狂気の色の一つの花《修正版》
落花
そう呼ばれた頃には私はその怪物になっていた
まぁ望んでいたことではあったかな
それに、あの子の望んだことを
歪でも良い
叶えるためだ
:一章 あなたは美しい:
無機質な薄い照明が二人を照らす
「あなたが、私の心臓になる娘?」
目の前には白髪の美しい花のような今にも枯れそうな少女が立っていた
沢山のコードが背中から出ていて後ろに繋がっている機械が無機質な電子音を鳴らしていた
「はい」
声は弱々しく揺れており、泣いたのか目の下が真っ赤に腫れている
「名前は?」
少女はゆっくり、壊れた人形のように首を傾ける
「何でそんな事聞くんですか」
chとなる人間は基本が子供だ
そんな子供が人工心臓に変えられる前の素材の状態を見てしまったら正気にはなれない
だから、基本的には加工されて送られてくる
人間だと思わないために
「あなたは私になるのですよ、あなたの望みは私の望み、あなたは私」
しかし、私はそれが許せなかった
せめてこの子
私のために死ぬこの子になにかできないかと思ってワルキューレに頼んでみた
私はchとなる候補の中では年齢が高かったのでこうやって面談の場を用意してもらうことが出来た
「リリカ・レイラです」
「あら、レイラの一族でしたか、可哀想に」
レイラ、基本的に不吉な噂しかない一族
「そうですか、では私はもう行きますね」
彼女は踵を返して立ち去ろうとする
「少し待ちなさい、あなたの望んだことは?」
「また、なんでですか」
「言ったでしょう、あなたの望みは私の望みだって」
「まぁ言ってましたけ――」
目の前の少女を抱き寄せる
死にゆく娘だ
私のために
この程度したって許されるわけない
「やめてください」
少女の声は震え、鼻につくような声になり
腕の中でかすかに温度が変わる
「教えないと、やめないですよ」
「わかりましたよ。」
離すと同時に蛍光灯の光が一瞬点滅をし
「愛らしい人が笑ってる。それだけです。私の願いは」
あぁ、そんな人が居たのに
運命に従うしかなくなったの
「まぁ美しい……わかったわ」
それがその少女と交わした最後の会話だった
蛍光灯の光が消えた
:二章 望みは:
あの少女は加工により、私の花になった
人工心臓に加工された、どうやっているのかは軍事機密だが
あの少女は苦しまず、愛している人の元に行けたのだろうか
その技術自体大嫌いだ。できるなら人には死んでほしくない
でも、これは戦争なの、自分が失いたくないなら相手を消さないといけない
そのために多少の小さな命が犠牲になっても
焦げた金属のような不快な匂いが鼻に残っている
廊下の少し先を見ると
一つの人影が廊下の角、窓を背にして立っていた
「シューニャ、またそんなに傷ついて、マシな戦い方をしなさい」
中性的な顔をしていて、パッと見た感じと喋り方だけだと基本的に女性の方が近い
「フォルネ。大丈夫です、私はあの子の分まで戦わないと」
「はぁそう言っても死んだら意味ないんですからね」
「分かっているわよ」
「今日だって歩兵を庇っての怪我だと聞いたわよ」
「別に判断ミスして前に出ただけです」
「そう言うけど、最近のあなたの負傷率は上がってますよ。治すのが誰だと思ってるのよ」
あなただけど
もう、うるさいな
昔のあなたはこんなグチグチ言ってこなかったのに
「それに、換えのパーツも届いてないのよ、いつ届くか―――」
あ、そうだ
私は彼の肩を掴みこちらに寄せ
自分の唇を彼の唇に当てる
カツカツと一つの足踏みが何度も廊下に反響する
「大好き、フォルネ」
「っ……//そんな事してもダメですよ。ちゃんと気をつけなさい」
離れた顔は赤く、口元を手で抑えながら少し目線を逸らす
「はーい」
だめだった
「なんで、そんなに自分のことを大事にしないんですか」
「だっていらないから」
私はもう生きて良い理由なんてない
たくさんの人を殺した
べラルの軍人も国民も
この胸にいるあの娘も
だから、本当なら早く居なくなりたい
今の生きる理由は、あの娘の願いを叶えるそれだけしかなかった
「そんな事言わないでください、少なからずあなたを必要としてる人は居ます」
「いるわけ無いでしょ」
「ここに居ます」
フォルネ、が自分を指さし、優しくこちらを心配させないように微笑む
