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健康優良魔法少女ATTACK!!AGO!!GO!!  作者: プラン9


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第14話:狙いうち

 今やヤクザのフロントとなっている十階建ての極道ビルの屋上、一人の人型がいびつな形の狙撃銃で眼下を覗いていた。

 その銃は全てが黒く塗りつぶされており、スコープ部分にはレンズの代わりに赤黒く充血した目玉がはめ込まれている。


「……殺した?」


 歪な狙撃銃の持ち主である彼は、スコープ越しに彼女──飯辻巴を覗きながら、呟く。


 全身をまとっているぼろい布切れからはインベーダー特有の黒い装甲が見え隠れしており、ストックに伸びる手は黒いストックと同化している。明らかに人間のものではない。


 そして、その傍には中型のインベーダーが置物のように中座している。シャムとアポテムが充てた護衛である。

 彼の名はニクト、シャムやアポテムとは違う純戦闘型の小型インベーダーだ。長距離狙撃特化であり、近距離からの攻撃を得意とする竜子や神流への対策に新たに作られた存在である。


「……死体の確認」


 ニクトが一瞬宙に目をやると、巴のいた道路の上に魔法陣が現れ、そこから中型のインベーダーが二匹降りてくる。

 が、地上から放たれた青白い光の線が、空中にいるインベーダーの頭部を破壊し、一匹はアスファルト道路の上に崩れ落ちた。


「……やっぱり。生きてる」


 無事に降り立ったもう一匹も着地と同時に頭部を破壊され、崩れ落ちてしまった。やはり仕留めることはできなかった。だが、彼女の使う武器の攻撃はとてもいい目印となる。


 ニクトは再び、彼女に向けて引き金を弾く。青白い光が登ってきた場所、そして移動するであろうところを予測し二か所、偏差で生け垣越しに撃ち込む。


 刹那、スコープ越しにこちらへ飛んでくる青白い光がこちらへと向かってきた。青白い弾丸はニクトを守る為立ち上がったインベーダーの腹部を破壊し、血がニクトの頭上に降り注ぐ。


 生け垣越しに撃ち込む為に注視してしまった一瞬の隙をつかれてしまった。生け垣の上への警戒が疎かになる一瞬、その一瞬に彼女は大きくジャンプしこちらへと撃ち返してきていたのに気づかなかったのだ。


「……一筋縄じゃいかない、か」


 気を取り直してアスファルトの道路をスコープで覗く。夜だというのにスコープ越しに見る視界は昼間のように明るい。派手に飛び散った血に交じって、建物の裏へと続く彼女の血痕と、をしっかりと見せてくれる。


「……?」


 何か違和感があったが、些細なことだろうと思考の隅に追いやり、ニクトはビルの谷間を飛び越え彼女の後を追った。

 大通りを一つ飛び越えて、ビルの屋上に着地する。

 足元からヤクザの怒号が聞こえてくる。窓を開けているのだろう、その声はやけに鮮明だ。ニクトは少し煩わしそうに眉をひそめるも、標的にバレてはいけないため手出しできないことに歯噛みした。


 しかし、ここでひとつ違和感が生じた。


「……何かを、見落としている……?」


 己の疑問を口に出し、思考を整理する。

 彼の背後、先ほど巴を狙撃した遊歩道に転がっているあのインベーダーたちの亡骸、何か引っかかる点があった。


 それは何か。重大な見落としな気がしてならない。だが頭を振って、一旦思考を止める。


「……今重要なのは、あいつを殺すこと」


 余計な思考は判断を鈍らす。考察は後ほどすればいい。ライフルを構え、ニクトは巴の姿を探す。

 彼女の姿自体は見当たらない。だが血痕が、ニクトの目には鮮やかに写り込んでいた。暗闇であろうと、彼らには関係ないのだ。


 暗闇だから血痕が落ちてもバレないと油断したのだろう。相手は人間、インベーダーの身体性能の特性を知る筈がない。油断ではなく、無知が生んだ悲劇。

 血痕は大型トラックの裏へと続いている。あれを遮蔽物として乗り過ごそうという魂胆だろう。


「車の影に隠れるのは悪手」


 そう言い放ち、ニクトはトリガーを弾く。弾丸はトラックのガソリンタンクに命中し、爆発を起こす。

 ニクトの潜んでいるビルの中から「俺のトラックゥ!!」と悲鳴が上がる。


「魔法少女といえど人間、流石にこれで無事には──」


 青白い光、ニクトが思考するよりも先に体が動く。咄嗟に伏せたニクト、そして守るように覆いかぶさる二体のインベーダー。

 青白い光は二体のインベーダーを貫いたかと思うと、光の根本から連鎖的に炸裂した。爆発が広がり、夜の闇を青く照らす。内部から爆発したインベーダーの肉片が天高くまで舞い上がり、そして雨のように落ちてくる。


 おかしい。初交戦時にはこのような攻撃はしてこなかった。手を隠していた、という可能性は低い。狙撃手同士の対決ともなれば、先手必勝であり、その為なら手段を択ばない。


 だというのに、明らかに今までとは規模の違う攻撃。

 ニクトはスコープを覗き、巴の姿を探す。先に見つけて、なんとしても仕留めなければならない。仕留めなければ、先にやられるのはこちらの方だ。威力も、悔しいが精度も明らかに相手の方が上なのだから。


「次こそは必ず──」


 またしても光が、今度はニクトの足場──ビルの屋根、ニクトの足場に光線が照射され、爆発。腹を押し上げるような感触がニクトを襲い、やがて重力に引かれて瓦礫と共に落ちていく。


