39 意識の無い、子ども
ボブに案内されるまま、俺たちは研究施設に入ることが出来た。
なんだかボブの妙に明るすぎる話し方、そして行われている実験とやらに違和感を抱きつつも後ろの方から付いていくことにした。
ボブに連れられてやってきた研究施設が入っている階層。
ちょうどガラス張りになっているから廊下からでもじゅうぶんに中で何が行われているかは見られることが出来た。
ただ、ここから見ている範囲だと、普通の研究施設っていうよりもオフィスって感じが強い。
とにかく一人一台のパソコンと向き合いながら様々なデータを打ち込んだり、時には消去させて新たなデータを用意してあれこれと確認しているようだった。
「ごくごく普通の研究施設……のようね?」
渚さんもそう怪しむほどの施設ではないと思ったらしく、というか渚さんが働いていた場所もきっとこんな感じだったのかもしれない。
これなら、別に怪しいって感じはしないのだが……。
「ソウダヨ?普通ダヨ~?」
ただ、さっきから気になっているのはボブが妙に明るい……いや、明るすぎるような雰囲気ってところだろうか。
初対面の、……渚さんは知り合いらしいから何となく分かるけれど……俺たちは初対面なのに明るく接してくれている。時には冗談とかもまじえつつも、なんとなく気になったことがあればすぐに応えてくれているし……ここは、本当に普通の施設だったりするんだろうか。
「う~ん……?それにしては、なーんか変な感じがするようなしないような……?」
ただ、樹的には先ほどから感じている違和感に『う~ん』と首を傾げているようだ。
それは、今もなお続いているし、何が変なんだ?と聞いてみると上手く言葉で説明出来ないのがもどかしいらしい。
「研究員の人たちは真面目そうに集中しているみたいだねぇ」
カスミはちらちらとパソコン操作をしている研究員たちの姿を見ては凄い集中力だねぇと感激していた。
いろいろなデータと向き合っている施設の従業員たちはそれはそれは真面目そうだった。
まあ、渚さんも真面目タイプっぽいし、研究員っていうのはこんな感じで毎日過ごしているものかと思うのだけれど……。
「研究が仕事だもの。集中していないとミスったら大変なことになるわよ?」
そりゃ、確かに。
たった一つのミスで、作り上げてきた研究が台無しにでもなったらとんでもない責任を取らされることになるんだろう。なかには、デスク周りに栄養ドリンクだろうか……それらしいモノがめちゃくちゃ並んでいる人のデスクもあったりしているから長時間集中させる頭にも相当な負荷がかかっているんだろうなあ。
「う~ん……それにしては、研究員たちの様子がなーんかおかしいような気が……?」
樹は、研究員たちに何処か違和感を抱いているらしい。
それが『何なのか』と、じーっと研究員たちの様子を眺めているものの、言葉に出来るほどの上手い説明が見つからないらしい。
「……研究員たちの様子が?」
俺からすれば、研究に真面目な人たちがパソコンと向かい合っているばかり。
無駄な話とかは一切無く、ただただデータと向き合って過ごしている研究員の姿が視界に入っているだけなのだが、樹には違うモノが見えているんだろうか?
「なんつーか、心ここにあらずっつーの?集中してるとかそういうんじゃなくてさ、なーんか顔とかちらっと見えるけれど、なーんかおかしくね?」
真面目に見えるってだけでは?
