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「殺人の容疑者」その2

 私から見て左、右、下の壁が隔てられていて薄いせいで耳を澄ませば聴こえそう。それにしても監視体制が甘いような??人もポツポツだし何処かに行ってるのかな?


 取り絶えず置いといて先ずは右から聴こうかな?


 私はそっと目を閉じて耳を澄ませる。


「あの容疑者、何で捕まったんだ?」


「大量殺人、一夜にして七十人を殺したらしいわ」


「あんな可愛い子が?どう見ても優しそうな一般女の子じゃないか?」


「私も詳しく知らないけどどうやら大広場で『ユカリ』の文字になるように頭を落として股を裂いて繋ぎ合わせて作ったらしいわ」


「嘘だろ?そんな残虐な事するのか?」


「犯人自ら名前を書くのはちょっと変だけどたまにいるのよ」


「そりゃ処刑だろうな」


(大量殺人!?それに私の名前!?近未来区でそんな事が起こってたの!?)


 あまりにも衝撃的で私は左方向にて耳を澄ましてみる。


 多分食事中かな?咀嚼音が聴こえる、お腹減ってきたな・・・


「最近近未来区って物騒よね?」


「うんうん!アタシ最近見たんだけど【煉獄騎士】の一味が光星にやってきて数時間後に闇星に戻って行ったの!」


「うっわ、煉獄騎士って奇妙な自警団でしょ?皆化け物って聞くよ?」


「もしかして大量殺人と関係あったりして!?」


「うーん、ユカリさんがそんなことする人には見えないけど?だって一般人で冒険者で一番弱いって聞くし弱そう」


「無関係か・・・難しいね」


「今回の事件はシスターズでも解決できなそう」


「なんで?」


「近未来区で面倒事が多発して人員が足りないのよ」


(・・・煉獄騎士?そんなのいたんだ・・・それに事件多発か・・・う〜ん、大量殺人の件は曖昧で分からないな・・・)


 もっと手掛りが欲しい、皆はきっと私を助けてくれる、頼れる仲間達だと信じてる。


 だからそれまで情報を整理して私なりの解釈で纏めないと・・・


 最後の下方向に向かい集中して耳を澄ませる。


 ・・・んなんか変な音する、もっと集中してみる。


 ・・・肉と肉が擦れるような生々しい音、調理してるとは思えない・・・っ!??????


「ひゃあぁぁ・・・」


 女性の喘ぎ声が聴こえ、私は声を漏らしながら鉄格子まで逃げることにした。


 生々しいというか公序良俗が乱れてるというか、牢屋に来てまでスルことなのだろうか?


 私は内心ソワソワするも事件に集中するべく頭の中で考えようとしたがたまにピンク色が混じり私をこんがらがせる。


 お願いだから公の場でエッチな事はしないで欲しい。


 色んな意味で危ない牢屋に来てしまった私は何とか集中して話を纏めるのだった。

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