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健康優良魔法少女ATTACK!!AGO!!GO!!  作者: プラン9


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22/32

第22話:Halo Of Sorrow From Animation

 塔の内部は、四方八方が外見通りクリスタルに囲まれていた。自動車道のように広い通路、壁の高さは竜子三人分くらいはあるだろうか。外から見た印象より明らかに広すぎる奥行で、行き止まりがぼやけて見える。

 竜子と神流の二人は、その通路をひた走る。

 先の見えない通路、冷たい風がほほを撫でた。


「敵一匹すら襲いに来たり(エンカウント)しないですね」


 塔に突入して3分程度、だが魔法少女の脚力であれば、その時間さえあればかなりの距離を走れる。事実、竜子の体感ではもうキロメートルになるくらいには走っているという認識だ。


 だが、だというのに、駅が出ない。シャム男爵夫人やアポテム伯爵どころか、雑魚のインベーダーすらも。


「もしかしてよぉ……これ、無限ループの道に突っ込まれた?」


 無限ループの道、要するに終わりのない通路。いくら走っても走っても、いつまでもどこにもたどり着かない、学校の七不思議などでよく聞くあれだ。


「ってことは、このままいてもいつまでもどこにも向かうことは無い、ってことですか?」

「まっ、そうなるな」


 足が、はたと止まる。

 このままやみくもに進んでも、ただいたずらに体力を消耗するだけ。敵の術中に見事にかかってしまった。


「嵌められましたね」

「罠に嵌ったつうか嵌りに行ったけどな、私達」


 竜子の言葉が本当ならば、このまま足を動かしても意味はない。罠に嵌められた、というよりかかりにいったという方が正しいだろうか。

 気分を落ち着かせるため、竜子はおもむろに煙草を取り出し火を付ける。煙を吸い込み、肺を満たす。


「神流、どうする? このままだったら私ら餓死だぜ」

「このまま塔に登ることができないのなら、やれる方法は一つしかないでしょう」

「方法?」


 神流の口ぶりには、このループを打開できる策があるようだ。だが竜子は、どうも嫌な予感がしていた。

 神流は、見た目こそ清涼潔白純真で大人しい知的な少女のように見えるが、その実は竜子とどっこいどっこい、どころか下手したら竜子より頭が悪く、頭のイカれた女だ。


 そんな女が自信満々に言う解決策というのがいったい何なのか……そう思っていると、神流は刀を構える。


「……何するつもりだお前──ってあぶなっ!?」


 神流は何も言わずに一閃、竜子ごと巻き込むような太刀筋で壁を一文字に切断する。


「テメェやっぱ私のこと殺すつもりだろ!? 危うくテケテケになるとこだったぞ!!」


 ちょうど胴体と腰の間くらいに虫の知らせがあったため竜子は咄嗟に天井まで届くくらいに飛んで回避したのだが、少しでも遅れていたら臓物をまき散らして死んでいたところだ。


 神流は何も答えずに刀を構え、天井近くまでジャンプした。竜子は天井を殴り、勢いよく床へと降りる。

 そしてまたしても同じように一閃。壁は刃をはじくことなく、音もせずに切り裂かれた。壁に上下の亀裂が入る。


「……壁なんざ斬って何のつもりだ? 気でも狂ったか?」

「まずは壁の向こう側を調べます。竜子はそっちの壁を、私はこの壁を壊しますので」


 上下に切り裂かれた壁に、三つほど縦に切れ目を入れ、壁をヤクザキックで吹き飛ばしながら神流は言った。


「……なら最初からそう言えよ」

「面倒です」

「なんで人は喋れるようになったか分かるか? コミュニケーション取る為だぞ」

「……煽る為ではないのですか?」

「……この街に限っちゃそうかもしれねぇ」


 がっくりと肩を落として、竜子も同じように壁を斬り、切れ目の入った壁を殴り飛ばす。

 そこには、廊下以上にスペースのある空間が広がっていた。レクリエーションルームだろうか、クリスタルで出来た丸テーブルに、クリスタルで出来た椅子。お世辞にも人間にはあまり居心地の良さそうな場所には見えない。


