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34 学校は無事か!?

 翌日……つか、朝はやっぱり一番遅くに目を覚まして、昨夜は何処に行っていたの!?という渚さんと心配していたであろうカスミからの終わらない言葉の攻撃がしばらく続いていた。

 朝らしい朝は、とうに過ぎ。

 やっと目が覚めたときに、ちらっと時間を確認すると十時ちょい過ぎといったところだった。

 ちょっとばかし寝過ぎたところはあったけれど、そこからはとにかく大変だった。

 渚さんからは『いつまでふらふらしていたの!?』と母親みたいに叱ってきてくるし、カスミもカスミで『心配したんだよ?』と本気で心配してくれた様子で声は掛けてくれたものの、最後には二人して『せめて誰かには連絡入れて』ということで終わりがついた。


「まあまあ、二人とも。湊だって年頃だぜ?たまには一人になってぶらぶら出歩きたいときもあるって、なあ!?」


 こういうとき、唯一の同性である樹の存在には助かっている。

 おまけに樹も俺と同様、そこまで真面目人間ってわけでもないから多少ふらふらしていたって問題無さそうに言ってくるものだから、やっぱりコイツとは気が合うんだなと痛感していた。


「それは分からないでも無いけれど……でも、危なくなかったの?」


 たぶん、新宿の治安の問題だけじゃなくてヴェイカントとの遭遇やらバトルにはならなかったのかっていう点で渚さんは心配しているらしい。

 あまりにもここら辺でバトっていたら俺たちが過ごしているこの壬生事務所にも危険がおとずれるかもしれないから……っていうことだ。


「……それが、全然。ヴェイカントとも遭遇しなかった」


「良かったねぇ」


 怪しいヤツは元より、ヴェイカントらしき物体には一体とも遭遇しなかったと言えばカスミは心の底から安心したように息を吐いていた。


「つか、路上ライブ聞いてたんだって?そこにヴェイカントとかが遭遇したら……マジ、ヤバくね?」


 時間帯にもよるだろうが、もしも会社帰りだとか学校帰りで人が賑わう駅前でヴェイカントが仕掛けてきたらと思うと一般人としてはゾッとするだろう。

 もしくはワケ分からない空間の中を体験して、車酔いのようなものを感じて一時的に具合を悪くするヤツも多くなるかもしれない。


「……まあ、確かに。いっぱい人いたしな」


「夜は、あまり出歩かないとか?夜は帰る所があったりするのかなぁ?」


 カスミがおもむろにヴェイカントたちは夜になると人と同様に一時的に家とか施設とかに帰ったりするんだろうか?と呟いていくが、ある程度の時間になったら帰るって……なんか、滑稽だな。


「まっさか~……って思いたいけれど、その辺のところはどうなんだよ?夜は研究所に戻る習性とかってあったりすんの?」


 樹もおかしそうに笑っていたものの、実際にはそんなことは可能なのかどうか?と渚さんにたずねていった。


「そんなことは今のところ聞いたことが無いけれど……遠隔操作が可能になれば、ある程度の時間が経ったら研究所とかに戻るのも不可能ではないかもしれないわね」


 ヴェイカントたちの操作か……つか、そんなことされたら数でまさっているヤツらの方が有利じゃね?

 俺らがどんなに力を付けたとしてもどんどんヴェイカントを量産されたら倒す手が足りなくなってくる。


「……AI技術に、遠隔操作かよ……」


「なんか、何でも有りな感じになってきてねえ?大丈夫か~?擦れ違う通行人は本当に人間か!?実はヴェイカントの成り済ましなんじゃねえか!?……なーんて、な」


 ちょっと樹が、コメディアン風に……つか、わざとらしくて全然笑えないけれど、それでも人間とヴェイカントの違いが見分けられるか!?と言い出したものだからカスミは目を丸くしていた。


