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ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
PHASE1 楽しくない世界
13/15

ep11:真っ黒な眼窩。



 …………。


「それは……何の?」


 ニヤついた顔で問いかけると、あろうことか白衣の老害は気色の悪いものを見る目でボクを見る。


 ……妙に、違和感のある眼だ。


「……気色悪い顔じゃのぉ。ふむ、これはのぉ、眼じゃ。それもただの眼ではない、()()の眼じャ。これを今から小僧に移植する」


 そう言い切った翁の顔は、正しく邪悪だった。

 己の欲望の為だけに他者を蔑ろにする、あの顔だ。

 幾度となく、見た事がある。


「えぇっと、一応まだボクの目玉二つとも健常なんだけど……?」

「む? 分かっておるわ、そんなこと。切除してから移植するんじゃよ」


 器具を片手に振り返った老害は、さも当たり前のことのように言ってのけた。


「……老害め。フハッ♪」



 魔物の眼か、どんな風になるのかなァ。


 そうして、白衣の邪悪はボクに筋弛緩剤だけを刺す。

 それ以外に術前の処置が見当たらない。


 視線に気付いた老害はニヤリと笑い……


「おやおや、麻酔はないぞぉ? 使わないのではなく、ないのじゃよ。楽しみじゃのぉ」


 …………。


 ボクは、とりあえず楽しむ事にした。フハハ。



◇◆◇



 瞼を指で押し広げられる。

 冷たい金属が、眼球の縁に触れた。

 逃げ場は、ない。

 身体は、動かない。


「……ひゅー、ふー、ふ、ふふハ」


 しかしまぁ、逃げる気もない。


 いつの間にか、瞼が縫い付けられたのか、閉じれなくなった。

 じんわりと、焼けるような痛み。


「……っ、こういうのって、普通何かの器具で固定するんじゃなかっ「面倒いからのぉ、糸の方が安上がりで楽なんじゃよ。……まぁ、偶に失敗するがのぉ」


 カチャカチャと、器具を弄る音。

 視界の端には、メスやハサミ、吸引器に縫合糸、アンバランスな医療器具が並ぶ。


 ……成功させる気がないのかと思う程に少ない。


「ねぇこれホント「さて、始めるぞ」


──グサッ


「──っが、ァ"ッ」


 冷たいものが、視界を裂いた。


 目の前が真っ白で、黒になって、目の奥が切り刻まれて。

 

 右目の視界が完全に消えた。真っ黒だ。


 頭の奥にまで何かが侵入していく。

 それを、左目が見ている。


 頭の中に、"何か"がある。

 その事実が、感触が、気持ち悪い。


「あっ……」


 時計の針が、何度か回った頃、抜き取られるような喪失感。

 左の視界では良く見えない。


 目の、奥の神経に、針が刺さる。

 カチャ、クチャと、血肉と金属の音が、静かに響く。


 一段落ついたのか、音が消えた。


 僅かな風が、取れた目の奥に触れる。


「ふぅ。おい、クソガキ。今から眼の移植に移る。覚悟しておけ。なに、それが無理なら死ぬだけだ。安心せい」


 視界の端で、器具を片手に老害は嗤う。


「ク、クソ、ジジイ、め。フハ、ハッ♪」

 

 痛みで、今にでも意識が飛びそうだ。


 が。


 こんなの余裕だ、と。老害のみたいに、嗤って見せる。


 フハハッ、本当に、倫理感の欠片もない、クソみたいに邪悪な老害だ。


 魔物の眼。こんなにも甘美な言葉、絶対に楽しい。

 痛みは、ちょうど一月前に、慣れるほどに浴びたのだ。

 こんな痛み、耐えてみせよう。



 眼が、入る。



────────────────────

ep11:真っ黒な眼窩。


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