「こうしてまた主人公は英雄から遠ざかる」
「ユカリちゃん、行こう」
聴こえなくなった音声は壁に横たわらせて私は涙を拭いて徐ろに歩き出す。
ずっとこのままなんていられない、前を向いて為すべき事を果たす。
もうこれ以上死人が増えるなんて嫌だ。
憂鬱で疲弊しても歩みを止めず暗い暗い部屋奥の闇に入って行く。
どれくらい経ったのか、私は誰かの視線を感じて横目を見るとそこにはフラクチャーさん?らしき人物が両腕を拘束されていた。
「フラクチャーさん?」
呼びかけに応えてくれない。リナちゃんはいつの間にかはぐれてしまい私は取り敢えず回りを警戒しながら拘束具を壊す。
「あっ、壊れちゃった」
片手剣で叩き斬ると同時に剣に大きな切れ目が出来てしまい今にも壊れそうだ。
「あの、フラクチャーさ・・・えっ・・・?」
薄暗いから本人かどうか確認の為に顔をよく見ると何故か見知った顔が浮かんだ。
ピンク色の長い髪、ハルカさんやユイちゃんと同じだ。
胸も大きくボロボロの服装で私は顔を覗こうとしたその時、女性自ら顔を上げた。
「ありがとう、英雄ちゃん」
悍ましいくらいの低音に身体がざわついた。瞳は一つは災いを齎す至極色と紅色の魔眼ともう一つは黒い海の中に沈んだかのようにどす黒くて回りに血の海が混じったような瞳に身体がぞっとする。
フラクチャーさん?は不安になるくらいの不適な笑みで天井に巨大な槍の闇魔法で大穴を開けた。
「英雄ちゃん」
見た目はユイちゃん、立ち振舞はハルカさん、声は知らない。
でもこれだけは分かる。
この人は確実にフラクチャーさんではない。
背後からリナちゃんの声が聴こて振り向くとリナちゃんはフラクチャーさん?を見るなり顔面蒼白となり腰を抜かした。
「だ、誰?」
リナちゃんの問いに謎の女性は不快な笑顔を見せる。
「私はワタシでわたしよ、そうでしょ・・・ユカリちゃん?」
私は味方とは思えず武器を構えようとしたが何故か武器が突然砕けた。
「さようなら、私を解放してくれて・・・相変わらず“この世界の貴女”は優しいわ」
「ま、まるで元々性格良くないみたいな言い方ですね?」
「・・・まぁね」
開けた風穴を見上げながら鳥の骨のような羽根を広げて飛び上がった。
「この星もそろそろね」
謎の女性はそう言い残して何処かへ飛んでしまった。
あまりにも一瞬の出来事で私は狐につままれた感覚で言葉を交わそうとしたその時。
「ウインク」
魔眼の方だけ開けてウインクする。
その瞬間に私達は発狂した。




