ep6:見つかっちゃった☆
焼け焦げた廃墟の中。
「うーん、うーん? あっ」
──バリンッ
耳元で、ガラスの砕ける音。
「あぁ、割れちゃった♪」
目の前に浮かぶステータス画面に、
蜘蛛の巣みたいな亀裂が走っている。
「保護フィルム、貼っとくべきだったかなぁ」
あるかは知らないけど。
指で、亀裂を沿うように触れる。
何だか身体が熱いような、そんな違和感がするが、気にしない。
亀裂が、じわりと広がる。
──ミシ。
今度は、部屋の窓の方から音がした。
「へ?」
──ドゴォォォォン!!
壁は、腫れ上がるように音を立て、
破裂した。
あ、れぇ?
壁って、あんなに膨らむんだね。
今日、何回も転ぶなぁ、なんて思いながら、倒れ伏せた身体の顔だけを前へ向ける。
「あ、や、やぁ。さっきぶりだ──ゴベェッ!!」
再び、吹っ飛ばされる。
熱烈な挨拶だね。思わず身体が壊れてしまいそうだ。
血みどろの身体で、仰け反るように起き上がる。
「ふっ、ふふ、フハッ、アハハハ!」
そう、だよねぇ!
ダンジョンの魔物が、ダンジョンから出られないなんて、そんなつまらないことがある訳ないもんねぇ!
瓦礫の向こう。
眼前に佇むのは、毛深き巨体。
顔はフードのような布切れで隠され、
その手には──赤鉄の大剣。
あァ。
いいね! 理不尽。
耳をすませば、破壊の音。
泣き叫び、逃げ惑い、悲鳴だらけの音達。
「こんにちはァ? 僕は愚道戯楽。君のお名前を教えてはくれないかイ?」
月とすっぽん。天と地ほどの差。
けれども、絶望なんて一欠片もなく。
ただ、楽しくて仕方がない。フハハッ。
さァて。
君は僕にナニを魅せてくれるのかい?
◇◆◇
身体は既に傷だらけ。
体表は血で潤っている。
魔物は、鼻を鳴らしていた。
……あぁ。
匂い、か。
目の前の魔物……らしきものは、完全に僕をロックオンしている。
──ポタリ。
顎を伝って、血の粒が、落ちた。
瞬間。
──ギィィィィン!!
一振。
鉄が空気の抵抗を受け、発される独特な音。
およそ人が持てるとは思えない程の大剣の、振り下ろし。
ソレは、地面を割った。
フハッ。
やっぱ君、こんな序盤に出てきちゃダメでしょ。
そう思いながら、構える。
緊張からか、恐怖からか……それとも、愉悦からなのか。
感覚は研ぎ澄まされ、周囲の雑音は掠れゆく。
さぁ、いざ尋常に!
……なーんて、出来るわけないだろう。
血塗れのブレザーを、自身を覆い隠すように空へ投げ出し、即座に全力で逃走。
──グオォォォォ!!!
おわッ、ヤッバい。
「グブヘッ」
雄叫びだけで衝撃波って、ゲームの中だけにしとけよぉ。
ハーァ。これで2回目だ。
逃げるのも、こうやって顔面から転ぶのも。
背後から、地面を切り裂く金属音。
これもまた2回目。
ただ違うところがあるとするのなら、僕の身体が傷だらけなことで。
そんな身体で、あの大剣が避けきれる訳なくて。
「フハッ、ハハハッ! めっちゃ痛い!」
身体には、傷跡が増えた。
ハハッ、死にそう。
喉が焼ける。
身体が熱い。
足が、痛い。
瓦礫が、潰れる音。
ゆっくりと、けれど確実に、近付いてくる。
逃げてみろ、とでも言うように。
…………。
はぁ。
逃げよ。
──ギィィィィン!!
背後で、赤鉄が唸る。
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ep6:見つかっちゃった☆