 殺風景であり、しかしどことなく廊下とは違う部屋のように見えた。


「神流―、こっちはなんもないぞ」

「当てが外れましたね」

「壁の向こうに部屋があるって分かっただけだったな……」


 とりあえず壁の向こうには部屋があった、ということしかわからなかった。戦力を分断し、命を危険にさらしたにしては、あまりに安すぎる対価だ。

 一応壁の向こう側にまで道路が続いていないということこそわかったが、壁の向こうの向こうにまた同じ部屋がある可能性は依然として消えていない。


「んじゃ左右が駄目なら……次は上下ですね。私が上に行きます」

「……まあ、今はとくに解決方法が出てるわけでもないから従うけどよ。んじゃ私は下な」


 神流はそう言って天井に向けて刀を投げ刺し、その柄の尻に何度も刀をぶち込んで天井にひびを入れてぶち壊した。

 竜子もまた、クワのように斧を地面に振り下ろす。四度ほどしたところで巨大な穴となり、床が崩れ落ちていく。


「おい神流、そっちはどう──あん?」


 いない。それどころか、落ちる前にしかと目撃したはずの崩れた天井も、自分が落ちてきた穴件天井も傷一つなくふさがっていた。


「どうなってやがんだ、これは……」

「「どうなっているも糞もない、この蛮族が。人の住居を好き勝手に破壊しおって」」


 クリスタルの部屋に反響する、男と女の声。姦しい声ではない、完全に一緒になって喋っている声。


 竜子は声のした方に目線をやる。クリスタルに囲まれた部屋の中で異様に浮いている、木製の椅子に座りながらこちらをにらみつけている、白いスーツと黒いウェディングドレスが文字通り半々になった服を着た、男と女が一人に合体している異形の怪物。シャム男爵夫人。


「よう男女(おとこおんな)、遊びに来たぜ」

「「貴様ら風に言うのならば……他人(ヒト)の庭を荒らした責任(ケジメ)を取らせてやろう、というべきかな?」」

「ハッ、言うようになったじゃねえか」


 シャムは杖を左右に引っ張る。すると杖は真ん中のところで取れ、接続部から鋭い針が伸びてきた。

 シャムは武器を構え、竜子をにらみつけ、叫ぶ。


「「地上殲滅部隊第一の隊指令型インベーダー、シャム男爵夫人! 貴様を殺すことで、今まで殺されたインベーダーたちの弔いとしよう!!」」

「市立浪川中学校2-B組石川竜子! テメェらが先に売ってきた喧嘩だ、きっちり利息つけて殺してやるぁ!!」


 ◇


 同時刻、口元に咥えている葉巻の火が尾を引き、短い足音がクリスタルでできた部屋に鳴り響く。


「そこだっ!」


 アポテム伯爵はサーベルを振り下ろすも、何かを斬ったという手ごたえはない。それに気づくと同時、後頭部に強い衝撃が走った。


「ぐっ、貴様っ!! ちょこまかとぉ!!」


 叫び、衝撃を放たれた方向にサーベルを振り払うが、やはり空振り。煙草の尾を引いた光を斬るだけ。

 葉巻の火がアポテムから数メートルほど離れた距離で止まり、ようやく神流の姿を目で追うことができた。灰が床に落ち、白い煙を雲のように吐き出す。


「吾輩の姿を見た瞬間名乗りも上げずに襲ってくるとは……理性のかけらも無いのであるな、貴様は」

「こりゃ試合じゃないんですよ、よーいドンでないと戦えないとか寝言でもほざく気ですか?」

「剣士としての誇りとかはないのか貴様は!?」

不良(ガキ)ですから」


 そう、神流はアポテムの姿を見た瞬間、何か喋ろうとしていたアポテムに襲い掛かったのである。

 もはや獣というべきか、それともプログラムされた機械というべきか。彼女は名乗り口上を上げさせる暇すら与えず、アポテムを殺さんと斬りかかっていたのだ。

 神流は、アポテムの言葉に唾を吐いて捨てた。


「そんなもん──」


 そこで言葉を区切り、神流は床を蹴る。短い間隔で鳴り響く、まるで穿つような足音。

 アポテムが咄嗟に取った行動は攻撃ではなく、サーベルを盾のように構えた防御。瞬間、神流の振り下ろした刀をサーベルが受け止め、火花が散った。


「──殺す役にゃ立ちませんよ」


 衝撃に、数歩たたらを踏む。

 アポテムはそのまま後方へジャンプし、神流から数メートル距離を取った。


「……狂人がぁ!! 地上殲滅部隊第一の隊指令型インベーダー、アポテム伯爵様が貴様を駆除してくれるわ!!」

「浪川中学校裏番、内田神流。貴様も含めインベーダーを全て屠殺してくれましょう」

 塔の内部は、四方八方が外見通りクリスタルに囲まれていた。自動車道のように広い通路、壁の高さは竜子三人分くらいはあるだろうか。外から見た印象より明らかに広すぎる奥行で、行き止まりがぼやけて見える。

