったのだろう。……考えても答えは出なかった。

 だから、日光浴に専念することにした。

 日差しの心地よさに、頭がぽやぽやして、身体が溶けていきそうになる。思考の迷路に陥っている私にとって、まどろみが一番の幸せだった。

 自然、プラス思考にもなってくる。期待するような形ではなかったけど、予感したことは間違ってなかったし、第一印象も変わっていない。それでいいのかもしれない。生まれた時に抱いた期待がことごとく当たるなんて虫が良さ過ぎる話だ。ちょっと違うぐらいのほうが、面白いんじゃないか。

 過去を思い返すと、楽しかった時期もたくさん有った。お兄ちゃんに名前をつけてもらって、可愛がってもらった時期もあった。

 食べ歩きに興じたときもあった。

 うとうとしながら、ちょっと強引に今を肯定する私。

「よお、哀れなコインロッカーベイビーちゃん。……って、言い難いなこりゃ。あいつ等ネーミングセンスねえんだよな」

 そんな私の元に現れたのは、胸の穴を抉る存在だった。顔を上げると、いつだったか食べた、町で轟音を上げて暴走していたような人たちに似た雰囲気の男の人が立っていた。

「お昼寝中だったかな? やっぱり、お子ちゃまなんだな。まあ、俺も昼寝、好きだけどさ。ははは」

 一人でまくし立てるようにしゃべる男に「誰? 何のよう?」と問いかけようとした私の口から、

 血液が噴出した。

 私の胸に、男の腕が突き刺さっていた。

 抉られたのは精神的な胸の穴だけではなかった。

「あ、俺? お前を殺しに来たんだよ。名前は……言いたくねえんだよな。親に付けられた月並みなのも、組織に付けられたセンスねえやつも好きじゃねえし」


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