表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ『瞬きの日』



 ―――それはまだ全てが『完全』だった。




 一人の少女は立つ。目の前に大きな白い丸い光。その光に触れるように少女は伸ばす。しかしその手は短すぎる。少女は何かを望んだ。それは小さくも彼女にとって大切で大きな望みだった。しかしその白く丸い光は叶える物ではなかった。静かに沈黙を保ち、世界を傍観する小さき臆病者だった。


 お願い。と彼女は嘆く。小さくかすれる声で白い光を見つめる。


 少女の胸が大きく膨らんだ。成長でもない。胸の中心に突然針を通されるように矢が生えた。少女は苦痛に顔をゆがめ、倒れる。彼女は虫の息だった。ただでさえ彼女は幼い少女である。やせこけた手足には血管の筋を張り巡るように浮き出ている。


 靴音が響いた。光は見ていた。少女を貫いた矢を放った者を。彼女の隣に靴音が止まるとすらりと鞘走りする音が響く。


「世界の秩序を護りたまえ」


 そう一言呟き、剣を掲げる。少女は涙を流した。口から血を噴出し、憎しみを込められた瞳で、呪いを吐く。




 ―――みんな、死んじゃえばいいのに……




 呪いは光に届いた。

 突然感情が大きく膨れ上がり光を放った、剣を掲げたものは光から目を護るように腕で光を防ぐ。それはまぶしく、邪悪を照らす光だ。


光は動いた。ゆっくりと少女の元へと向かう。その姿はまるで子どもを護る負傷した母のようだ。そして真上に来た。


 少女は思った。綺麗だと。




 ―――かくして、この世界は『不完全』になったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