勇者、バックレます!!
さて。これからどうしよう。
旅立つよう言われたが、感触としては追い出された状態だった。
一応門番の兵士に話しかけてみたが、無愛想な声で「勇者さま、魔王討伐頑張ってください」とだけ言われてしまった。RPGの癖で二回話しかけて同じ事を言われるのも確認した。確実に兵士はNPCよな。
魔王討伐とはいっても、まず何の情報もなく放り出されても困るんだよなあ。
追い出されると、中に戻りたくなるという天の邪鬼な俺氏。
門番に素直にまた入れてーとも言えないので、とりあえず城の門から離れて兵士の目の届かないところまで歩く。
それから遠回りで城周りをぐるりと歩いてみると、生け垣の隙間を見つけた。中に入れそうだ。
そこは洗濯場のようで、シーツや兵士の服、コックの服など色々な服が干されていた。
貰った服だと勇者と丸わかりだろうからとりあえず皮の服を脱いでTシャツとハーフパンツに戻る。
ダサすぎて着ていたくないしな。
どれかに着替えようか…と洗濯物を漁っていると、何人かの声が近づいてくるのが聞こえてきたため、俺は物陰に身を屈めた。
「―――今度の勇者はどうだろうかね」
「前の奴は強そうだったけど、わりと早めに死んだしなぁ…。今回も難しいだろうな」
「それにしてもこれで何人目の勇者だ?」
「30人までは行ってないと思うけどな。28人目くらいじゃねぇか」
「そんなに来てるのに全然魔王倒せないじゃん。同時に何人も召喚して一気に魔王に送り込めないのか?」
「ん? ああ、お前は知らないのか。この世界には勇者は一人しか存在できない。前の勇者が死なないと補充が無理って話だから、何人も召喚できないみたいだぜ」
「あーだから今回の宝箱はアレしか入ってないんだ。ヒョロヒョロして弱そうだからさっさと死んでもらって、次の勇者に期待ってことかぁ」
「最初の方の勇者には伝説の防具とか武器とか渡していたけど、死んだところまで回収しに行くの大変だったみたいだからね」
「死ぬと分かるのか?」
「あの皮の服に紋様が書かれていたのわかるか? アレに生命エネルギーを取り込んで、死ぬ際に魔法の信号として発信されるらしいぜ」
「服を脱いだらどうなるんだ?」
「着る時間が長ければ長いほど生命エネルギーが貯まるから、すぐに捨てなきゃ大丈夫だろ。1日着ると何故か捨てられなくなる呪いがあるみたいだしな」
「服を脱がさないために、薄着の状態のときに召喚することにしてるってことか。今回のヤツはまだ肌着を着ていたが、前回の男は裸だったもんなぁ。可愛そうに」
俺は脱いだへんちくりんな皮の服を見た。めっちゃ寒気がした。
やべぇ。さっさと脱いで良かった!
追い出されるまま街に行っていたらもしかしたら脱がなかったかもしれないし。呪われていたかもしれん。ヤバい!怖い!
「―――そこでなにをしている!」
びくぅっっっっ!!!
急に低く渋い声が鋭く飛んで、俺は身をさらに縮こませた。
ヤバい?! 早速バレたか?!
と振り替えるが、近くには声の持ち主はいなかった。
それは城の方から聞こえてきた。
「なにをしているかと、聞いているんだ。」
「い、いまから見張りの交替で……」
「時間はとっくに過ぎておるぞ!」
「あぁっ。 ス、スミマセン! 宰相様!!」
「申し訳ありませんでした!」
おしゃべりをしていた兵士たちは慌てて仕事に向かったのか、バタバタとした足音が遠ざかっていく。
草影からそっと覗くと、髭を生やした偉そうなおじさんがため息をついていた。
「上が上なら、下も下というわけだな。この国は……… 」
俺の方から見て、ゆっくり背を向けたおじさんの背中は煤けていた。
少しマトモな人もこの国にいたのかもしれない。
とはいえ、捨てゴマにゃなりたくないんで。
俺はバックレようと思います。
それでは。