「あなただけです」
「じゃあ、私のために自分を大切にしてください」
「はぁ……わかったわよ」
「あ、あと…」
「なに?」
「私も大好きだから」
少し日が落ちかけてきたのか、窓からオレンジ色の光があなたの背中を焼いた
この笑顔を守るためならと考えたらまだ生きていいと思ってしまう
「無理しないで、くださいね」
その時は
:三章 落花:
今回の作戦のブリーフィングを行っていた時に急に会議室の扉が開きフォルネが入ってきた
「シューニャ!!」
急いできたのか呼吸を切らしながら
「どうしたの?フォルネ」
「今日は私も任務にでます」
「え?」
少し自分の心臓の音がうるさくなる
「最近、あなたの損傷率が高すぎます、私が戦場でも治します」
「でも」
あなただけは傷ついて欲しくない
「大丈夫でしょう?後衛部隊なのでしょう?それに私だって軍人です。多少の操縦技術はあります、そこら辺のmhには負けません」
「そうだけど…」
今回の作戦嫌な予感がする
後方部隊とは言っているのに、更にもう一部隊が後ろにいる
これは、普通の作戦じゃない
多分私達の部隊までが陽動か、時間稼ぎの部隊だ
あなたには来て欲しくない
「安心してください、私がピンチになったらあなたが守ってくれるでしょ?」
「まぁそうだけど、行かせませんからね」
カツンと大きめに一回足音を鳴らす、が
「それは聞きませんよ、この部隊の隊長は私です。絶対に行きますからね」
あなたはぐんぐん距離を詰めて圧をかけてくる
「ダメ、絶対に」
「嫌です、それに私は隊長だって言ってるじゃない。拒否はさせません」
視点からあなたが外れ床だけが映る
「―――」
「てことでシューニャ、援護頼みますよ」
「...はぁ、分かったわよ。でも、無理はさせないからね」
「わかってますよ、私だって死ぬ気はないです」
あなたは私が絶対に守る
―――
『ブラボーワン、進軍開始する』
『幸運を、ブラボー隊』
『あぁ、女神様万歳、国のために、家族の為に!!行くぞ、野郎ども!!』
『ブラボースリー、ワン、ツーのシグナルロスト、こっからは俺が指揮を、は―――』
『ブラボー隊?応答しろ!!』
『クソッ、ブラボー隊オールシグナルロスト、ここからは私達、アルファ隊が時間を稼ぐ』
『落花、出れるか!?』
「えぇ」
『前線にch12機、どうにか倒してくれ』
「分かったわ」
『行くよ、シューニャ、生きて帰ってね』
―――
やはり私の部隊は陽動の時間稼ぎの部隊だった
しかしその陽動も想定の三倍のchによって一瞬で壊滅状態
私達の部隊は他後方部隊を逃すための時間稼ぎ
要は殿だ
パワードスーツの中は警告と通信機の叫び声だけが響く
『シューニャそっちは!?』
「こっちも三機撃墜、残り私と、もう1機」
『ベータツー、一応生き残ってます、でももう無理か―――』
目の前で戦闘をしていたmhが大きく後ろに吹き飛び、地面に落下を始める
『ベータツー?ベータツー!?どうしました!?』
通信機越しの声よりも自分の呼吸の音が五月蝿い
「散ったよ!!フォルネ!!逃げるよ!!」
『えぇ分かったわ』
もう、この状況での戦闘続行は無理
時間も十分稼いだ
フォルネの乗っているmhと合流し、フォルネが私のすぐ上を飛ぶ
『シューニャ』
その声は
戦闘の騒音などとは違い
ひどく静かで
「何よ!いま集中して―――」
少し揺れていた
『笑って、生きて―――』
金属が互いを反発し合う金切り音が耳に届く
すぐ上を飛んでいたmhのコックピットは半分が切れて前側が落下を始めていた
「フォル……ネ?」
mhのコックピットは極限まで小さく作られている
mhの前側”だけ”が落ちてる。それだけで”動き”を理解するのは簡単だった
しかし”気持ち”として理解するのは難しかった
花びらのようにあなたの中を流れてただろう赤い花びらが舞う
その赤い花びらが美しく、世界を彩る
静かに落下を始め音もなく私の身体と地面を染め上げる
大きなコックピットとと同時に、抱きかかえれそうな大きさの球体が目の前にドチャッっという音を立ててあなたの愛らしい笑顔が落ちてきた
戦場のノイズが消えていき、自分の加速している呼吸音だけが脳に直接聞こえる
その顔は笑っていた
昔に私を必要としてくれてた時と同じ顔で
なんで、あなたは笑っているの?