 竜子と神流の二人は、その通路をひた走る。

 先の見えない通路、冷たい風がほほを撫でた。


「敵一匹すら襲いに来たり(エンカウント)しないですね」


 塔に突入して3分程度、だが魔法少女の脚力であれば、その時間さえあればかなりの距離を走れる。事実、竜子の体感ではもうキロメートルになるくらいには走っているという認識だ。


 だが、だというのに、駅が出ない。シャム男爵夫人やアポテム伯爵どころか、雑魚のインベーダーすらも。


「もしかしてよぉ……これ、無限ループの道に突っ込まれた?」


 無限ループの道、要するに終わりのない通路。いくら走っても走っても、いつまでもどこにもたどり着かない、学校の七不思議などでよく聞くあれだ。


「ってことは、このままいてもいつまでもどこにも向かうことは無い、ってことですか?」

「まっ、そうなるな」


 足が、はたと止まる。

 このままやみくもに進んでも、ただいたずらに体力を消耗するだけ。敵の術中に見事にかかってしまった。


「嵌められましたね」

「罠に嵌ったつうか嵌りに行ったけどな、私達」


 竜子の言葉が本当ならば、このまま足を動かしても意味はない。罠に嵌められた、というよりかかりにいったという方が正しいだろうか。

 気分を落ち着かせるため、竜子はおもむろに煙草を取り出し火を付ける。煙を吸い込み、肺を満たす。


「神流、どうする? このままだったら私ら餓死だぜ」

「このまま塔に登ることができないのなら、やれる方法は一つしかないでしょう」

「方法?」


 神流の口ぶりには、このループを打開できる策があるようだ。だが竜子は、どうも嫌な予感がしていた。

 神流は、見た目こそ清涼潔白純真で大人しい知的な少女のように見えるが、その実は竜子とどっこいどっこい、どころか下手したら竜子より頭が悪く、頭のイカれた女だ。


 そんな女が自信満々に言う解決策というのがいったい何なのか……そう思っていると、神流は刀を構える。


「……何するつもりだお前──ってあぶなっ!?」


 神流は何も言わずに一閃、竜子ごと巻き込むような太刀筋で壁を一文字に切断する。


「テメェやっぱ私のこと殺すつもりだろ!? 危うくテケテケになるとこだったぞ!!」


 ちょうど胴体と腰の間くらいに虫の知らせがあったため竜子は咄嗟に天井まで届くくらいに飛んで回避したのだが、少しでも遅れていたら臓物をまき散らして死んでいたところだ。


 神流は何も答えずに刀を構え、天井近くまでジャンプした。竜子は天井を殴り、勢いよく床へと降りる。

 そしてまたしても同じように一閃。壁は刃をはじくことなく、音もせずに切り裂かれた。壁に上下の亀裂が入る。


「……壁なんざ斬って何のつもりだ? 気でも狂ったか?」

「まずは壁の向こう側を調べます。竜子はそっちの壁を、私はこの壁を壊しますので」


 上下に切り裂かれた壁に、三つほど縦に切れ目を入れ、壁をヤクザキックで吹き飛ばしながら神流は言った。


「……なら最初からそう言えよ」

「面倒です」

「なんで人は喋れるようになったか分かるか? コミュニケーション取る為だぞ」

「……煽る為ではないのですか?」

「……この街に限っちゃそうかもしれねぇ」


 がっくりと肩を落として、竜子も同じように壁を斬り、切れ目の入った壁を殴り飛ばす。

 そこには、廊下以上にスペースのある空間が広がっていた。レクリエーションルームだろうか、クリスタルで出来た丸テーブルに、クリスタルで出来た椅子。お世辞にも人間にはあまり居心地の良さそうな場所には見えない。


