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42 セクハラ・ミット・ボーイ

 イテテ……と言いながら、まだ痛むらしい後頭部を擦っている森さんに大丈夫かよ?と声を掛けつつ、みんなしてカフェオレを飲んでいるとなんとなく落ち着いた……気がする。

 軽く後頭部に手を回しては、イテテ……と痛みを発している森さんを心配することは別にやましいだとか深い意味は無いと思う。

 知り合いで、しかも近場で痛がられたらそれは人間として心配することが普通だろ?


「……まだ、痛むのか?」


 なんだったら氷とか用意してもらうか?と声を掛けていくが、それほどでは無いらしい。

 それにしても……ツインテールを解くと、こんな感じになるのか……。結構長めの黒髪を垂らしている今の森さんはヘッドフォンも何処かに置き去りにされたのか付けていないし、白衣も脱がされているからまさに流行の女子そのものっていう恰好をしている。ただ……どうしても気になっていたのが、抱き上げたときの森さんの軽さだった。


「うーん、ちょっと……ね。でも、だいぶ平気!」


 う~ん、と僅かに首を傾げつつニカッと笑みを浮かべて平気と言うから痛いのか平気なのかどっちなのかイマイチはっきりしていない。


「……いや、どっちだよ」


 ついつい突っ込んでしまったのだが、そんな森さんと俺とのやり取りを見てニヤニヤしているヤツがいた。


「ほほーん?」


 なんとも微笑ましい……って感じの笑い方じゃないな。

 なんとなく、面白そうなモノでも目にしたような笑い方をしている樹に視線を向けると余計にニマニマさせていく。


「?どうした?樹?」


「いやいや、べっつに~?な~んか、湊って森さんといい感じだなぁって眺めていたところ」


 いい感じ?

 森さんの状態を怪我人……って言っていいのか分からなかったけれど、怪我人がいたら心配するのは普通だろう。


「え、そうなの?」


 樹がバカなことを言い出すもんだからカスミもドキドキしているのか薄っすらと頬を赤らめながら俺と森さんとを見ている。……いや、勘弁してくれ。


「いやいや、そう見えるっしょ?湊のヤツ、めっちゃ森さんのこと心配してんじゃん」


 つか、心配しない方が無理が無いか?

 知り合ったばかりの人間とは言え、目の前で実験されそうになるところを見たばかりなんだからそれを心配しない!なんてヤツはいないと思う。


「非常事態だったとはいえ、お姫様抱っこしていたわよね」


 いや、そこかよ。

 つか、渚さんも自分の口で『お姫様抱っこ』とか言ってるが……やっぱりそういうのって女子からすると憧れとかがあったりするんだろうか?


「うんうん!なかなか経験出来ない抱っこだったよ~!いやはや、さすが男子!力強いねぇ!」


 だいぶ元気になってきたらしい森さんはお姫様抱っこを経験出来たことに大層興奮しているらしく、目をキラキラして語り始めてしまった。


「……あー、いや……森さんも軽かったし」


 軽い……の一言で済ませても良いんだろうか。

 いや、異様に『軽すぎる』……と思えた。いくら小柄で、女性だからってこんなに軽いものなのか?って思えたぐらいに。


「これでもダイエットしているからね!」


 胸を張りながら『ダイエット』とか言い出すが、絶対この人には必要無いことだと思う。


「必要無くね?」


 樹も俺と同じ意見だったらしく、じっと森さんの体型を見てからあっさりと一言返していった。


「……じゅうぶん細い、ですよねぇ?」


 同性であるカスミから見ても細いと見えるほどに森さんは細い。

 つか、無駄な肉っつーか……ほとんど骨と皮だけなんじゃないか?ぐらいに軽く感じた。……この人、こんな体してるくせに、ちゃんと生きて生活出来ているんだよな?


