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15 初ヴェイカント戦

 アクセ装置(樹命名)から機械音声のようなものが流れると途端に周囲にいた人たちの姿は見えなくなった。

 SC現象の中に入った合図だ。

 これから、ヴェイカントとやらと戦闘をはじめていく!

「……コレがヴェイカント?」


 SC現象の中で初めてヴェイカントを目にしていくと、それはまさに機械生物。人間らしさというものは完全に無くなってしまっていて、簡単に動くことが出来る子ども向けのオモチャのようなものをイメージさせる。だが、同じ異空間の中に入った味方以外は攻撃するように、との命令が下されているらしく俺と渚さんに向かって移動を開始してきた。


「ヴェイカントの本当の姿、とも言えば良いかしら。元は無機物。簡単な命令をこなすだけの機械よ。そこに個人的な感情とか意思は無いの。コイツらは一定の攻撃を加えていけば簡単に壊すことが出来るわ」


 なるほど。

 つまり、現実世界の中で人間のような見た目をしている姿の方が偽物ってワケか。まあ、相手が機械だってことが分かるだけで戦いやすい気がする。前回は霧生が同じ人間だったから手加減っていうか、死ぬほどの威力を込めた力を出し切ることが出来なかった感じがするが、今回は違う。ヴェイカントには俺たちのような命が存在しない。つまり、存分にぶっ壊すことが出来るってわけだ。

 だが、攻撃しまくれば良いってワケでもない。こっちにも一応制限時間というか……気力にも限界っていうものがあるらしいからあまり長い時間を掛けることなく一体一体をぶっ壊していく必要がある。

 一応、今のところ確認出来ているヴェイカントは三体だ。が、そのどれもが少しずつ変わった形をしている。機械生物ってことに変わりは無いんだが、二足歩行で歩いているモノもいれば、まるで動物のように四足歩行で移動しているモノもあったりしていて、本当に現実世界では人間らしく振る舞うことが出来ていたのかどうか怪しくなってしまうほどだ。


「……コッチの気力とやらが尽きる前に倒せってことだな」


 だいたい一体につき、一発か二発ぐらいの攻撃を与えていくのが妥当だろうか。もちろんミスすればその分、攻撃回数は多くなってしまうもののざっと考えた時点では、それほどヴェイカントたちのレベルそのものは高いようには見えない気がする。これは直感だけれど……。


「危なくなったらフォローするから、まずは一番近い所にいるヴェイカントと戦ってみてくれる?それで湊くんがどれぐらい今の時点で戦えるのか判断してみることにするわね」


「!……わかった」


 確か、俺は炎系の攻撃が出来るんだったよな。

 霧生と戦ったときを思い出せ……あの時は、めちゃくちゃ必死だったってこともあったけれどきちんと攻撃が相手に通じただろう……大丈夫だ、俺なら……倒せる!


「……それっ!!」


 やはり四足歩行のヴェイカントたちの方が移動が速いのか、一番先に飛び出して来たところを狙い、自分のアクセ装置に意識を集中していくと少々距離はあったが、炎の球体のようなモノを生み出せば四足歩行でこちらに向かってくるヴェイカントに向かって飛ばした。いくつかの炎の球体が生まれ、その全てがヴェイカントたちに集中砲火のごとく当たったらしい。

 まともに動けなくなった四足歩行のヴェイカントに、終わりだ……とばかりに、一気に距離を詰めた俺は再び装置に意識を集中していくと、大きな噴火のようなモノを生み出して炎の流れにヴェイカントを巻き込む形で始末を付けることが出来た。

 先に四足歩行のヴェイカントの体力か、それとも気力だかが尽きてしまったらしくSC現象の中からフッと姿を消してしまった。消滅?現実世界に逃れたのか、それとも現実世界では動かないマネキンのようになってしまったんだろうか……。


「なかなか、やるわね」


「……コレぐらい、まだまだだ」


 遠くも無く、近くも無い一定の距離にいる渚さんから一応お褒めの言葉を受けるが、素直に受け取らずにまだまだだ、と自分を鼓舞する方に意識を集中させた。まだ一体を倒しただけだからだ。

 残り、二体。

 二体とも二足歩行で、見た目だけなら人間とそれほど変わらないのかもしれない。が、機械生物だってことは人間とは大きな違いがある。先ほどの四足歩行のヴェイカントは回避だとか距離を取る、といった行動は見られなかった。とにかく、敵が目の前にいれば突っ込んでいくことしか考えられていないのかもしれない。と、すると……残ったコイツらの対処も同じで……良いんだろうか。