「人が住んでいるってのに建物を……!? いっ、イカれてる……!!」


 古めかしいソファも、壁にたてかけてあったであろう組と書かれた額が瓦礫に混ざって落ちている。瓦礫に押しつぶされたらしきヤクザが、右足を挟まれてうめいている。


 民間人すら巻き込んであの女……と憤る暇もなく、次なる弾が下の階に飛び込んでくる。


「あいつら、人間の味方じゃないのか……!? 民間人を巻き込んで……!!」


 インベーダーを殺す、これは可能性としては想定していた。だが、人のいる足場を破壊してくるのは完全な想定外。何故なら魔法少女とは基本、人間の味方をする存在だからだ。

 故に巻き添え覚悟の攻撃をしてくるなど、露ほども思っていなかった。


 不意を突かれた。しかして、こんな手を切ってくると想像しろという方が不可能な話。心の中で悪態をつくが、時すでに遅し。


「なにあれっ……飛んで……!? くっ、落ちろ!!」


 まるでロケットのように青い光を背に飛んでくる巴に、ニクトは狙いを定めトリガーを弾く。


 弾道予測は完璧だった。だが内臓が潰れるのではないかという急速なGを感じさせる、UFOのような不起動な動きで避けられ、一秒もたたないうちに距離を詰められ、頭上にまで迫りくる。


「思い付きでやってみたけど結構いけますわねえ!! ライフルロケットォ!!!!」


 炸裂する弾を推進力として使い、さながらロケットのように空を駆ける巴。

 壊れたスピーカーのような笑い声をとどろかせ、インベーダーの返り血を浴びて真っ黒に染まった巴が、スナイパーライフルを大きく振りかぶって落ちてくる。


 そして、そのまま着地と同時にニクトの腕に勢いよく振り下ろされた。乾いた木のような音を立てて、腕の骨が折れた。


「あっ、があああああああっ!!!! あ、き、貴様……貴様ぁ!!」

「初めまして狙撃手さん、良い夜ですわね。デートのお誘いを受けてあげたんですから、もう少し嬉しそうにしたらいかがですの?」

「誰が、お前なんかと……!!」

「……あら、インベーダーに近い見た目ですわねえあなた……まあいいですわ、どうでも。今は新技開発できたってのに気分が高揚していますもの、我ながらすげぇですわねこれ」


 ニクトに銃口を向け、自らの放った弾がもたらした惨劇に感嘆の息を漏らす巴。

ニクトは折れた腕を押さえながら、巴の顔を睨みつける。


「貴様、人間の味方じゃ……ないのか……どうして、どうしてそんな、同族を巻き込める……」

「どうしてって、ヤクザは人間じゃありませんことよ?」


 きょとんとした顔で首をかしげる巴。

 言っている意味が分からない。呆然とするニクトに、巴は続けて言葉を紡ぐ。


「ここら一帯は一般人ならまず立ち寄らないヤクザの所有地ですわ。このビルも当然ヤクザのもの。ヤクザにゃなにをしても構わない、|理解しまして《do you understand》」

「なっ、なにが起き……若頭(カシラ)ぁ! テメェらよくも──」

「うるさいですわ」

「うわああああああ!!!!」


 巴は一瞥すらせずに、入ってきたヤクザに向けて発砲する。弾はヤクザの足元で破裂し、足場を失ったヤクザは瓦礫と共に下の階へと落ちていく。

 同じ人間に対してするものとは思えない仕打ちに、ニクトは憤慨する。


「ヤクザ……? わからない。同じ生物じゃないか。人間じゃないか!!」

「ここまで私を強くしてくれたんですもの、冥途の土産に教えて差し上げますわ」


 ニクトの口に銃口を突っ込み、首を踏みつけて動かないように固定する。

 ニクトは全く理解できないでいた、彼女の言っている言葉が。同族を殺してもいい理由が。


「私は人によって対応を変えます。社会の役に立つ人間、社会に迷惑を掛けない人間であれば私は助けますし、人として認めますわ。でも極道(ヤクザ)は社会の害獣、寄生虫ですもの。駆除以外あり得ませんわ」

「そんな道理が通るかっ!! イカれ女が!!」

「そもそも魔法少女はみんなイカれてましてよ」


 しかして、その疑問が答えへとたどり着くことはなく、巴の放った青白い魔力の弾がニクトの頭を弾け飛ばし、黒い返り血が巴の体に降り注ぐ。

 真っ黒に染まった歯を見せた笑みを浮かべながら、前の自分とは段違いに上がった威力に満足する。


「……やはり思った通り、威力が相当上がってますわね」


 巴はけぷっ、と軽くげっぷを吐き出し、己の仮定が当たっていたことに静かに喜んだ。

 そして竜子と神流、そして巴との違い。実力を離していた原因は何なのか。全てが明らかになった。巴の考察は当たっていたのだ。


 とはいえ流石に食べるのはやりすぎたか、と己の行動に反省しながらも、ニクトの亡骸に、残った体に弾を撃ち込む。僅かに残っていた躯は、四肢を四散させてそこら中にはじけ飛んだ。


「……流石に人型を食べる気にはなれませんわね」


 一瞬食べようかと悩んだものの、いくら強くなれるとはいえ人型を食べるのは流石に自制することにした。

 万が一にも復活しないよう、念には念を入れて。そして巴は気分よく、鼻歌を口ずさみながらこの惨劇の場を後にした。


 ニクトの折れた腕が、硬く握りしめられているのに気づかずに。

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