 殺風景であり、しかしどことなく廊下とは違う部屋のように見えた。


「神流―、こっちはなんもないぞ」

「当てが外れましたね」

「壁の向こうに部屋があるって分かっただけだったな……」


 とりあえず壁の向こうには部屋があった、ということしかわからなかった。戦力を分断し、命を危険にさらしたにしては、あまりに安すぎる対価だ。

 一応壁の向こう側にまで道路が続いていないということこそわかったが、壁の向こうの向こうにまた同じ部屋がある可能性は依然として消えていない。


「んじゃ左右が駄目なら……次は上下ですね。私が上に行きます」

「……まあ、今はとくに解決方法が出てるわけでもないから従うけどよ。んじゃ私は下な」


 神流はそう言って天井に向けて刀を投げ刺し、その柄の尻に何度も刀をぶち込んで天井にひびを入れてぶち壊した。

 竜子もまた、クワのように斧を地面に振り下ろす。四度ほどしたところで巨大な穴となり、床が崩れ落ちていく。


「おい神流、そっちはどう──あん?」


 いない。それどころか、落ちる前にしかと目撃したはずの崩れた天井も、自分が落ちてきた穴件天井も傷一つなくふさがっていた。


「どうなってやがんだ、これは……」

「「どうなっているも糞もない、この蛮族が。人の住居を好き勝手に破壊しおって」」


 クリスタルの部屋に反響する、男と女の声。姦しい声ではない、完全に一緒になって喋っている声。


 竜子は声のした方に目線をやる。クリスタルに囲まれた部屋の中で異様に浮いている、木製の椅子に座りながらこちらをにらみつけている、白いスーツと黒いウェディングドレスが文字通り半々になった服を着た、男と女が一人に合体している異形の怪物。シャム男爵夫人。


「よう男女(おとこおんな)、遊びに来たぜ」

「「貴様ら風に言うのならば……他人(ヒト)の庭を荒らした責任(ケジメ)を取らせてやろう、というべきかな?」」

「ハッ、言うようになったじゃねえか」


 シャムは杖を左右に引っ張る。すると杖は真ん中のところで取れ、接続部から鋭い針が伸びてきた。

 シャムは武器を構え、竜子をにらみつけ、叫ぶ。


「「地上殲滅部隊第一の隊指令型インベーダー、シャム男爵夫人! 貴様を殺すことで、今まで殺されたインベーダーたちの弔いとしよう!!」」

「市立浪川中学校2-B組石川竜子! テメェらが先に売ってきた喧嘩だ、きっちり利息つけて殺してやるぁ!!」


 ◇


 同時刻、口元に咥えている葉巻の火が尾を引き、短い足音がクリスタルでできた部屋に鳴り響く。


「そこだっ!」


 アポテム伯爵はサーベルを振り下ろすも、何かを斬ったという手ごたえはない。それに気づくと同時、後頭部に強い衝撃が走った。


「ぐっ、貴様っ!! ちょこまかとぉ!!」


 叫び、衝撃を放たれた方向にサーベルを振り払うが、やはり空振り。煙草の尾を引いた光を斬るだけ。

 葉巻の火がアポテムから数メートルほど離れた距離で止まり、ようやく神流の姿を目で追うことができた。灰が床に落ち、白い煙を雲のように吐き出す。


「吾輩の姿を見た瞬間名乗りも上げずに襲ってくるとは……理性のかけらも無いのであるな、貴様は」

「こりゃ試合じゃないんですよ、よーいドンでないと戦えないとか寝言でもほざく気ですか?」

「剣士としての誇りとかはないのか貴様は!?」

不良(ガキ)ですから」


 そう、神流はアポテムの姿を見た瞬間、何か喋ろうとしていたアポテムに襲い掛かったのである。

 もはや獣というべきか、それともプログラムされた機械というべきか。彼女は名乗り口上を上げさせる暇すら与えず、アポテムを殺さんと斬りかかっていたのだ。

 神流は、アポテムの言葉に唾を吐いて捨てた。


「そんなもん──」


 そこで言葉を区切り、神流は床を蹴る。短い間隔で鳴り響く、まるで穿つような足音。

 アポテムが咄嗟に取った行動は攻撃ではなく、サーベルを盾のように構えた防御。瞬間、神流の振り下ろした刀をサーベルが受け止め、火花が散った。


「──殺す役にゃ立ちませんよ」


 衝撃に、数歩たたらを踏む。

 アポテムはそのまま後方へジャンプし、神流から数メートル距離を取った。


「……狂人がぁ!! 地上殲滅部隊第一の隊指令型インベーダー、アポテム伯爵様が貴様を駆除してくれるわ!!」

「浪川中学校裏番、内田神流。貴様も含めインベーダーを全て屠殺してくれましょう」


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