「!び、びっくりしたぁ」


「樹くん。あまり笑えない冗談は言わないように」


 単なる樹の冗談……かと思っていたけれども、樹が言うこともそうそう遠い話ってわけでもないらしい。


「え、マジで?そんな時代ってやって来る!?」


「今は簡単な命令しかこなせない幼稚なAIそのものだけれど、次第に発達していけば見た目や動き方だって人間そのものになっていくことも不可能じゃないでしょう?」


 AIがもっと賢くなって、下せる命令とかも多くなって、そして今はぎこちない動きっていうのも人まんまにでもなってしまったら……いやいや、さすがに有り得ないだろ。


「……でも、別に今すぐってわけじゃないんだろう?」


 今日明日にでもヴェイカントが人間同様の動きをされたらそれこそたまったものじゃない。

 それこそ安心して過ごせる場所を探すだけでも大変になっていくだろう。

 まともに外を出歩くことすらできなくなるかもしれない。


「それはそうだけれど、ヴェイカントたちを研究している人たちは毎日のように、より強く、より人間らしいヴェイカントを求めて研究しているでしょうね」


 ヴェイカントを研究している研究員とやらがどれぐらいの人数がいるのか、それぐらいの頭脳を持っているのかってことも分かればどれぐらいの期間でヴェイカントがどんどん進化していくのかも予想が立つかもしれないが、あいにくと裏社会の人間の数までは渚さんでも分からないだろう。


「ふぅん?まあ、そこは研究者どもの頭脳が早いか、ヴェイカントそのものを無くす方が先か……って感じか?今日はどうするよ?」


「……つか、昨日具合悪くしてたヤツに言われたくねえんだけれど」


 樹が今日の予定を聞き出したものだから、ついつい呆れてしまった。

 お前、昨日渋谷に出掛けたばかりで具合悪くしていたっていうのに、出掛けることに躊躇いとか感じないんだろうか。


「そうね。帰って来てからはだいぶ良くなったみたいだけれど昨日の今日であちこち歩き回るのは危ないんじゃないかしら?」


 渚さんも俺と同意見のようで、今日ぐらいは大人しくして過ごしていた方が良いと言う。


「って言われてもなあ……今は、ホント何とも無いんだけれど?」


 本人は平気平気、と言っているし、一応見た目的には何の問題も無さそうだが、それでも急に具合を悪くしたのは樹なのだから絶対に何も起こらないっていう保証みたいなモノは無さそうだ。


「……森さんからは?何か連絡入ってたりしないのか?」


 そう言えば昨日、森さんと連絡先を交換していたんだった。

 さすがにこっちから何か連絡する必要は今のところは無いものの、昨日別れてからも渋谷を散策する~!とかって言ってなかったか?その成果みたいなモノは無いんだろうか。……単に、連絡することを忘れているっていう可能性もあるだろうけれど。


「今のところ無いわね」


「手詰まり、ってヤツ~?」


 今は、壬生さんからも特に他の地区やら新宿内においても何かがあった……とかって知らせも入っていないから昨日とさほど状況は変わっていないとみる。


「ちょ、樹くん!」


「……実際、そんなとこだろ」


 こういうとき、何かがあるとそこから追究していけるモンなんだが……。

 別に何か起きて欲しいわけじゃない。平和が一番だ……けれど、こうなってくると何か異変でも何か起こらないものかとついつい考えてしまうのは非日常に染まってきたからだろうか。


「そう言えば今更になってしまうのだけれどみんなが拾ってきたフラグメントって何処で拾ったものだったの?」


 すげー今更だな、と樹は苦笑いしているが、あれ、そう言えば何処で見かけたっけか?と記憶を探っているうちに俺が口を開いた。


「……学校の近く、だな」


「どっちかって言うと校舎の近くじゃね?」


 いや、と俺の言葉に言い直すように『校舎』と言う。


「校舎?」


 フラグメントはそもそもヴェイカントを倒さないと手に入らないモノだ。

 つまり、ヤツらは学校の敷地内にいたってことか!?

 でも、そうすると……一体、誰が倒した?


「なぜフラグメントだけがそこにあったのか、も不思議だけれど……ヴェイカントの残骸は見かけなかったのよね?」


「……無かったはずだ」


 いくらヴェイカントでも現実世界では動かない機械として、その場に残るはず。

 誰かが片付けた後……だったんだろうか。


「学校、大丈夫なのかな……」


「つか、研究所と学校は位置的に正反対だったんだよな?……なんで、学校にいんだよ……」


 事件のあった研究所は同じ新宿区内だが、位置的には近くでもないし、方角的に場所が違う。

 それなのに、学校にヴェイカントがいたんだろうか……。


「……学生のキミたちには酷なようだけれど、しばらく学校には行かない方が良いかもしれないわね」


 それはたぶん、この場にいる誰もがそう考えていたことだろうと思ったけれど、カスミとしては学校にいるみんなのことが気になって不安がっているようだった。さて、学校はどうするか……。

 不意に思い出されたフラグメントを回収した場所。

 そこは学校……つか、校舎の近くだった。フラグメントはヴェイカントを倒すとたまに落とすとされているアイテムのようなモノ……つまり、学校の敷地内にヴェイカントがいたってことだ……。


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