ep3:楽しそうだから♪
さて、どうしたものかな。
通常では有り得ない程の天災。
地震や落雷、竜巻──それ自体はまだ、科学や物理法則とかの延長線上で、説明が出来たのだろう。
けれど、あの『塔』は、多分無理だ。
一体、中身はどうなっている?
空間は? 構造は? 中身は? そもそもなぜ現れ……
そんなことを考えていると、子供の泣き声が、錯乱した大人の声が、焦り混乱する人達の声が、遅れて耳に届く。
周りを見れば、焼け焦げた住宅や、未だ雷に打たれ続ける鉄塔。
あちこちに、災害の痕跡が転がっている。
……あぁ、そういえば。
今、結構ヤバい状況だったね。忘れていたよ。
街中の皆が、同じ方向へ逃げている。
必死な顔をして、その中に、楽しげな顔をした人は誰もいない。
「何やってるんだ! 君も早く逃げないと」
どこの誰かも分からないお兄さんは、僕の腕を掴もうと、必死の形相で腕をのばしている。
「あぁ、いや、大丈夫だよ」
手を振りほどきながら、不安でいっぱいの顔をしたお兄さんに言う。
「僕は、あっちに行くんだ」
『塔』の方を指さして。
この期に及んで、他人を助けようとするお人好しのお兄さんは、唖然としたような、言葉に詰まっているような。
何か理解できない異物を見るように、僕を見る。
「あっ、あえ、なん、で?」
そんなお兄さんの目に視線を合わせて……
「楽しそうだから♪」
そう言って、薄暗く、未だ災禍の降り注ぐ街の中、僕は、歩を進めた。
誰も触れようとしない、
誰も説明出来ない、
あの『塔』へ。
あの中には何があるのか、この世界では何が起きているのかは、知らない。
──でも。
「ふふっ、ふははっ」
少なくとも、昨日よりは、ずっと面白そうだから。
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ep3:楽しそうだから♪




