第20話:Gospel Of The Throttle
バリケード内は中型大型のインベーダーが闊歩しており、それらに対し自衛隊や重火器や戦車を持って応戦していた。
戦車の弾丸が中型インベーダーに激突し、廃ビルに叩きつけられる。兵士の撃ったRPGが大型インベーダーの装甲を砕き、黒い体液をまき散らす。
インベーダーという特別な生命体相手にも現代兵器は通じる、ならば駆除するのは時間の問題かというと──実際のところはそうではない。
「隊長、レーダーに反応多数! 追加のインベーダーです!!」
「クソッ、またか!!」
自衛隊という現代兵器を扱う組織は、なにもその戦力を無限に投入できるというわけではない。
弾然り、武器兵器そのもののメンテナンス、燃料補給然り、そして兵士もまた──無限に戦えるわけではない。必ず数には、限界がある。こうしてバリケード内にこの大軍を押しとどめられているのも奇跡なくらいだ。
やがて空から大量のインベーダーが降ってきた。中型も大型も、その数たるや数えきれない。
このままではやがて、自衛隊側が押し負けてしまうだろう。
「諸君、怯むな! 国民たちの平和は、我々自衛隊がなんとしても守らねばならぬのだ!!」
隊長の叫びに鼓舞され兵士たちは気合の雄たけびを上げる。
だがそれもいつまでも続かない。早く解決の糸口を見つけねば──死者・負傷者は三割に達そうとしていた。このままでは全滅してしまう。いっそのこと玉砕覚悟で応戦すべきか……。
「……ぁ……ぁぁ……」
ふと、空から声が聞こえてきた。否、聞こえてきたというより近づいてきている、といった方が正しいだろうか。
またしても隊長格らしき人間型のインベーダーか、と隊長はライフルを構える。
「どこからでも来い、この俺が相手になってやる!」
「ああああああああああああああっ!! これ死ぬ、死にますわあああああああ!!!!」
「神流お前本当めちゃくちゃするよな!!」
「成功したから結果オーライですよ」
空を、三人の少女がとてつもない速さでこちらへと飛んできている。
一瞬極限状態からくる幻覚と幻聴かと思ったが、それにしてはハッキリと見えすぎているし、幻覚にしてはその姿はハッキリしすぎており、そして見覚えがない。
そのまま三人は駐屯地を超え、激戦区へとそのまま飛んでいく。
戦車砲とRPGが飛び交い、インベーダーが兵士の体を貫き、戦車を穿つ戦場の上空。兵士たちは一瞬手を止め、思わず上空を見る。
「どうせならこの状況も利用してやるぁ!!」
「先制攻撃です!!」
竜子と神流は同時に獰猛な笑みを浮かべ、武器を大量に呼び寄せる。刀と斧が青い空に広がり、黒く埋め尽くす。
そのまま弾丸のように落下する大量の刀と斧。そして二人とも自分の獲物を持って、なんなく地面に着地した。クレーターが二人の足元から広がり、アスファルトがひび割れる。。巴は手近にいたインベーダーに銃口を向け、撃ち殺すと同時に反動で相殺し、なんとか地面に着地した。
「ぜえ……ぜえ……しっ、死ぬかと思いましたわ……!! いや本当、なんつう馬鹿な事を考え付くんですの……!!」
「高エネルギー反応! 圧縮体液砲です!!」
竜子たちの背後から伝達の声が響く。インベーダーの群れの奥、巨大な甲羅のようなものを背負った、トカゲのような顔をしたインベーダーが管を周囲のインベーダーに伸ばし、口を開けていた。
「総員退避!!」
「ハッ、大技から逃げるなんて弱腰じゃあよお……正面から向かい打つくらいじゃねえと、戦争なんか出来ねえよなあ!?」