たまに、研究員たちの横顔とかが見えることもあるがいたって普通の研究員っぽい……はずだ。
「オカシイ?樹ハ、オカシク見エルノカイ?」
ボブは樹の不思議な発言に首を傾げてしまっている。
きっとボブからすればいつも目にしている光景だから、特に何かが変だと思ったことなんて無いんだろう。
「おかしいって言うのも変か……なんつーんだろ?」
あー、でもない。こー、でもない。といろいろぶつぶつと呟いている樹だったが、勘の良い樹のことだから研究員にも何かしら不審に感じる点があるのかもしれない。
「……樹がこう言うんだから、何かあると思う」
ここまで樹が言うのだから、俺も樹が不審に考えていることを探ろうとするものの、あいにく俺には普通の研究員たちがパソコンと睨めっこしている様子ぐらいにしか……見えないんだよな。
「こちらはデータ処理の端末ばかりの部屋っぽいわね」
大きな端末処理装置、そして、複数ものパソコンと向き合っている研究員たちがいる部屋は、端末室とでも言えば良いのかもしれない。
「ソウダヨ~、毎日毎日パソコント睨メッコダヨ~」
ボブもここで働いて長いらしく、やれやれ~と肩を落としながらもやる気は満ちているようで、楽しげに話していた。
「……肩凝りそうだな」
こんな職場だったりしたら俺は一日ぐらいしか、いや一日も耐え切れずに辞めてしまうかもしれない。それほどまでにパソコンと一日中向き合って、小難しそうなデータとのやり取りをしているなんて考えるだけで頭も痛くなりそうだし、肩も凝りそうになってしまった。
「奥のドアの向こうでは何がおこなわれているのかしら?」
端末室には別室に繋がっているドアがあり、隣の部屋でも同じくデータ処理をおこなっているものかと思っていたけれど渚さんからの質問にはボブは明るい表情で『人体実験』と言い放った。
「ソッチハ、人体実験ヲスル部屋ダヨ~!」
『人体実験』だろ?
さっきからも不思議に思うことだが、なんでボブはこんなに明るいんだ?いや、明るすぎるのがなんだか異様に見えてしまってきた。
「……そっちを見せてもらうことは出来るのか?」
あまり見ていても楽しそうなモノってわけでもないだろうが、それでも確認出来るのならば確認しておかないと。
「モッチロン!」
端末室にお邪魔した俺たちのことなんて他の研究員たちは特に気に止めることもせず(これも何故か不気味に見えてしまった)ボブは、ドアを開けて『実験部屋』へと案内してくれた。
やっぱり見ない方が良かったかもしれない……。
「……ここ、は」
いくつかの椅子が用意されていて、その傍らには機械が。そして、そこからは長いコードが何本も付けられていた。
しかも、今ちょうど実験されている人間がいるらしく、頭に何本ものコードを付けられているのに体は拘束具らしいモノは一切無いという光景に目を疑ってしまった。
「椅子に、コードで繋がれた……あれ、人間だよな?」
樹も、アレは本当に生きた人間だろうか?不思議に感じたらしい。
それほどまでに、椅子に座らせられている人間……見た目は小学生ぐらいだろうか、は大人しかった。
「チョットシタ電気信号ヲ与エテ、反応ガアルカ確認シテイルンダヨ」
電気信号?
「電気~?それ、頭とかに送ったら余計にマズイことになるんじゃないのか?」
微弱はモノなら、もちろん害は無いだろうが、今椅子に座らせられている人間は見たところ先ほどからずっとコードを頭に付けられているし、電気信号とやらも送られ続けているらしい。が、反応が……無い?
「平気、平気ヨ~!」
「安全面は?きちんと保証されているのかしら?」
強すぎる電気信号を長時間流していけば、それこそ精神が崩壊することもあるんだろう。
渚さんはこの実験とやらに不審そうに見ていた。
「モチノロンダヨ~!今、検査シテイルノハ、病院カラ連レテ来タ患者ネ!」
患者?
っていうと、意識が戻らない患者ってことなんだろうか?でも、一応目は開いているっぽいけれど。
「……無反応?」
「あの子、意識が……無いのかも」
じっと見ていたカスミがぼそっと呟きをもらすと俺と樹はハッとしてカスミを見た。
「は?カスミ、分かるのかよ!?」
「研究員の人たちが近くで話し込んでいても全然反応が無いように見える。それに、目は開いていると思うのに、何も見えていないような……」
目は開いているのに、意識が無い……だと?
それって、生きては……いるんだよな?
治療だとかなんとか言っているけれど、これって患者の容体を余計に悪化させていることに繋がっているんじゃないだろうか?
目にしてしまった人体実験。でも、ここで行われている実験は、こんなモノだけじゃないのです!!
良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!