私のため?
私のためにこんなに戦って、笑って、
折れてしまったの?
視界が遠くなり端から少しずつ黒くなり
顔の口が人体からなってはいけない音を上げて口角が上がる
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
あぁ笑みしかでない
そう、あなたが笑ってといったから
私の為に自分さえも使い潰してしまって
最後にも私を安心させるために笑って
あぁ、この笑顔、この笑顔があの子が望んだものなのだろう
この笑顔がただただ美しいく愛らしい
それを失わないように私はフォルネの花弁を抱いて背に黒い羽を生やし
花を折ったものゴミを見る
もう、視界は光を失ってしまった
「汚いゴミども、すぐにその顔が見えないようにしてあげる」
:四章 あなたの望みを:
花は散ってしまう
それは決まった運命だ
どこの誰が決めたかわからない、それでも決まっている
それに抗うことはできない
それがこの世の理
でも、それなら
花だといつかは美しくなくなってしまうなら
”花びらだけ”をきれいに大切に飾っておけばいいじゃない
誰の望みか、自分の呪い(望み)だったのかも忘れてしまった
がちゃと、私の部屋の重たい扉を開くと冷気が出てきて息が白く変わる
廊下からは光が入り、部屋を照らす
部屋を見渡すと美しい笑顔が沢山、部屋が埋まってしまうほど置かれている
ごほっと肺が凍る痛みを受けて一度咳をこぼす
部屋を出ようとし一つ
唯一、孤立して置かれてるそれに
「行ってきますわ、フォ……」
もう、なんでこの花びらをここにおいてるかを覚えていない、一番愛したはずの人の名も覚えていない
その花びらの冷たい唇と口付けを交わして、部屋を出る
何もなくなった花びらだけの部屋は真っ黒な光に埋もれた
:五章 あら、美しい笑顔:
今回の目標、エリグラルにいるchの研究者の捕獲、か
殺害
「ツバキ・ロア」
目標の少女の一人、あの誰だったか忘れた
あの人と似ている
ほしい
その愛らしい顔が欲しい
―――
轟音と泣き叫ぶ声が多く聞こえる
最初にワルキューレが全体の広範囲に爆撃をしたこともあり
ツバキさんがいる家は倒壊していた
「カルナ、早く逃げろ!!」
ツバキさんは一人の六歳ほどの少年を守るために叫んでいた
あぁ、弟かしら
弟を守るために自分を見捨てさせて
その顔が欲しい
できれば美しく笑っている
「カルナ、大好きだ、この世で一番愛してる」
その一言と、笑顔
聞いた瞬間胸が突き刺されたように痛くなり呼吸ができなくなる
その言葉、誰かに言われて私はその人の為に戦ってるはず
『じゃあ、私のために自分を大切にしてください』
誰だっけ?
『私も大好きだから』
一緒に遊んで、食べて、寝て
告白までしてもらって
一緒に戦っていた
『笑って、生きて』
あの人は誰?
まぁいいや
今はあの綺麗な笑顔がただ欲しい
:終章 私の胸の穴は誰が埋めるの:
部屋に戻った私は手に入れたツバキさんの笑顔を
血を取り火傷痕をメイクで隠して
棚に飾る
あぁ…美しい
私は何のためにこんな事をしてるんだっけ?
『愛らしい人が笑ってる』
あぁそうだ、胸の中のこの子と今の私が望んでいるもの
胸のこの娘と私の呪い《ねがい》
でも
いつになったらこの願いは
胸の穴は
埋まるのだろうか
「ただいま、フォルネ」




