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17 強くなる方法

 改まってどうしたんだろう?

 まさか、俺たちに頼みたいことでもあるんだろうか。

「ヴェイカントたちの数が増えているようです。なので、私たちも当然対処を進めていますが、あまりドンパチするのは私は好きではないので……」


 口を開いた壬生さんは数が増えたヴェイカントたちに困っているようだ。

 さすがに昨日みたいに銃声を何度も発砲したりするようなことにでもなれば警察が乗り込んでくるだろう。そうさせないために……。


「……俺たちに、倒せと?」


「端的に言えばそうなります」


「いやいや、俺ら普通の学生……っていうのはもう通じないってか」


 渚さんと関わってから、もう俺たちは普通の学生じゃなくなった。

 裏のことも見たり、聞いたりして日常が非日常に変わってしまった。

 だから今更、『普通の学生だから無理』なんて言い訳が通用するはずもないだろう。


「それに、ちょっとした話を仕入れましてね。どうやら渋谷付近にてヴェイカントが倒された形跡があるようです。それらは私の部下が発砲したモノではなく、電源が落ちた機械のように動かなくなってしまったモノのようですから……もしかしたら、その人を新たな仲間に加えてみるのも良いのではないでしょうか?」


 さすが情報屋、といったところだろうか。

 渋谷はそんなに離れていないとは言え、そういう情報がまわってくるというのは壬生さんやその部下にそれだけ情報の根回しが上手いヤツがいるってことか。

 それにしても、銃とかで壊されたワケじゃなくて単に動かなくなってしまった、か……。

 それを聞くと俺たちのようにアクセ装置を手にしている人たちによる戦闘ってことで、良いんだろうか……。


「……渋谷、か」


 最初は、渋谷に向かうつもりでいた。

 だが、こうして渋谷に行くこじつけみたいなモノが生まれるなんて思いもしなかったものだからちょっとだけビックリしてしまった。


「渋谷にも壬生さんのように情報屋として活動している方はいるのかしら?」


 俺も渋谷に住んで長いけれど、情報屋らしきモノが存在するなんて聞いたことがない。

 まあ、新宿にも今まで来ていたけれど壬生さんっていう情報屋の存在は知ったばかりだけれど。


「どうでしょう。ウチは、新宿だけで活動をしているので他の方面は分かりません」


 う~ん……ヴェイカントを倒しているってことは、敵……ってことは無いだろうけれど、果たして味方として一緒に戦ってくれるだろうか。

 そこが心配なんだよなあ……。


「ヴェイカントと戦うことで俺たちにメリットは?」


「あ。言っていなかったけれど倒したヴェイカントからちょっとしたアイテムを拾うことがあるわ。それを活用することは出来るわよ」


「……アイテム?」


 昨日も今日もヴェイカントと戦闘をしてみたけれど何か拾っていただろうか?

 いや、特にそれらしいモノみたいなものは無いはず……。


「毎度毎度、倒して手に入るってワケでも無いのが残念なのだけれど運が良いと、良いモノが手に入るわ」


 なるほど。

 目の前にヴェイカントがいるから倒す!それで毎回、その良いモノっていうものが手に入るってワケではないらしい。


「それって、なんだなんだ?俺たちが強くなる、とでもいうのか?」


「……それ、ゲームだけの世界だろ」


 ゲーム感覚で言うと一気にレベルを上げるアイテムのようなモノを樹は考えたのかもしれないが、それはあくまでもゲームの中での話だ。


「あら。樹くんの言うこと、別に間違ってはいないわよ」


 しかし渚さんは樹の言うことに苦笑いしつつ小さく頷いている。

 え、マジか……そんなモノがあるならちょこちょことした戦闘も面倒くさく思わなくなるのかもしれない。


「え、マジかよ!」


「正確には、私たちが強くなるっていうより……装置に情報を読み込ませることで、より強い力を発揮させることが出来るようになるって意味でね」


「……情報?」


「湊くんも樹くんも装置を使う前に装置に存在情報を登録という形で読み込ませていたでしょう?それと同じようなことをするの」


 確か、このデカイ石に触れただけで登録が勝手にはじまって、あっという間に終わったんだった。

 でも、コレに、また読み込ませる?登録出来る人間って一人だけだったよな……。


「装置を取り扱う人間の情報は一人分しか登録することは出来ないのだけれど、他の情報ならいくらでも読み込ませることは出来るの。それは、その良いモノが手に入ったときにでも試してみることにしましょうか」


