告白
かなりホラーでダークでショッキングな表現が含まれてるので注意してください
私は自分が生まれてすぐの光景をはっきりと覚えている。
長い間、真っ暗で、でもとても暖かい場所にいた。
そして、いま、そこからでてきた。
……いままでいた場所も、居心地が良かった。でも、今私がいる場所も、あかるくて、きもちいい。
おもわず、声をあげてしまった。
今までいた場所で私を覆っていた羊水とは違う、少し冷たいけど、身体の中を満たしてくれる空気で肺がいっぱいになった。
この場所で、私の身体は大きくなっていき、色んなことを知って、たくさんの人と出会う。
なんとなくだけど、そんな予感がした。
でも、いままで私の居場所だった人……お母さんは、息をあえがせながら私をみて、こう言った。
「……これ、どうしよう」
面倒なことになった。そんな顔をしながら。
そしてしばらくして、今度は狭くて、暗くて、とても冷たい場所に閉じ込められることになった。
生まれたばかりの頭でも、ここに放置されたままじゃ生きていけないことは理解できた。
ここから出たい。
私は強くそう願った。
そうしたら、私を閉じ込めていたロッカーは砕け散った。
私はロッカーの破片の山から這いずり出た。
「なんなの、これ……」
呆然と佇むお母さんの顔には、恐怖が浮かんでいた。
私はお母さんに這いよって行った。
「あたしを恨んでいるの……」
その言葉の意味は、当時理解できなかったが、お母さんに這いよっていったのは、恨んでいたからではなかった。
ただ、私にはお母さんの体液が必要だと、本能的に悟っていたから。
きっともう、この人は、私にとって必要な体液をくれることはないだろう。
生まれたばかりの私でも、そうわかっていた。
だから、お母さんの体液を、余さずいただいた。
美味しかった。
ロッカーから出て新鮮な空気を吸い、お母さんの体液で空腹を満たした私は、今の身体のままじゃ結局まともに生きていけないな、と考えた。
せめて、二本足で歩いて、意志を伝える術ぐらいは欲しい。
なら、そうなっておこう。
私は二本足で立った。
そうしたら、自分がお母さんの体液まみれであることが少し気持ち悪くなった。
お母さんだったものが身に纏ってるもので身体を拭き終わったらちょっと肌寒いな、なんて感じたりもしたけど、服を着るという発想はなかった。
服を着る、という行為はまだ教わっていなかったし、周囲にあった服はたった今私が汚れをぬぐった服。
それに、幼稚園児ぐらいの身体の大きさになった私でも、お母さんだった物の服は大きすぎた。