表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
PHASE1 楽しくない世界
3/13

ep2:ダンジョン が あらわれた


 街路樹の葉が、不自然に揺れた気がした。


──突如として、天には色鮮やかな模様が現れる。


 轟音。文字に表すことの出来ない、今まで聞いた事のない音が、そこら中に、鳴り響いた。


 少し遠くに見えていた鉄塔は、降り注いだ雷に焼かれ、倒れ始めていて、空は焦ったように、黒く渦巻き始める。


 今までとは、空気が違った。


 街を歩いていた子供は恐怖のあまり涙を浮かべ、買い物帰りの老婆は数珠を擦り合わせ、カラフルな頭髪をした男達は騒ぎ立てている。


 どうにも、自然に起こるようには思えない、不思議な現象。


 理由も無く、胸の奥が、少し軽くなった。


 地面が揺れ動き、紫色の雷が降り注ぎ、雲の隙間から見える空には、空色以外の何かが見える。


 そんな、理屈にそぐわない、災害。


 下手に動けば、自身の命に関わるかもしれない。


 ……なのにどうしてだろうか、そんなにも危険で恐ろしいはずのものに、微かな彩りが見られるのは。


 今、僕の目の前で起きている現象。

 これを、天変地異と言うのだろうか。


 そんな恐ろしい光景に、街の人達は逃げたり騒いだり泣き喚いたり、必死だ。


 必死になるべきはずの現象。


 怖いはずだ。

 逃げるべきだ。


 そう、頭では分かっている。


 それでも──

 

 この光景から、目が離せない。


 もしこれが、退屈の終わりだと言うのなら。


 ……悪くないね。


 その時、視界の端に、見覚えのない文字が滲んだ。



◇◆◇



 未だに続く災害の最中、何かに触発されたように、空間投影型デバイスが、淡い光を放っているのが見えた。


 よく見てみると、これは僕だけの事ではなく、周りの人のソレもまた同じように、淡い光を放っている。


 デバイスは自発的に光を放ち……光の板が、目の前には浮かんでいた。


 目を疑うような、そんな光景。

 半透明の、光の板には何も書かれて無く、ただ空間に張り付くかのようにして、浮かんでいる。


 周りの人にも、同じ現象が次々と起きていた。


 にも関わらず、街の人達の大半は、空を仰ぎ、叫び、喚くばかり。


 天変地異の事ばかりに気が取られて、この事に気が付いている人自体が少ないようだ。


 反応を示す間もなく、その光の板は、文字を映し出す。



───《Status》───


個体名:未設定

種族:???

クラス:■■■


レベル:0


身体能力:■■■

魔力量:■■■

魔力練度:■■■

精神強度:■■■


──────────



 ……は? ス、ステータス?


 意味は、理解できる。

 けど、内容は、理解できない。


 項目は確かに"それらしい"のに、数値は伏せられ、肝心なところだけが欠け、黒く塗り潰されている。


 それはまるで、まだ「見るな」と言われているようで……


 次の瞬間、画面がブレた。



───《Sたェatーs》───


個耐名:未設て1

種族:? ?

■■:■:

レベル:00■■■【】


身体、能力:マンドラごラの根っこ

魔力りょく量:駄菓、し屋のねり飴

魔力れん度:か■■■■■■■【測定不完】

精神き、ょう度:朝日が照らす窓辺の埃


《ス&*17♪♪♡☆》

《《▽《▽》》》

@「「&「☆♡」@♡♡☆@&[{:~%}]


────────────



 ……っ。


 文字が、いや、光の板自体が壊れている。


 正確には……壊れ始めている、と言った方が正しいのかな。


 次の瞬間、ノイズが奔る。


 光の板はヒビ割れ、歪み、掻き消えた。


「……ふ、ふふふは」


 異常な現象。

 思わず、笑いが零れてしまう。


 怖い? 逃げるべき?


