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35 次の目的地

 フラグメントがどういうモノか知った今では、学校への不安が募る。

 学校が、みんなが巻き込まれていないだろうか……。

「学校、行かなくて良いのかよ?」


 きょとんとしているのは樹だった。

 が、そのかたわらでカスミは不安そうに俯いている。


「仲の良い人たちも大勢いるかもしれないけれど、フラグメントがあったってことは既にヴェイカントがいたってことでしょう?それに、私たちが行って戦闘にでもなれば近くにいる学生たちは多かれ少なかれ巻き込むことになってしまうわ」


 えーっと、空間的に巻き添えを食らうのはプールぐらいの広さって言ってたっけか?

 ただ、校舎の外ならまだしも校舎の中で戦闘にでもなって巻き込まれることになれば多数の生徒や教師が気分の悪い思いをすることになるだろう。


「でも……心配ですよね……」


「不安な気持ちは分かるわ。それでも危険性がある場所に、わざわざこっちから出向く必要は無いんじゃないかしら?」


 渚さんもカスミの不安がる気持ちは察してくれているらしいが、わざわざ危ない道を自分から進んでいくのはどうかと諭しているらしい。

 本当にヴェイカントがいたのか、もしかしたらいなかったんじゃないのか……それも、はっきりとはしていないしな……。


「……でも、フラグメントがあったってことは校舎近くにいたらしいヴェイカントは誰かに倒されたってことだろ?」


「っつーことは、味方か!?」


 樹が、ここに来て味方になってくれそうな存在がいるかも!?と興奮しはじめていくが、果たして味方と決めつけるのは良いことなんだろうか。


「それがはっきりしないうちは、味方と断言するのはどうかしら」


 モヤモヤしていた俺の気持ちと同調するかのように渚さんも怪しんでいるようだ。


「……って、言うと?」


「不要になったヴェイカントを回収、もしくは破壊しただけっていうことも考えられるでしょう?」


 自分たちで用意したっていうのに、わざわざ倒して回収するとかって有りなのかよ……。

 元々、ヴェイカントに人間同様の命なんてモノは無いし、どっちかって言えば機械生物みたいなモノだから、生み出すのもぶっ壊すっていう気持ちも軽く考えられているのかもしれない。

 それでも……あっさりとし過ぎじゃね?


「……裏社会の人間が、不要になった道具を始末したってことか」


「言い方は少し残酷かもしれないけれど、湊くんの言う通りね」


「つっても、このままここでじっとしているのもなあ……」


 さすがに、壬生事務所の休憩スペースにこもったままで、ずっと大人しくして過ごしているのは息が詰まってしまう。

 それにいろいろな考えをしている人たちがいるものだから、時には衝突しかけることもあって空気が悪くなるときもあるから四六時中同じ場所にい続けるっていうのも心身には悪いのかもしれない。