竜子は叫び、目前に巨大な斧をどこからともなく天空より出し、自分の目の前にバリケードのように突き刺す。巨大斧の前にさらに巨大斧が、その巨大斧の前に──と、連続して二十五枚の斧が、竜子の前に現れ地面に突き刺さった。
「っしゃああ、来やがれインベーダー!!」
竜子が中指を立て挑発した直後、トカゲの口が大きく四つに裂け、音を置き去りにした体液がインベーダー達を巻き込み斧へと直撃する。
斧に穴が開き、削り飛ばし、吹き飛ばし、勢いを殺しながらも次々と割れていく。
「あっ!?」
その横を神流が刀を携え走る。斧が割れていくのと連動するように、神流もまた亀形インベータ―へと肉薄していく。
「ずりぃぞ神流!!」
そして最後の斧をインベーダーの体液が貫くことができず揺らした瞬間、竜子は斧をトカゲ型インベーダーに向けて投げつけた。数多のインベーダーを巻き込み、斧が迫る。
だが斧はトカゲ型の鼻先をかすめるだけ。逆に神流が通りやすくするための道を作る結果となった。
「梅雨払いご苦労! まずは一匹ぃ!!」
神流はインベーダーの目玉を刀を突き刺し、そのまま脳をえぐる様に刀をひねり、そのまま肘でさらに深く打ち込む。
そのまま内側から引き裂くように刀を振るい、顔面を一刀両断。血液が噴水のように吹き上がり、断面から脳みそと目玉が零れ落ちた。
「竜子さん、援護ご苦労です」
「はぁー? インベーダー殺した数なら私の方が上だが?」
「ですが大物を殺したのは私です」
サムズアップに明らかに嘲るような笑みを浮かべる神流に、竜子は中指を立てて言い返す。
竜子は斧を片手に神流へと詰め寄る。一触即発の空気、二人は互いの獲物を振るい、
「デカい分ボーナスありますからね、私のが強いです」
「勝手にルール決めてんじゃねえぞコラ」
左右から襲ってきたインベーダーをお互いに引き裂き合う。
返り血が地面を濡らし、インベーダーの臓物がアスファルトへと飛び散る。
「じゃあ今から数で競いますか、石川竜子」
「……上等!」
二人は互いに競い合うようにインベーダーを切り裂き合いながら、奥へ奥へと、インベーダーの層が厚い方へと走り去っていった。
まるで暴風雨のようにインベーダーを巻き込み、蹴散らす二人がこの場を去り、巴のみがこの場に残されてしまった。
ぽつんと立ち尽くす巴。周辺にはあの暴風雨二人のお陰で数こそ少なくなったものの、未だインベーダーの姿が残っている。
「……えっと、お嬢さん?」
自衛隊の一人が、恐々と巴に話しかけてきた。その表情は困惑半分、警戒半分といったところか。人型のインベーダーが確認されている以上、民間人だったとしても警戒を解くことはできない。
巴もそれを理解しているのか、よろよろとスナイパーライフルを杖に立ち上がり、無理やり息を落ち着かせてから、口を開いた。
「はあ、わ、私はあなた達のみ、味方で、うぇっ……すみませんが水お願いしますわ」
自衛隊から投げ渡された水筒を手に取り、一気に喉へと流し込む。生ぬるい常温の水、それでも叫び疲れ&向かい風を浴び続けた喉を潤してくれる。
やがて空になった水筒を投げ返し、巴は後ろを振り返ることなくスナイパーライフルから放たれた扇状のエネルギーでインベーダーを蹴散らしてから口を開く。
「私はあなた方人類の味方、魔法少女飯辻巴ですわ! 私が来たからにはもう安心、さあここから戦線をぐいぐい押し上げていきますわよ──あの、自衛隊の皆様方、どうして私をかついで」
「民間人がこんなところに来ちゃ駄目だろ! 安全なところに連れていくから、しばらく大人しくしてなさい」
「いえ私は民間人ではというか魔法少女というか……なんでこうなりますのー!?」