 そんな感情よりも先に、心の底が、熱くなる。


「いいね……」


 想定外。

 想像外。

 理解不能。理解不能。


──退屈の終わりにしては、とても良い。

 

 

 ふと様子が気になり、周りを見渡してみれば……


「あ、あれ、何これ! 私のスマホ、なんで勝手に」

「な、何だよこれ! さっきからずっと!」

「スア、すて、フテータフッ!! フテータフですとぉぉ!! デュ、デュフフ、デュフゥフフ」

「きゃぁぁぁ!」

「危ないッ! こっちへ逃げるんだ!」

「か、神様ぁ、どうか非力な我々にお助けをぉ!」


 この異常事態に気を取られて、ステータスの事に気づいている人自体が少ない様だ。

 錯乱して大声をあげる人。何やら興奮して滑舌の悪い口で一人呟く人。逃げ道へと先導する人。



 そんな彼らの喧騒すら──


 不思議な"音"に、掻き消される。



◇◆◇



 聞き慣れない、『音』と認識できていいのかも分からないような、不思議な音。


 金属ではない、生物でもない。


 空気が揺れ、空間が震え、世界そのものが軋むような音。

 あれだけ騒いでいた街の人達が、皆一斉に、黙り込む。


 辺りを支配するは静寂。ただ一つソレのみ。


 少し、遠く。

 駅のすぐ近く。


 何の変哲も無い、街並みの中。


 その空間が──"割れた"


 地面に接するような、空間の裂け目。


 そこからは、軋むような音と共に、『塔』が這い上がる。


 通路は、塞がれた。

 その先にいた人達の姿は、もう見えない。


 世界そのものが軋むような音は、未だ鳴り止まず、遠くを見れば、同じような空間の裂け目が垣間見える。


 ……他にも『塔』と同じようなモノがあると考えるべきだろうか。


 正体不明の巨塔には、窓のようなものはなく、唯一あるのは、奥の見えない入口のみ。


 目に見える形での異常に、街の人達の混乱は増すばかりだ。



 地震、火災、落雷、竜巻、曇天……そして『塔』

 

 これは祝福となり得るものなのか、それともただの厄災か、少なくとも、今は誰もが厄災なのだと、そう思っていそうだ。



 だって──


 助けを求めるだけの子供達、避難所へと逃げ惑う有象無象、他責思考で怒る者、神に祈りを捧げる女。

 気が狂いフラフラと走り回り、倒壊に巻き込まれ喚き散らし、他人を助けようとし、この期に及んで盗みを働き……そんな人々が



 みーんな、コレを厄災と呼ぶのだから。



 別に僕は、他人の不幸を好むような、趣味嗜好をした人間では無い。


 なのに、何故だろうか。


 "楽しみだ"と感じるのは。


「……ふふっ、はははっ」


 そうして、何の気なしに塔を眺めてみると……


 光の板が、再び現れる。



◇◆◇



 光の板……ステータスを示す半透明の板なのだから、『ステータスプレート』とでも呼ぼうかな。


 しかしまぁ、2回目の登場というのは、なんと言うか、新鮮味が薄れてしまう。


 1回目ほどの高揚は、感じられない。


 もっとも、街の人達は違うようだけど。


「ひっ、ひぃぃ。な、なんでまた!」

「な、何これ……。」

「……っ。何だよ、何でだよ! また何か起きるってんのかよぉ……」

「ふざけんな! 何でまたこんなのが出てきてんだよ!」

「ヒヒッ、イヒヒッ、神よ! また祝福を齎してくださったのですね!」


 再び現れた光の板に怯えたり、ようやく光の板に気が付き混乱したり。

 全てはこの光の板が異常の原因なのだと憤慨したり、精神が壊れたのか、狂信者のように神の祝福なのだと光の板を崇めたり。


 むしろ2回目の方が、反応が大きいようにも見える。


 再び現れたステータスプレートには、まだ何も表示されてなく、ただの半透明な光の板が、デバイスから空間へ投影されているだけ。


 反射的にデバイスの電源を落としてみたが、何故か光の板、ステータスプレートは投影されたまま。


 紙パックのいちごミルクを飲みながら、辺りの様子を見渡していると……光の板に、ノイズが奔りだす。


 文字数字記号、ゲームのバグみたいに、それらが表示されては入り交じり、歪み、光の板自体がデバイスから離れていく。


 光の板が進む方へ目を動かすと、そこには『塔』があって……


 ノイズが収まると同時に、光の板には、その文字列が並んだ。



─────────────────


  ダンジョン が あらわれた

                」


─────────────────



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