「……こっちから森さんに連絡は付かないのか?」


 そう言えば連絡先は知っているのだから森さんとは連絡が付かないんだろうか?と考えたが、渚さんには未だに首を左右に振られてしまった。


「朝から連絡は一応入れているのだけれど、なかなか反応が無くて……」


「もしかして一人で張り切って行ったもののヤバい連中に捕まった……とか、言わねえよな?」


 勘が良い樹が言うと、マジでそうなるかもしれない……って思うようになってきてしまうから、あまり冗談だとしても、そういう手の冗談は止めてもらいたいんだが。


「そこまで無茶をするような人ではないと思いたいのだけれど」


「……だったら、他の地区を見て回るっていうのは?」


 誰も『これだ!』っていう案を出さないものだから、一呼吸置いてから思い切って俺が口を開いた。


「他の、地区?」


 樹はまだピンと来ていないのか首を傾げている。

 こういうときには勘とかは働かないのか……。


「……例えば、東京には他にもあちこちに研究施設があるんだろ?だったらそこを覗いてみるとか」


 別に裏社会の人間のいそうな場所をあたってみようって言っているわけじゃない。

 俺たちの力になってくれそうな、そして新たな情報を持っていそうな人物をあたるとすれば違う研究施設をあたってみるのも良いんじゃないだろうか。


「渚さんは東京にある施設をどれぐらい知っているんですか?」


「規模が広すぎて……そうね、大きな規模のモノでって考えていけば秋葉原や銀座辺りになるかしら」


 確か施設そのものにはいろいろな分野があって大規模的なモンから小規模施設のようなモノまであるんだったか。

 それでも、このままここでお互いの顔を見合わせて過ごしているよりも、まだマシなんじゃないだろうか。

 そんななか渚さんから言われた地区には思わず目を丸くしてしまった。


「アキバに銀座!?」


 樹も意外だったようで、声がじゃっかん裏返ってしまっている。


「……なんつーか、意外なところにあるんだな」


 新宿もそこそこにびっくりしたものだったけれど、秋葉原に銀座って……。

 さすがに駅に近いところには……無い、よな。さすがに……。


「もちろん駅前に堂々と存在しているってわけじゃないわよ?多少、歩くことになる位置にあるわ」


 さすがに秋葉原や銀座の駅前に、そんな研究施設があったりしたら誰もが……メディアとかでも注目しているんじゃないだろうか。

 今までそんな施設があるだなんて話は聞いたことがないから……やっぱ駅からは離れた場所にあるんだろう。


「他に行くアテが無きゃ、そういう案も良いかもなあ~」


「……樹は、秋葉原と銀座だったらどっちが良いと思う?」


 そこで、俺は樹の勘の良さとやらを活用させてもらうことにした。


「は?俺?」


 樹は、いきなり自分に聞かれたので『?』を浮かべているのかもしれないが、コイツは自分で考えている以上に勘とかが鋭いヤツなんだということを知ってきている。


「……あぁ、なんとなくで良い。どっちの方が引っ掛かりを覚えるか……を言ってみてくれ」


 どっちの地区の方が気になるのか……こうして聞いてみれば、少しだけ考えた素振りを見せながらも樹は答えを出してくれた。


「そうだな~。意外だと思ったのはアキバだな」


 軽く腕組みをしながらも、たぶんそれは考える形を取ってみたかっただけだと思う……。

 そしてコイツの口から出たのは『秋葉原』地区だった。


「……意外とコイツの勘が良いことは昨日でも分かった。だからコイツの案を採用してみようと思う」


 森さんも確か樹は勘が鋭いだとか、第六感が優れているとかって言っていた気がする。

 まあ、どんな施設があるか分からないけれど、なんとなく……でもパッとひらめいた先に足を運んでみるのも良いだろう。出掛けるっていう理由にもなるし、ついでに新たな発見でも得られれば良し、例え発見が無くても、ちょっとした散歩みたいな感じで外を歩いてみるのも気分が良かったりするしな。


「そうね……ひらめき、というか……冴えていそうな感じはするし。でも、樹くん、体の方は大丈夫なの?」


 渚さんとしては樹の体が心配らしい。

 今のところは平気そうだな……まあ、この先何かあったとしても、取り敢えず休ませるとかいろいろして早く切り上げて帰るとかすれば良いと思う。


「おう、平気平気。ただ、途中でどっかで飯食ってから行こうぜ?」


 ……出た。

 コイツの食い気。一度言い出すと、コイツの腹がある程度満たされるまでは腹減った、もしくは何か食おうぜ~、と言い続けるものだから早めに何かを食わせてやった方が良いだろう。


「……なら、どっかで軽く食ってから行くとするか」


「カスミさんは、どうするの?」


 てっきり一緒に行くものかと考えていたのだが、渚さんとしてはカスミを置いていく考えでもあったんだろうか?


「いやいや、ここでさすがに一人置いて行くなんて出来ないっしょ?一緒に行こうぜ」


「……だな。一緒にいた方が万が一のとき、守れるんじゃないか?」


 んじゃ、決まり。

 まずは、樹の腹を満たすためにどっか食える場所に行くか。

 そして、今日のところは秋葉原への散策だ。新宿駅構内にもヴェイカントがいるらしい話があったし、気を付ける必要はあるが、そんな神経を研ぎ澄ませるほどに注意深くなるまででも無さそうだ。

 秋葉原で、新たな出会いや発見でもあるだろうか……。

 ネクストステージは『秋葉原』に決定!でも、まずは何か食べられる場所に行きましょう!(苦笑)


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