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25 渋谷へ

 渋谷に向かう前に、ここに置いておいても意味は無いとのことで俺と樹で残りのフラグメントたちの情報をアクセ装置に読み込ませていった。

 これで、装置が強くなったらしいけれど……特に、何か変わったところは、無いかな。

 壬生事務所から出た俺たちは、真っすぐに新宿駅に向かった。

 途中、あの怪しいヴェイカントたちがうろうろしているのを見かけたから、なるべく必要以上なまでに近付かないようにして……そして、駅に入ってしまえば、ヴェイカントらしき姿が見られなかったので安心して山手線に乗って渋谷に移動していった。

 山手線に乗ってしまえば渋谷まで、数分だ。

 そして、いつも多くの人たちが賑わう交差点の前(近くにはハチ公が存在していた)に出ると、途端に樹が愚痴をこぼしはじめた。


「渋谷も人・人・人だらけだよなあ……」


 樹はそう言うが、たぶん平日の昼間はこんなモンだ。

 もっと人でごった返すのは夕方とか夜の時間帯。

 そんななか、スクランブル交差点を歩くのは俺も苦手だったりしている。


「ま、まあ待ち合わせ場所に使われることも多いもんね」


 カスミも人の多さに苦笑いしているのだが、人の多さには不慣れなようだ。

 たぶん、ハチ公とかデカイ交差点があるからだろう。

 ただでさえ人が多い東京。

 なら、少しでも待ち合わせがしやすいとすれば目立つモノがある場所になる。

 渋谷だったら、ハチ公ってところだろうか。


「だけれど、平日の昼間だぜ?それにしたって人多すぎだろー」


 うへぇー……っと、顔を引きつらせながら樹は、げんなりと肩まで落としてしまっている。


「……まあ、毎日これぐらいが普通だからな。夜とか朝なんかはもっと酷いから」


「そう言えば湊くんは渋谷にマンションがあるんだったかしら?寄る?」


 渚さんが気を遣ってくれて、そう声を掛けてくれるけれど、別に家に用があるわけではない。

 何もしないまま、ただ立ち寄りたいってわけでもないから特に向かう必要も無いだろう。


「……いや、別に用は無いし。いちいち行かなくても良い」


「もったいねえなあ。そこそこ良いマンションじゃなかったっけ?」


 もったいない、とか言うけれど、樹の住んでいるところだってそこそこ良い場所だった気がする。

 ただ、まあ俺とは違い家族と一緒に住んでいるってところに多少の息苦しさのようなものを感じているのかもしれない。


「……別に。不良の俺を一人にさせて親はのんびりしたいだけじゃね?」


 規則正しい生活とは無縁のような俺の生活態度に、親の方が音を上げた。

 そして学校に通うにもあまり問題が無いということで渋谷にあるマンションの一室を親が用意してくれた。

 もちろん俺そのものに愛想を尽かしてしまったというわけではなく、最低限の生活費というものは送ってくれているし、何かあったときには連絡をするようにしているから今のところ特に問題は無いだろう。


「あら、その歳で一人暮らしって可能だったかしら……?」


「……一応、名目上は親の名を借りてる。同居してるってことにはなってるから」


 渚さんがちょっと大人っぽい意見で突っ込んでくるものの、当然俺が住み始めたときには俺ぐらいの歳が一人でマンションの物件に手続きが出来ないものだからあくまでも実家とは別に、気が向いたときに足を運ぶ別荘的な気分で両親が手続きしてくれた覚えがある。


「寂しいと思ったことはないの?」


 そう言えばカスミのところだって、叔父さん叔母さんたちは旅行に行っているとかだったか。

 それにカスミは両親がいない。そんなカスミに寂しいとかって言われるのはちょっとなあ……。


「それ、カスミが言うかあ?」


「……別に。帰ったら寝るぐらいしかしてないからな」


 帰ったら寝る、そしてささっとシャワーを浴びて、着替えて、それで学校へ向かう。

 それらの繰り返しをしているだけ。

 特にモノを持ち込んでいるとかってことも今は無いからモノで散らかっているということもないだろう。


「あなたたちは、ホント……学生らしくない学生生活を過ごしているみたいねぇ?」


 渚さんは困ったように、そして呆れたような顔をして言うが、そう言う渚さんはどんな学生生活を過ごしていたんだろう?

 まさか勉強に忙しい毎日を過ごしていた、とか言うんじゃ……?


