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ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
PHASE1 楽しくない世界
6/13

ep5:いーっぽ進んで……全力逃走!!


 しーん、と静まり返っている。

 さっきまでの音が嘘みたいだ。


 まぁ、それもそうか。

 ただ水筒をぶつけただけだし。


 それにしても、空気が妙だ。

 重かったり、匂ったりする訳じゃないのに、吸うと引っかかる感じがする。


 何事も慣れとは言うけど、慣れるのかな、コレ。


 そういえば、このダンジョンって結局何なんだろう。

 光の板、ステータスとかもそうだ。


 いきなり出てきて、それでいてなんの説明も無い。

 かといって、とても自然に現れたものとは思えない程に、人工的だ。


 ……いや、今考えたところで分からないか。


 取り敢えず、今は奥へ。

 楽しそうな、ダンジョンの奥へ。


 深く考えず、足を前に出す。


 床は、思ったよりも冷たい。

 

 靴底が擦れる音が、やけに大きく聞こえた。


 一歩。


──その瞬間だった。


 薄っすらと聞こえた、何かが擦れる音。


 ……?


 視界の端で、何かが動く。


 ソレを認識する前に、衝撃。


──ギィィィィン!!


「はっ?」

 

 轟音が、鳴り響いた。



◇◆◇



 視界いっぱいの、赤、赤、赤。


 振り下ろされたソレは、剣だった。

 血の色に輝く、壁と見間違うほどに大きな、鉄の大剣。


 床に叩きつけられ、火花を散らしている。


 大剣を握る影が、揺れた。

 火花は、よりくっきりと、その影を際立たせる。


 人型、だと思う。そのように見える。


 たぶん。


 そこまで認識したところで、

 遅れて、こめかみに熱が走った。


「……あ、あぁ」


 下を向けば、ぽたりと血が垂れている。

 半ば反射的に拭えば、手には、じんわりと赤が滲んでいた。


 ずきり、と、痛みが走る。


 あ、これ。


 もう、身体が追いつかない。


 次の瞬間、身体が勝手に動いた。


 踵を返して、走る。ただ走る。


 水筒なんて、もうとっくに投げ捨てた。


「無理無理無理無理!」

 

──ギィィィィン!!


 背後、すぐ真後ろで、再び金属音。


 振り返らない。


 振り返れない。


 ただ、全力で逃げた。



◇◆◇



「ハァ、ガッ、ハァ」

 

 息が、上手く続かない。


 吸う度に、肺の奥底で引っかかる。


 後ろで、重々しい音が、絶えず聞こえてくる。

 

 近い。近い近いマズ……


──背後で、何かが振り抜かれる音。


 本能的に行われた回避行動。

 この状況で考えて動くなんて無理だ。


 直感に頼るしかない。


 またすぐに走り出す。


「ハァ、ハァ。し、しつこいなァ!」


 逃げる。

 それしか出来ない。


 走っているはずなのに、距離感がおかしい。


 壁や、床が、やけに長い。


 時間すらも、長い気がして、

 進んでいるようで、進んでいないような。

 

 長い。


 いくら走っても、先が見えない。


 もう、何時間も走っている気すらしてくる。


──金属音。


 何度も、何度も……。


 避けて、逃げて、避けて、逃げて。


 そして。


 視界の先には、黒い揺らぎが見えた。


──出口。


 ……そう見えた。


「あっ、れ」


 見えた瞬間、足がもつれる。


 背後では、空気すらも切り裂く大剣の音。


 考える暇もなく、身を投げ出した。


 次の瞬間。


──ギィィィィィィィン!!!!!


 耳を劈く轟音が聞こえたと共に……


 世界が、ひっくり返る。


 石の床。冷たい空気。


 未だ変わらずの曇天。


 ダンジョンの、外だ。


 ……多分。


「……っふは」


 倒れるように、地面に寝転び、息を吐く。


 …………。


「──ふはっ、ふふはっ、ハハハハハハハハ!!」


 笑いが、止まらない。


 無理、あれは無理だ。無理無理。


 圧倒的な理不尽。

 死の気配、命の危機。


──そして非現実的なあの光景!


「あはっ、ふはははははは!!」


 ダメだ、楽しくて仕方ない。


 街は静かだった。

 ただ一つ、僕の笑い声だけが、いつまでも響いている。




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ep5 いーっぽ進んで……全力逃走!!


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