 と考えていると、まだそこそこに距離があるというのにヴェイカントたちから攻撃が放たれた。それは、まるで樹のアクセ装置が発する攻撃に似たものがあり水鉄砲のようなモノが飛ばされてきた。もちろんまともに食らうわけにもいかなかったから避ける。避けられる距離にいたし、真っすぐに飛んでくるモノを避けることは難てことは無い。

 そこへ、カウンターとして俺が突っ込んで距離を縮めていったところで炎柱のようなものを噴き上げさせると簡単に二足歩行のヴェイカントの一体を仕留めることが出来た。先ほど倒したヴェイカントと同じようにSC現象の中から消滅してしまったらしい。

 残るは、一体だ。

 コイツも二足歩行をしているヴェイカントだ。動きはのろいものの、先ほどのヤツのように距離が離れていても攻撃をしてくるかもしれない。一気にこちらから距離を詰めるのは危ないだろうか……相手の出方を伺っていると何処からともなく現れた風の刃のようなモノを食らってしまって思わず片膝を付いてしまう。が、これぐらいで終わるような俺じゃない。すぐに体勢を整えると多少の距離が合っても攻撃が通じる、炎の球体を生み出してヴェイカントに当てていく。そして、体勢が崩れたところを一気に距離を詰めていけば『これで最後だ!』と言わんばかりに、大きな炎を上げて焼き尽くすようにヴェイカントをSC現象内から消滅させることが出来た。


 さて、渚さんからのフォローは無いままに、一応ヴェイカントを倒すことは出来たものの判定はどうだろう?もしかしたら今、いたヴェイカントたちは弱かったのかもしれない。探知能力が長けているだけで、戦闘能力はあまり高くなかったのかもしれない。それでも初めてヴェイカントとまともにやり合うことが出来た。

 渚さんの様子を伺っていると、途端に拍手をしてくれる渚さん。その間に、SC現象も無くなり、現実世界へと戻ってきた俺と渚さん。渚さんはそれはそれは驚いた顔をして、俺の戦いに感動していたようだった。


「お見事だったわね!まさか、こんなに戦えるなんて思わなかったわ。……体の方は?どうかしら?」


「……今のところは、特には何とも無い」


「いろいろな攻撃を、自分で考えたのよね?とても装置を持ちはじめた人の戦い方じゃなかったわ」


「……いや、実際に上手くいったのは良かったけれど、何となく出来るんじゃないかと思っていろいろ試してみた」


「基本的には近距離から強い攻撃をする炎属性なのに、中距離からの攻撃も上手く使いこなして相手に隙を作り、一気に勝負を決めるのは見事としか言えなかったわよ。武術とか習っていたりしたの?」


「……まさか。こういうのってゲームぐらいでしかやったことないよ」


 ゲーム感覚。

 いろいろな炎の使い方も、ゲームの知識があったゆえに思いついたところが大きい。それに格ゲーもそこそこにやるから相手の出方を見極めてから攻撃をするタイミングっていうのも分かっている気がした。


「それでも三体のヴェイカントと一人で戦い抜いたんだもの。……事務所に戻って休憩した方が良いわね。今は平気かもしれないけれど、きっと知らないうちに体に疲労が溜まっているはずだもの」


「……そうだな。あ、樹は?」


 SC現象に引きずり込まれない距離を置いて、現実世界では何が起きているか樹は確認しているんだった。すると遠くから樹が戻って来たから樹も無事だったようで安心した。


「いやぁ~、本当に何も無いのな!ヴェイカントたちも急に動かなくなっちまうしよー……それには周りの人間たちもビックリしていたみたいだったがすぐに我関せずって感じで通り過ぎて行っちまったぜ?んで、湊の戦闘具合はどうだった?渚さん?」


「とても昨日今日、装置を手に取ったばかりだなんて思えなかったわよ。ヴェイカントとの戦闘ならばそれほど苦戦することにはならないかもしれないわね」


 すげーな!と笑いかけてくる樹と何も言わずに握った拳をコツンと合わせるとドヤ顔をして見せた。


「……まあ、今回は楽勝だったかな」


「マジか!俺も見てみるんだったなぁ~……」


 どうなるか分からなかったが、なんとか渚さんからも合格、をいただくことが出来たヴェイカントとの戦闘。それを安堵して聞きつつ、みんなでカスミの待つ事務所に戻るのだった。

 やったね!こういうのは格ゲー経験とかがあると、結構シミュレーションもしやすかったりするのかな?でも、それを自分の体で実践するとなると難しいところもあるかもしれないけれど湊には楽勝だったようです!パチパチ!!


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