「そうよ。あなたはもっと食べた方が良いと思うわ。そもそもあんまり食べているところって見たところが無いし、ちゃんと食べるモノも食べないと栄養失調で倒れるかもしれないわよ?」


 渋谷で出会ったときにはカフェで一緒に食事をしていたけれど、渚さんとしては一緒に働いているときにはほとんど食事をしている光景は見られなかったという。

 栄養面も心配ではあるが……俺が言うのもなんだけれど、女性として出なきゃまずいような場所も森さんは少ない気がするからきちんと食べるモノは食べた方が良いんじゃないだろうか。


「おおー、始まった始まった。渚さんからのお説教が」


 樹はおかしそうに笑いながら聞いているものの、樹は別の意味で食事面を気を付けた方が良い気がする。今まで大食いで体に害らしいモノは出ていないからってこれから先も問題無いのか?って聞かれたら……そりゃあ問題が出てくるときもあるだろうしな。


「……でも、食べた方が良いっていうのは同意する。アンタ、軽すぎるだろ」


 手足も……なんだったら腰だって、めちゃくちゃ細い。

 軽くぽきっとやったら簡単に折れてしまうんじゃないか?と思うぐらいの細さだと思う。


「そーぉ?女の子は、いつだってダイエットをしたがる生き物なのだ~!」


 そう言って退けるからカスミと渚さんへそれぞれ視線を向けていくものの複雑そうに首を傾げられてしまった。


「って、言ってるけれど?カスミは?」


「う、うーん……あんまり意識したことは、無いかなぁ」


 カスミも無駄に間食みたいなモノは口にしていることは少ないし、どちらかと言えば細い方に分類されるんだろう。それは日々、健康的な食事とやらを気にしてきちんと自分の体型とかを管理出来ているのかもしれない。


「……渚さんは?」


 渚さんだって別に太っているってわけでもなさそうだ。

 どれぐらいが『普通』って範囲にあたるか男の俺としては分からない部分だけれど、痩せている方だと思うし、女子ってそんなにダイエットダイエット!って気にしながら生きているものなんだろうか?それにしては、流行に乗っかっていろいろな食べ物が流行り出すと食いつきが良い感じがするのも女子の方が早い……気がする。


「食べる以上に頭も働かせているもの。自然とカロリーは消費していくものなのよ?」


 渚さんの場合は、きちんと食事もするがその分カロリー消費も激しいらしい。

 別に体を動かすことばかりがカロリー消費にあたるわけじゃなくて、頭を使うことも渚さんからすればじゅうぶんカロリーを使うことらしい。なるほど、頭の方か……。


「うぅ……ナギっちぃ……カスミんも酷いぃぃぃ……」


 すっかり元気……っつーか、森さんらしくなってきたようでテーブルに顔を押し付けながらオイオイ……と泣き真似のような体勢を取っていくものの、どっからどう見たって嘘泣きだと分かる。

 体型からしても小さいし、思わず小動物のように見えてしまって片手を森さんの頭に伸ばすと、よしよし……と撫でてあげた。つか、触って分かるけれど頭も小さくね?……いや、変な意味とかじゃなくて、頭蓋骨って言うのか?それそのものが小さい気がする。


「あ!ちょ、ちょっとちょーっと湊!それ、セクハラじゃねえか!」


 途端に樹の口から『セクハラ』っていう言葉が出て来たからどこをどう見たらセクハラになるんだ?と不審そうに見返した。


「……は?」


「セクハラ?」


 カスミも俺の行為の何処にセクハラ要素があるのか?と不思議そうに見ているらしい。


「へ?なんでなんで?」


 ゆっくりとテーブルから顔を上げた森さん(やっぱり嘘泣きだったから目元も何処も濡れていなかった)も不思議そうに問い掛けていく。


「今、そういうのうるさいって知らねえのかよ!ったく、お前らはー……」


 樹は腕組みをしながら俺を呆れたように見ているが……え、俺が森さんの頭を撫でたことがセクハラになるのか?


「何処ぞのサラリーマンじゃないのだから、こういうのはセクハラには値しないんじゃないかしら?そもそもセクハラとかは、相手が嫌がる行為を言うのでしょう?」


 渚さんもセクハラの定義そのものを説明し出してくれたおかげで、なんとなくだがセクハラについての理解を深めることが出来た。


「……あー、嫌だったら悪い……」


「全然!全然!嫌じゃなかったから大丈夫なのだ~!」


 気まずくなってきて(あまりにも樹の勢いが強かったから)謝罪をしていくものの森さんからはなんてことは無い!という顔で言われてしまった。……結局、セクハラだったのか?

 女性は髪型一つでだいぶ印象が変わるのだ!森さんの場合は?どう、だろう(苦笑)


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