 たぶん、話でいくら説明しても俺たちには理解が難しいと判断したらしい。

 カスミも樹もポカーンとしているから、ほぼ渚さんの言っていることは理解出来ていなかったと思う。

 まあ、ぶっちゃけ俺もどうやって情報を読み込んで力になっていくのか、分かっていないし。


「湊ー、お前、体は?何とも無いのか?」


「……今んとこ、平気だな」


「んじゃ、渋谷に行ってみるかぁ!……あ、そう言えばカスミ。学校どうする?」


「……い、行ってみたい気持ちはあるんだけれど……」


「……行くのも行かないのも自由だろ、こうなったら。それに、何かしたいと考えたときには後悔しない方を選んだ方が良い」


 俺は、当たり前なことを言っただけだったつもりだったんだが、壬生さんにも渚さんにも感心されたような顔を向けられてしまった。


「後悔しない選択……。だったら、少しだけで良いから……学校、行きたい、かな……」


「渚さんの判断は?」


「……ヴェイカントとの戦闘はしっかり戦えるって湊くんが証明してくれたものね……でも、本当に短時間だけよ?さすがに私も一緒に行ったら怪しまれるでしょうから私はここで待機しているわ」


 渚さんは両手を掲げて『やれやれ』と溜め息を吐いた。

 でも、約束していたように俺の戦い方をしっかりと判断してくれていたようで、今回ばかりは渚さんが妥協してくれるらしい。


「……制服、着替えるか?」


 平日に私服姿のままで学校に行けるモンだろうか?

 でも、ちょっと学校を覗くだけのために制服に着替えるっていうのも面倒だな……。


「いやいや、面倒くさいって!このまま行こうぜ!」


 樹も面倒くさがったらしく、カスミを促せば『んじゃ、ちょっくら行ってきまーっす!』と事務所を後にした。

 壬生さんの話だと新宿のあちこちにヴェイカントの姿はあるらしい。

 もしかして、昨日の今日で戦闘があったせいだろうか。

 でも、ヴェイカントぐらいだったら負ける気はしない。


「さーて……ようやく、大人たちから解放されたなぁ~」


 ったく、コイツは……。

 早く早く、と促していたから何かあるのかと思っていたけれど、要は大人たちから離れたかったらしい。


「え、渚さんたち苦手?」


「苦手ってワケでもないけれどさー……話をするにしても、重苦しい話ばっかだろ?」


「……それに足を突っ込んだのは俺たちなんだから仕方ないだろ」


「いやいや、俺たちは学生なんだから!少しはハメ外したいときだってあるんだよ。そう思わねえ?」


 不良学生の樹にそう言われてもな……。

 まあ、たまには大人のいない空気を味わうっていうのも悪くは無いかもしれない。


「まあ、ちゃちゃっと学校行って、ささっと帰れば問題ないっしょ」


「……途中、戦闘にならなきゃ良いけれどな」


「俺と湊がいるんだぜ?ヴェイカントだけなら問題ないっしょ」


 それには同意。

 だが、万が一……霧生のような……いや、もっと腕が立つ人間が現れたりしたらどうだろうか……。


「大丈夫大丈夫!二人ともそんな暗い顔してると、ホントに何かあったらどうするんだよ?何も無いって!心配しすぎ!」


「……す、すぐに事務所に帰ろう……ね」


「……それが、良いかもな」


 樹はポジティブだが、万が一ってときを考えて備えておいた方が良いだろう。

 特に俺たちは研究員たちとは面識が無いんだから、パッと顔を合わせることになったとしても分からない、そして味方なのか敵なのかも判断が出来ない。となれば、この場に渚さんがいないのは幸となるか、それとも不幸となるか……。


「……あれ、なんか静かじゃね?学校っていつもこんなんだったか?」


「……今、授業がはじまった時間だろ。だったら出歩いてるヤツなんていないだろ」


「学校は、無事……みたいで良かった……」

 ゲーム感覚のように、レベルアップはしないのか?レベルというか、情報をどんどん読み込ませて強い力を引き出すことができるようになるとされています。それは、後になってからのお楽しみにしておきましょう!


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