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健康優良魔法少女ATTACK!!AGO!!GO!!  作者: プラン9


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第12話:修行

 歴史を感じさせつつも、丁寧に管理の行き届いているであろう武家屋敷。雑草一つすらなく整備された中庭に神流は、風情をかき消すように中型インベーダーの装甲を突き刺した。


 装甲にこびりついた体液は既に乾いており、粉となって空へと消える。

 神流は、黒いロングコートに黒いズボンという、おおよそ男装と見られてもおかしくない魔法少女の姿となり、刀を構える。


(……アポテムとかいうあの男の刃も、中型インベーダーも切り裂くことができなかった)


 神流は、大きく踏み込んでインベーダーの装甲に向かって刀を振り下ろす。

 記憶によみがえるのは、アポテムに投げ落とされたあの記憶。背中に残る汚名の痛みが、未だじくじくと残っており、刀を振るうたびに激痛が走る。


 刀は装甲を両断することなく、切れ目が入るだけ。人間であれば出血多量にできるだけの傷が入るが、この程度ではインベーダーを殺すことは不可能。

 これでは意味が無い。これでは、あの時出してきたインベーダーを屠ることはできない。これでは、アポテムというやつに勝つことはできない。これでは、竜子を超えることもできない。……これでは私はは、竜子の下になってしまう。


 竜子の背に守られてしまう自分を想像し、神流は歯噛みする。ふざけるな、そんな未来ふざけるな。見下されて、守られてたまるか。


 無論、本当にそうなるかはわからない。むしろ、そんな関係にならない可能性の方が大きい。竜子がそういったものを気にせず、たとえ自分より腕が劣っていようと気にしない人間だと、神流自身短い付き合いながらに理解している。


だが、それがどうした。


 竜子がそう思うかどうかは関係ない、神流自身がどう感じるかどうかが重要なのだ。

 一閃、また一閃と装甲を切り続ける。


「このままでは、駄目」


 中型インベーダーを殺せない訳ではなかった。刀を突き立て、杭のように打ち付け、装甲をえぐり肉を引き裂く。そうして何匹も倒してきた。

 だが、それでは駄目だ。そう倒すのでは駄目だ。工夫して倒すようでは、竜子に対して劣っていると証明しているようなものだ。それで満足していては、竜子より力が低くても仕方ないと妥協しているようなものだ。


 そして何より、アポテムをこの手で殺すことができない。


「もっと、もっと私は、強くならなくちゃいけないんです……このくらい、切り裂けないと話にならない……!! あの女に、見下されてたまるか!!」


 神流は何度も、夜が明けるまでインベーダーの装甲に向けて刀を振り続けた。

 あの女を、石川竜子という魔法少女の後輩に追いつくために。後輩を超える為に。

 あの男を殺せるようになるために。



 時を同じく、飯辻巴もまた自室で、神流と同じように頭を悩ませていた。

 いかにも少女然としたファンシーかつデフォルメなイラストの描かれた小物などがあちこちに置いてある部屋。

 ぬいぐるみに囲まれたベッドに寝転がりながら、巴は魔法少女の時と同じ姿をして天井を見上げていた。神流と同じように戦う時と同じ姿をしているが、これは神流のように鍛えているからではない。この姿を私服としても活用しているだけだ。


「ん~~~~……どうすればいいのかしら……」


 巴もまた同じように、どのようにすれば強くなれるのか頭を悩ませていた。自分の持つ得物はスナイパーライフルではあるが、いまいち決め手に欠ける部分がある。というのもまず何より、火力が無いのだ。


 中型インベーダーだろうと消し去れるような威力もなく、また銃口と同程度の穴をあけることができたところでインベーダーを殺せるという訳でもない。


「なにより強くなるには……はあ、どうしましょう」


 巴はうつぶせに寝転がり、豊満な胸で猫のぬいぐるみを押しつぶす。

 実のところ、どのようにすれば強くなれるのかある程度検討はついている。

 だが、言うは易く行うは難しとでも言うべきか、少なくとも巴には難しいものではるのは間違いない。


 何より確証がない。あくまで、予想でしかない。下手をすれば腹を壊すかもしれない。

 だからこそ、故に、悩んでいるのである。


「……はぁ、本当、面倒ですわねえ」


 世の中とはままならないものである。巴は何度目かもわからないため息をつき、近場にあったペンギンのぬいぐるみを抱きしめた。


 ぐう、とお腹が鳴った。思えば帰ってから、何も食べていない。中学生であるものの一人暮らしをしている彼女は、自分で食事を用意しなければ食べることすらできない。


 そして、そういえばと思い出す。冷蔵庫の中身は今、空っぽであったと。そしてそのことに帰ってきてから気付いたが面倒くさいからと食事も後回しにしていたと。

 学校で起きたいろいろな事件ですっかり忘れていた空腹感が、午前零時という今になって掘り起こされてしまった。


「……面倒ですわねえ」


 自分を置いて先に逝ってしまった親の写真を横目見て、巴はため息をつきながら鍵を手に取った。


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