元気でおってな
これは僕と、
エレキギターが大好きだった友達、ヒデとの物語です。
ヒデは元々高校の時の同級生だった。同級生と言っても、同じクラスじゃなくてね、隣のクラスのどちらかというと大人しいタイプの男の子。
あ、僕も、もちろん華やかな感じではなくて、クラスに三十人いるとしたら、その中でも静かな方から数えた方が早いくらいの大人しめな方なタイプだ。
知り合うきっかけはなんだったかな……僕もそのあたりはうろ覚えなんだけど……あ、そうそう、部活で入ってた漫画研究部の部長が同じクラスだったんだよ。
どうでもいいことなんだけども、僕は漫画研究部と軽音楽部に所属していた。なんか対象的な感じだけども、漫画研究部のほうがメインだ。なぜなら漫画とアニメが好きで、絵を描くのも好きだったから。
軽音楽部に所属……というか入っていたのは、文化祭でね、ライブの出し物があるんだけど、それに参加するためには軽音楽部に所属しないとダメなんだって。それで普段特に活動もしてなかったくせに、ライブをしたいがために、軽音楽部に入ったのだ。
で、まぁ漫画研究部の出し物というか、何の絵を描くとか、そんな雑談をするために部長のクラスに行った時に、ヒデがいたんだと思う。
んー、それでヒデと友達になったきっかけは確か、僕がギターをしていて、ヒデもギターをやりたいって言って、声をかけてくれたんだったかな。ヒデは、なんちゃっての僕に比べてめちゃくちゃ努力家だった。
僕がギターコードだけのなんとなく弾けるかなってくらいの腕だったのを、ヒデはみるみる上達して、洋楽とかでやってる速弾きみたいなのもこなしていた。
「すごいやん、ヒデ。めちゃくちゃ上手いやん」
「え、練習したら弾けるようになるって。リョウも練習したらええやん」
あ、自己紹介忘れてたけど、僕の名前はリョウ。
まぁでも、そこまでのギターへの情熱がなかった僕は、そこまで上達することはなかった。結局、高校の時の三年の文化祭だったかな?その時にヒデと僕と、もう一人ドラムのやつとでライブをすることになってたんだけど、本番になってドラムのやつがビビって逃げたんだよね。
んで、エレキギターと、アコギの弾き語りっていう、妙なアコースティックライブみたいなライブをしたのが最後だったかな。
あ、そうそう、高校が工業高校だから、卒業後はだいたいみんな就職する。んで、僕は電子工業科だったから、電気関係の職場へ。ヒデは機械工業科だったから、自動車メーカーに就職してたな。
卒業してから二年くらいだったか、同じ高校の時の友達経由で、ヒデがバンド組んでるって話を聞いて。なんだったか忘れたんだけど、同じ高校だったやつのドラムと、どこで知り合ったかのボーカルとベース、それでヒデがギターていうビジュアル系のバンドだった。
その時はビジュアル系バンドがまぁまぁ流行っていて。ライブも見に行ったんだ。率直に感想を言うと…そんなに良くはなかった。
んーでも、僕自身ちゃんとバンドをしてたこともなかったから、それは羨ましかった。あと、化粧して、髪型もバッチリ決まってるヒデはカッコよかった。
まぁあんまりだった割に、チラホラとファンはついたりしてたみたいで、ヒデにも女の子のファンが1人いたんだ。ヒデは元々あまりモテるような感じのタイプじゃなかったから、嬉しかったんだと思う。何度かデートしてたみたいなんだけど。
すぐフラレていた。たぶんファンの女の子って、ビジュアル系の、カッコいい見た目のヒデが良かったんじゃないかな。
普段のヒデは正直に言って、ちょいオタクっぽい大人しい男の子だった。あ、僕も同じような感じなんだけどね。
これからがヒデのめんどくさいところで。
まぁまぁ頻繁に呼び出しがかかる。
「リョウ。俺もう無理……さっき腕切った」
「えっ! なんでなんで? どうしたん?」
「血ぃめっちゃ出てる。痛い」
「ちょっと! とりあえずなんかで押さえとき? 今からすぐ行くし! 救急車呼べる? 原付やからちょい時間かかるかもやけど、とりあえず行くわ!」
てか、僕のその時住んでたところから、ヒデの家まで原付バイクで一時間くらい。んで、夜中の一時。
原付を走らせながら電話する。
「ヒデ! 大丈夫なん? 今向かってるで!」
「うん……なんか血は止まった。お腹すいた……」
「えっ、お腹?」
「プリン食べたい……」
え。これはなんなんだ。巧妙なパシリか。
「あー。まぁとりあえず無事なんやな。プリンな。他なんかいる?」
「あー、あとタバコ……」
完全なパシリだよね。もう確信犯だよね。まぁでも、怒りよりも、無事だったことにホッとして、プリンとタバコと、あと飲み物とかも途中のコンビニで買って、持って行く。
「あ、リョウありがと〜」
「ありがとうはええけど、大丈夫なん? ちょっと血ぃ貼り付いてるけど……」
「あ、うんうん。意外と大丈夫みたいやわ」
なんていうか。それからヒデの自殺未遂詐欺は何回かあった。もう演出みたいな感じになってたのかもだけど、それでもほっとくとホントにしたら怖いからとりあえず呼び出しがあったら出向いていた。
ある日、僕はヒデに曲を贈った。
liveという曲だ。意味は生きろ。
原付でアコギ背負って運転はものすごく大変なので、たまにはヒデに僕の家に来てもらった。
んで、liveを聞かせた。
「おー、ええやん。これLIVEでliveしたら盛り上がりそう。ライブでリブってなんかシャレみたいやな」
全然面白くない。
まぁでも、それがきっかけで高校の時ぶりでヒデとバンドを組むことにした。ドラムはビジュアル系バンドのやつ。ベースはその知り合いのデスメタルバンドのやつにヘルプでしてもらった。
何回かライブをした。すごく楽しかった。
でも、やっぱり寄せ集めのメンバーだと、練習にちゃんと来なかったり、どうしても連携が取れなかったり、難しい。結局リズム隊のドラムとベースが安定していないと、結局バンドとして成り立たないのだ。
「なんかあんま、おもんないな……」
「まぁそうやんね……」
「てか、練習きても、結局毎回飲んでばっかりやし、真面目に全然練習せんやんか」
「うん……まぁしゃーないなぁ〜」
結局。そのあと、ヒデとは連絡が取れなくなった。
友達に聞くと、仕事もやめたらしい。
僕のほうも、仕事の異動があったりでバタバタしてたりして、結局ヒデの心配をしてる場合じゃなくなったのだ。
それから何年も経っているが、結局ヒデとは一切会っていない。生きてるか死んでるかもわからない。
でも、もし何かのきっかけで出会うことがあれば。
そうなった時、いつでも音楽ができるように。
ずっと弾き続けてるから。
できれば、元気で生きていてな。




