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8月13日

作者: れいと

そう。あの日は雨だった。


雨の中声を押し殺して泣いたっけ。


泣いてるんじゃないよ。雨のせいだよ。って誤魔化すために。最後まで意地をはって素直になれなかった夏。



5月のある日。彼氏と別れた。もうすぐ嫌な梅雨。

雨なんて大嫌い。嫌なことすべてを思い出してしまう。


部屋の窓から外の景色をみる。薄暗くて雨の音が聞こえると考え事をしてしまう。だから雨が嫌い。でもあいつとなら嫌いな梅雨にいっぱい思い出作って雨が降っても笑っていれると思った。

そんな矢先にゆうきと別れた。



人を本気で好きになる事を教えてくれた人。本気で好かれてうれしいって気持ちを教えてくれた人。好きじゃないメールも好きになった。だからこそ今のあたしは意味がないように思えた。




5月17日。晴れ。

今日はやけ酒してみた。嫌な事を忘れたい。だから友達ときた。そんな時あなたと出会ったんだよね。




飲んだ帰り道、友達がコンビニへ立ち寄った。飲みすぎたらしい。

コンビニの外で煙草を吸いながら友達を待つ。

見覚えがある車が通った。



「ゆうき…」



小さい声で呼んでみた。ゆうきの車かどうかはわからないが同じ車だった。


忘れるつもりが思い出して泣きだしてしまった。声に出さずに涙だけ流した。下をむいてしゃがみこむ。誰も泣いてるなんて気付かないだろう。そう思って泣いた。静かに…。




誰かがあたしを呼んでいる。顔をあげてみると知らない人。



『携帯忘れてったよ?はい。…泣いてるの?』



ありがとうございます。


その一言さえきちんと言えなかった。


あたしは居酒屋に携帯を忘れていたらしい。しばらくして友達が戻ってきてタクシーを捕まえて帰って行った。


あたしは家が近くだから歩いて帰る。その人にもう一度お礼を言うと


『俺この後暇だし話きくよ?ちょっと話しない?』



正直誰でもよかった。一人になるのが怖かった。




ゆうきの事は話せなかった。そんなあたしをみた彼はくだらない話をしてくれた。




あたしは携帯を何気なくみた。一通のメールがきてた。ゆうきからだった



【今からそっち行っていい?】



私は急いで帰ろうとした。いいよ。ってメールを返して立ち上がった。どうしたの!?って腕を捕まれたけど振りほどいて走りだした。ごめん!ありがと!



そう言うと紙を渡されて

『なにかあったら連絡して!』

って言われた。その紙を握り締めて走った。部屋に戻って明かりをつける。




どんなに待ってもゆうきはこなかった。




寂しさがつのる。




ふと目に入ったくしゃくしゃな紙。連絡してみた。




その日はあたしが寝付くまでずっと話してくれた。



彼の名前は恭。あたしの2個上。隣の市に住んでるのにあたしの住んでる市の駅の居酒屋で働いている。



恭ちゃんはあたしの事をアキと呼ぶ。アキラって男みたいな名前が嫌い。って言ったらアキって呼んでくれた。恭ちゃんが呼ぶアキって声が優しくて好きだった。




6月5日。曇りのち雨


恭ちゃんの家に行った。恭ちゃんと遊んでいたら雨が降ってきて恭ちゃんの家に行く事になったから。


恭ちゃんとあたしはその日に付き合った。ゆうきのかわりなら誰でもよかった。優しくてほっとけない恭ちゃんを利用した。




それから一ヵ月、毎日連絡をとった。

時間さえあれば会っていた。悲しくなって泣いているとすぐきてくれた。あたしが恭ちゃんを本気で好きになるまで時間はかからなかった。


離れてるのが怖くてあたしは恭ちゃんの家にずっといるようになった。あたしが帰ると恭ちゃんは仕事でいないけど料理を作って待っていた。待ってる時間は長く感じなかった。幸せな毎日だった。



休みがあえば一緒に買い物にも行った。


それにたまにノートで会話をしていた。夜居酒屋で働く恭ちゃんと、昼間働くあたしは時間が合わない時が多い。


恭ちゃんの字は綺麗であたしの字はくせ字で女の子字だった。




毎日楽しくて幸せだった。恭ちゃんがゆうきへの想いを消してくれた。




でもその幸せは続かなかった。その時はまだ知らなかった…




8月のある日、喧嘩をした。

ぁたしは怒って荷物をまとめてでていった。別れる別れないじゃなく恭ちゃん家にいる事をやめた。それだけのつもりだった。


あたしは家に帰っても怒りがおさまらない。明日電話で文句をいってやろう!それで仲直りして会いたい。怒っていてもやっぱり好きだから…



そう思って眠りについた。




次の日に連絡するつもりがあまりにも忙しすぎてしばらく時間が経った。恭ちゃんからの連絡はない。




8月13日


日付が変わってから電話した。恭ちゃんと電話ごしに話をする。

恭ちゃんは仕事帰りみたいで車の音がうるさい。素直になれず意地をはって自分からはあやまらなかった。そっけない態度をとっていた。電波が悪く電話が切れた。




何度電話しても電波が悪くてかからない。しまいには圏外になり、外にでて電話する。外は雨が降っていた。恭ちゃんはでない。何度かけてもでない。


諦めて部屋に戻ろうとするとメールがきた。

電話が切れてあたしの携帯の電波が悪かった時に送られてきたメールだった。もう30分以上経ってた。




【大好きだよ。俺が悪かった。ごめんね。仲直りしよ?】









それからあたし達は二度と会う事も連絡とる事もなかった。とる事ができなかった。会う事が出来なかった。悲しい別れだった。




素直になれずにつまらぬ意地をはって終わった。最期にあたしも好きだよって言わずに終わった。


最初は立ち直れなかった。恭ちゃんのかわりなんていらなかった。誰でもいいわけじゃない。恭ちゃんじゃなきゃだめだった。







それから一年、恭ちゃんと出会った5月が訪れた。



今は前にすすんでます。恭ちゃんと一緒じゃないけど想いはずっと…心はずっと…恭ちゃんだけだから。







ありがとう。


大好きです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 淡々としてた。最後は意味が分からなかった
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