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26 白衣の森、参上!

 このまま行けばセンター街に入る……といったところで、アクセ装置から機械音声が届いた。

 どうやら遠目からでは分からなかったものの、SC現象が起こり、誰かが戦っているらしい。

 SC現象に引きずり込まれたと思ったら、少し前の方で戦っている白衣姿の女性がいた。


「……女?」


「ありゃ、どう見ても女だろ。つか一人か?」


 そこそこにヒールのある靴。

 そして少しダボついた白衣を着て翻しながらアクセ装置を操作して身近なところにいるヴェイカントたちを地面から何かが這い出してきて瞬殺している……ように見えた。

 髪の毛は長いのか、側頭部辺りで二つに結び(ツインテールっつったか?)首元にはヘッドフォンだろうか、それを付けて、なんともリズム良くヴェイカントと戦っているようだった。


「……まさか、もりさん?」


 白衣を着ているから、渚さんの同僚か……もしくは、単なる医療関係者か……と悩んでしまっていたが、渚さんが名を呼んだことで納得した。

 一応、同僚にあたるらしい。


「!あー、その声はナギっち!?ちょうど良いや!ナギっちたちも装置持ってんでしょ?手伝ってよ~。コイツら、しつこくって~」


 ところが何よりも驚いたのは、その白衣女性が口にした渚さんの呼び方だった。

 それに顔をコッチに向けて来たからよく分かる。

 この人……若くね!?

 つか、下手したら俺たちぐらいとそう年齢は変わらないんじゃ……?

 白衣を着ているから背中から見ていくと大人の一人かなと思ってしまうが、正面からその顔を見ると若いっていうのがよく分かる。

 服装だって白衣を脱いでしまえば流行にそこそこノっている感じでミニスカートと、丈が短めのトップスを着用していた。純粋に細身の体に似合っている服装だと思う。


「「ナギっち!?」」


 ついつい樹と一緒になって呼び方を真似して渚さんを見てみると当の渚さんは薄っすらと顔を赤くしながら咳払いをしていた。


「!ごほん。……取り敢えず、敵じゃないわ。みんな、彼女をサポートするわよ。大丈夫、相手はヴェイカントだけだから落ち着いて一体一体倒していけば勝てるわ」


「っと、俺は一応、初めてみるんだけれど?つか、戦い方って自由なわけ?」


 っと、そうだったそうだった。

 樹は、コッチの世界でヴェイカントを見るのも初めてだったか。

 戦い方……いろいろ言葉で説明してやるよりも、樹にはこう言った方が早いだろう。


「……あー、格ゲーを思い出せ。格ゲーを」


 樹だって俺に付き合って格ゲーをすることがあるから要領としては頭では無く、感覚で分かるはずだ。

 格ゲーではキャラクターを手元で操作して戦わせていくが、それを自分に当てはめて考えれば良いだけだ。


「!ほぉ~ん。なるなる!」


 案の定、俺からの説明に納得した様子で視線の先にいるヴェイカントに意識を集中させていく。


「なんて説明の仕方なのかしら、まったく」


 渚さんからすれば俺の説明の仕方というものは、研究員みたいな人からすると信じられない言い方だったのかもしれないが、俺たちはつい最近まで学生生活を送っていたのだからその中で経験しているモノで説明された方が分かりやすいってこともまだまだある。


「あはは!何だか賑やかそうなメンツに囲まれているんだねぇ!でも、良かった良かった!ナギっちたちに会えて」


 俺と樹がヴェイカントたちに立ち向かっていこうとすると、白衣の女性……森さんは、一歩また一歩と下がって来てしまって、とうとう渚さんのいる位置まで後退りしてしまった。

 あれ、怪我でもしたんだろうか?


「……どういうこと?」


「ん?いやいや、独り言~!よぉーっし、若者二人組!ここは任せたぞ~!」


 いや、若者って……たぶん、アンタとそう歳は変わらないはずだけれど……。


「って、アンタは戦わないのかよ!?」


 思わず樹からのツッコミが入るものの、森さんはギブギブ!と言わんばかりに両手を上に上げてしまった。

 もう、戦う余裕が無い……とかだろうか?


「いやいや、みんなの戦い方を知らないも~ん。下手に手を出して、巻き添え食らったら大変でしょぉ~?だったら連携が取れてるナギっちたちに任せた方が良いかな~ってね」


 なんだ。

 そういう意味か。

 単に、知らない者同士でいきなり息を合わせて戦うっていうのも無理がある。

 だったら、ここは数が多い俺たちに任せるといった形で、森さんは後方から様子を伺うらしい。


「……ま、正論かもな」


「取り敢えずフラグメントも吸収させたし、どうなるかやってみようじゃねえか!」


 パンパンと手を叩きながら気合いを入れているらしいが、このぐらいまで来たなら樹の技なら通用するんじゃないだろうか?


