「永劫回帰」その3
「今日はいつもよりお疲れかな?」
学生の頃、定期テストがある度に追試になる私は何度も心が折れかけた、だけどいつもあの声が背後から聴こえて振り返るとそこにあの娘がいる。
「今回も駄目だったよ・・・」
苦笑にも似たなんとも言えない笑顔にアスカちゃんはにこやかに片腕を見せてきた。
その腕は薬物乱用にて腐食して再起不可能とまで診断されていた筈なのにアスカちゃんの腕は綺麗さっぱり柔和な白い肌に包まれて自由に動かせている。
「どう?皇女様がユカリちゃん特別接待サービスしてくれたの、もう一生動かないと覚悟してたんだけど治してくれたの!」
優秀な医者が水星にもいたもんだ、本来なら馬鹿騒ぎでもしたいのに誰も信じてくれないことにショックを受けて相槌を打つことしかできないなんて最悪だ。
異変にすぐに気付いたアスカちゃんは事情を聞いてきたので無駄だと思うけど今までの出来事を話した。
「ユカリちゃんはどうするの?」
アスカちゃんの質問に私は気の抜けた声で返した。
「どうせ誰も信じないだろうしこのまま流れに任せてもいいかなーって・・・あはは」
「でもそれだとまた大切な人を失うよ?」
「・・・」
胸を差すような言葉の矢に心臓が痛む。
「私は普通な女だからさ・・・凄い力持ってもきっと役に立てないよ、所詮は普通の人間だし」
「それは昔のユカリちゃんでしょ?今は特別な人間だよ?」
「虚勢張ってるだけならなんとでも言えるよ」
「また・・・逃げるの?」
切なくも悲しい声で喧嘩別れした時の気持ちがフラッシュバックする。
もう二度と逃げない・・・でも仕方ないじゃん、無理なものは無理、特別な人間では無い私に何が出来る?
答えが見つからない出口を地団駄した所で手で拱くだけ、私自身厄介事を引き起こす事もある。
それなら私はいっそ何もしない方が平和なのでは・・・?
「ユカリちゃん、また逃げるんだね・・・どんだけ変わりたくても本質は変わらない、そんなつまらない人間と同じなんだね」
情けない姿についにアスカちゃんは溜め息を吐いた。
すると突然私の口を両手で引っ張り伸ばしたり戻したりしてじゃれてきた。
「ひゃ、ひゃひするにょ!?」
唐突過ぎて理解が追いつかない!
ムニムニむにーと引っ張られて元に戻されて頬を撫でる。
「ユカリちゃんにはその表情似合わない、君はいつも通り何も考えずに前だけ見て私に任せればいいの、心が押し潰されてもユカリちゃんは前だけ見据えて全力で駆ければいい・・・駄目ならその時考える、何もしてないのに諦めるのはユカリちゃんらしくないよ?ユカリちゃんの唯一良い所は大事な時に必ず役に立つ“優しさ”と“勇気”なんだから」
アスカちゃんに頬を引っ張られ、頬を擦っていると今度はアスカちゃんの胸に抱き抱えられたと思ったら顎をクイっと指で持ち上げられた。
「そうじゃないと困る、私は・・・君が好きだから・・・優しくて正しい立派な恋人でいて欲しいの・・・私が死んでも迷わずユカリちゃんが正しい方向に駆ければ絶対に変えられる、そうしないと・・・」
チュっと唇に唇が優しく触れた。
胸が爆発するくらいドキドキして心臓が取れちゃうくらいドキドキが止まらない。
「今のは本命じゃないからね?もし全部嫌になったら私を“恋人”に選んで濃厚で濃密で蕩けるぐらいのキスをしよう、私が、ユカリちゃんを導いてあげる、でもその前に先ずは早く行動に移そうよ・・・私の好きなユカリちゃん?」
完全に視覚外からの一撃に私は顔を真っ赤にしてこの場から逃げたいくらいに恥ずかしくて胸がドキドキしてキュンキュンする謎の痛みに襲われる。
感じたことのない感情についアスカちゃんの手を握る。
「一緒に考えてくれる?」
羞恥心でグダグダの咄嗟の言葉にアスカちゃんは満面の笑みで笑った。
「うん♪」
いつの間にか私が説得されてしまい気持ちを切り替えて前だけ見つめることにした。