「んで、取り敢えず交差点を渡っちまったけれど?こっから先、何処に向かうんだ?」


 なんとなく話しながら足を進めていくと渋谷のスクランブル交差点を渡ってしまった。

 ここからはいくつかの道に分かれていて、それぞれの目的に合った道を選んでいくものだが、俺たちには今のところ目的に考えているモノが無い。

 そもそも、ざっと見て回るという考えで渋谷に来たからだ。


「……取り敢えず、このまま行けばセンター街だな。人は多いけれど、いろいろ店はある」


「くれぐれもみんな気を付けるのよ?それらしい姿を見かけたら距離を取って」


 渚さんが言う『それらしい』っていうのは、ヴェイカントたちのことを差しているんだろう。

 まあ、わざわざ言わなくても、それらしいって感じで言ってもらえればこっちとしても察することが出来ている。


「あー……アイツらか。……今んところは、それらしいヤツらは、いなさそうじゃね?」


 なんとなく視線を彷徨わせてみるが樹が言うように、それらしき姿は今のところ見られない。

 あれだけ特徴のある姿でうろうろとしていれば、嫌でも目に入るだろうしな。


「渋谷に研究所ってあったりするんですか?」


 ふとカスミが疑問を思ったことを渚さんにたずねていく。


「中小規模のモノなら、あるはずよ。とは言っても、フラグメントの研究っぽいけれどね」


 渚さんがこう、はっきりとしない言い方をしているってことは名だけは知ってはいても、実際に渋谷にある研究所についてはあまり詳しくは知らないってところだろうか。


「……フラグメントを研究することって何か意味があるのか?」


 学校の近くで手に入れたフラグメントたちは情報を読み込ませれば、情報も何も無くなってしまったただの欠片になってしまったので普通にゴミとして処理されていった。

 だが、フラグメントがアクセ装置を強める効果があるってことは分かったが、フラグメントだけを研究することに意味はあるんだろうか?


「もちろん。いろいろな情報を読み解くことで様々なデータが手に入る。そうすれば装置の効率もアップさせられる。まあ、フラグメントだけが存在していても何か役に立てるってことは少ないのだけれどね」


「つか、センター街ってこんな静かだったか?」


 不意に樹がぼそっと呟く。

 が、静かっていうほど静かってわけでもなさそうだけれどなあ……。


「……平日の昼間ならこんなモンだろ」


 夕方とか夜になると夜だけ営業をしているという店も開いていくし、足を運ぶ人たちも多いからどうしたって昼間より夜の方が人波は多い。

 だが、どうにも樹的には腑に落ちない様子だ。


「いやいや、なんつーか人が少ないっつーか……なんだろ、違和感あるんだよなあ」


「違和感?もうちょっと具体的に説明出来ない?」


 樹だけが感じる『違和感』が何なのか分からなくて、渚さんも詳しい違和感とやらを聞いていこうとするが、樹は上手い言葉を見つけられないのか首を傾げてしまっている。


「う~ん……店は、やってるのに人が少ないっつーか……」


 人?

 人なら普通に通っているじゃないか。

 俺たちと同じ方向へ進んでいるヤツらもいるし、逆方向へと進んでいく人波もある。


「?」


 樹の気のせいじゃ……と思っていたときに、アクセ装置の方が早くに反応を示した。


『SC現象を探知しました。『物質』理論装置が自動的に起動します』


 その瞬間。

 各々のアクセ装置から機械音声が流れ始めた。


「……なに!?」


 未だに耳にしていくものの慣れない機械音声。

 渚さんも樹も一気に警戒モードに入ったらしく、表情を真剣なモノへと変えていく。


「まさか誰かが戦ってたってことかよ!?」


 樹の言っていた違和感ってこのことか!

 既にSC現象とやらが起動されていて、ヴェイカントやらと戦闘をおこなっている人間らがいるという……。

 なんつーか樹に言われるまで分からなかったけれど、コイツの勘のようなモノって意外と役に立つな。


「取り敢えず、みんな様子見よ。誰が戦っているか分からないのだからなるべく交戦は控えること」


 こうなったら誰が何と戦っているのか、見てやる。

 もちろん仲間としてやっていけそうな人間だったのなら声を掛けてみても良いかもしれない。

 もしも、ヤバそうなヤツだったら?……あんまり、そっちの方では考えたくはねえなあ……。そうしたら、ぶっ倒すことになるんだろうけれど。

 一体、誰が、何と戦っているんでしょうか!?そして仲間となるのか、もしくは敵になるのか!?


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