「……あ。樹、ほら、前前。ちゃんと見えてるか?」


 俺が慌てて中距離でもヴェイカントに届くように、火の球のようなモノを生み出すと近場にいたヴェイカントに向けて投げ放った。


「だぁーっ!!分かってるっつの!」


 俺の戦い方に一瞬、目を丸くしながらも続けて樹が水鉄砲の如く、次から次へと線状に水を生み出してヴェイカントたちに浴びせていけば取り敢えず一体はSC現象の空間のなかからいなくなってしまった。

 なるほど、ここにいるヴェイカントのレベルもだいたいこんなモンだろうか……。

 だいたいこっちの戦力を2,3発ぐらい食らわせてやれば倒せるモンだと思う。


「!ほぇ~……なーんか、若そうだけれど彼らって研究員?」


 背後からびっくり&感心するように森さんの声が聞こえてくるが、あいにくとゆっくりお喋りをしている余裕はこっちには無い。

 取り敢えずいるだけのヴェイカントを倒さないとこのSC現象内から出ることは難しいのだから全滅させないと。


「二人は、学生よ」


 渚さんが俺と樹が現役の高校生、ということを説明していけば、こりゃまたビックリ!と言わんばかりに目を丸くしている森さんがいた。


「学生!?それにしては凄い戦えてるじゃ~ん!いいぞ~、やれやれ~!」


 しかも、森さんは自分で戦うつもりは今のところは無いらしく、俺と樹にガンガンと応援を入れてくれている。

 いや、応援してくれる余裕があるなら加勢に加わってほしいところなんだけれど……。

 渚さんも後方からの支援の方が向いているらしく俺や樹のように前線まで出て戦う素振りはみせない。

 もしくは俺と樹だけで戦えるかどうか判断されているような気が……しないでもない。


「今は戦えてはいるけれど、これから先も通用するか分からないわね……」


「え、そぉ!?あの二人なら、結構イイところまでイけると思うんだよねぇ~」


 渚さんは、これから先のことを考えると難しい顔をしているが、それに対して森さんは明るい表情で『良いじゃん、良いじゃん!二人とも!』と声を上げて楽しんでいる。


 なんか、心無しかフラグメントを吸収してから炎の威力が上がった……か?

 さっき生み出した火の球も、だいぶ威力があったようだったし、樹の水鉄砲の威力も初めて見たときよりも威力が強まっているような気がする。


 なんだかんだで時折、渚さんの後方から生み出せる光の線のようなモノでヴェイカントを怯ませていけば俺と樹で火と水の攻撃を食らわせていけばその場にいたヴェイカントたちを全てぶっ倒すことが出来てしまっていたようだ。

 元の空間に戻ったとき、森さんは一人ニマニマと口元を緩めて笑っていたけれど、なんだかその笑い方……あんまり嬉しくない。


 元の世界に戻ったってことは近場にはヴェイカントたちも見当たらないってことだ。

 そして、SC現象から抜け出してくる前に、渚さんが道に落ちていた欠片を手にしていた……たぶん、フラグメントだったんだろう。


「!みんな、お疲れ……さま?」


 どうやら近場には一般人もいたようで、突然ワケの分からない車酔いのような感覚に目をぱちくり、道端にしゃがみ込んでいる人の姿も見られたらどうやらそこまで重症っぽい感じの人はいなさそうなので下手に声を掛けることなくスルーしていた。

 意外と近くにカスミはいたようで、労いの言葉を掛けてきてくれるが同じく現れた森さんの姿に、どう声を掛けていいか迷っているのかもしれない。

 森さんがいたっていうことはカスミは分かってはいるようだが、見た目は同い年ぐらいの白衣を着た女性。もしかして、話言葉とか口調に戸惑っているのか?


「はいはーい、お疲れチャン!ナギっちたちもお疲れチャーン!」


 ハイタッチを渚さんと行い、そしてカスミにも。

 そして樹に、俺に……とハイタッチをおこなっていけば満足じゃ!とばかりに腰に手を当てて胸を張る森さん。……イマイチ、キャラクターが分からん。

 白衣の森さん、登場!ツインテールにヘッドフォンだぜ!しかも、流行にノった服装!ってことは、もしや未成年なのか!?(苦笑)


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