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健康優良魔法少女ATTACK!!AGO!!GO!!  作者: プラン9


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第26話:SATSUGAI


 神流との距離が急速に迫る。刺客からの、それも透明状態による一撃。いくら速度では神流の方に軍配が上がるとはいえ、避けることは不可能。


 だというのに、アポテムの背中に怖気が走る。しかし、もう止めることはできない。そのままサーベルを振り払い──、


「バレバレなんですよぉカスがぁっ!!」

「ふぐぁっ!!」


 神流に顎を蹴り上げられ、後ろへと吹っ飛んだ。刺さっていた刀の峰に当たり、背中を強く打ち付けた。


 ありえない出来事に脳が混乱し、敵の目の前だというのに思考が止まる。なぜだ、なぜ場所が分かった。

 アポテムは思考するより早く、神流から距離を取った。本能が、神流という生物を恐れている。後から状況判断する時間稼ぎと、行動に答えが出る。


「なっ、なぜだ……スタングレネードによって耳も封じられ、透明化によって視界も封じているというのに……!? なぜ吾輩の位置が分かった……!?」


 攻撃する直前の言葉が、偶然ではないと決定づける。もう聴力も回復したというのか? 否、魔法少女は五感を強化された生物だ、その分自然ではない不協和音によるダメージは大きいはず。


「なにが、いったい何が起きた……!?」


 そして、アポテムの思考が言葉としてそのまま出力される。

 しかし、神流は答えない。


 目の焦点は、距離を取っているアポテムの方を向いていない。透明化が通じないという訳ではない。そしてアポテムが予想したところ、内田神流という人間は言葉を投げかけられたら言い返さなければ気が済まない人間だ。そのことから、言い返してこないということは聴力が回復してない証拠。


「……なるほど」


 神流は床を蹴り、アポテムのいるところへと刀を構え、距離を詰めてくる。

 位置は詳細まではわかっていない、足取りからしてそれはなんとなくわかる。ならば後は、見えない位置で止まり、攻撃を空ぶったところで奇襲をするのみ。


 だが神流は、アポテムのサーベルがギリギリ届かないところで止まり、大きく息を吸った。葉巻の火が大きく燃え、急速に葉が灰へと化していく。

 神流はもはや咥えられないほど短くなった葉巻を捨て、一気に息を吐き出した。


「げほっげほっ、なんだぁ!?」


 アポテムの視界を覆い隠すほどの白い煙。それが神流の口から、灰から吐き出される。

 白い煙に浮かぶ黒い影から、刀が数本射出される。アポテムの体に深く食い込み、黒い血が流れ出る。


「ぐっ、ぎゃあああああっ!!」


 あまりの激痛に体勢を崩す。衝撃で突き刺さった刀の刃が更に食い込む。

 あり得ない。透明化は完璧だった筈。だというのにこうも精密な狙撃。


「なっ、なぜだ!? なぜ吾輩の位置が!?」


 やがて白い煙の中から、神流の腕がアポテムの透明になっている首をつかんだ。

 壁へと叩きつけ、アポテムを持ち上げる。神流は肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべる。銃口よりも恐ろしい瞳が、アポテムの瞳をのぞき込む。新たに咥えた葉巻の火が、アポテムの鼻先をかすめる。


「ばっ、ばけ……ものが……」


 絞り出すように声を出すと、神流は目を丸くし、視線を左右に動かした。そしてチッチッと舌を鳴らしてから、口を開く。


「ようやく耳が聞こえるようになりましたよ。まあだ頭が痛いんですけど、どう責任取ってくれんですか?」


 首をつかむ手に力が入る。アポテムが苦悶の声を漏らす。透明になっているアポテムの体にノイズが走り、消えていた姿が戻っていく。


「ぐっ、があっ……なぜ、なぜ吾輩の位置が……」

「……あれ? もしかしてマジで理解(わかって)いないんですかこのノータリンは」


 神流はあざけ笑い、葉巻の煙をアポテムの顔に吹き付けた。


「透明だろうとなんだろうと存在が消える訳じゃねえんですから、煙でいぶり出しゃあ輪郭が見えるってもんですよ」

「ばっ、そんな、弱点が……!?」

「……随分と行儀の良い悪の組織みたいですね、この程度の事にも気づかないなんて」


 神流の言葉にアポテムは目を大きく見開き、神流はあきれ果てて首を振るう。

 アポテムが透明能力を実戦で使用したのは今回が初めて。そして、これまでアポテムがかかわってきたインベーダーたちは誰も煙草を吸うことすらなかったものたちばかりだった。


 対して神流は、常に葉巻を咥えていた。普通の紙巻き煙草よりも煙量の多い葉巻煙草、当然アポテムの姿も、動きによって起きる気流の変動も手に取るように分かったのだ。


「これで私の勝ち、ですね」


 神流は舌なめずりをし、アポテムの首から手を離した。重力に従いアポテムの体が、神流が縦に向けて持っていた刀の上に落ちる。顎に切っ先をぶつけ、血を流しながら床へと倒れる。

 神流はアポテムの体を足でふみつけ、刀を首につきつけた。


「さて、と……アポテム、でしたっけ? いくつか質問に答えてもらいますよ」


 今から始まるのは、決して戦いなどではない。無残に尊厳を踏みにじる拷問。喜色に狂喜に満ちた神流の笑みを間近に見て、アポテムは察した。

 アポテムの悲鳴が、クリスタルタワー内部にこだました。


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