ほんと不器用なのね
投げた手紙をセバス爺が拾ってくれた。
「お顔が赤いですよ」
「あたし宛の手紙を読まないでっ!」
もうっ、油断も隙もない。
「読まなくとも、そのお顔で察しがつきます」
ぜーたいっ、勘違いをしてるぅ!
文句を言う出鼻を、簡単にくじかれてしまった。
セバス爺がいつの間にか、差し出してきた剣。
それを手にとる。
直刀のサーベル。装飾は細やか、それでいて、色合いはツヤのない銀色で質素。特徴的なのは、持ち手の端に透明な水晶がはめ込まれているところ。
片手でも扱える、そのサーベルに見覚えがあった。
ゲームでは、クラリスの専用武器だったサーベル。
最終局面に、ランスロットが素材集めの高難度クエストをこなし、精製してから、クラリスに手渡すかもしれない武器。
そして、彼女は、それを、使いこなせまま、ゲームは終わる。
「お気に召しましたか?」
「どうして、これを……」
セバス爺たら、その顔はやめなさい。
「それは、こちらをお読みください」
彼はまた手紙を渡してきた。
飾り気のない不器用な封筒……。
こういうところがダメなのよね。
その手紙には、こう書いてあった。
クラリス・オーウェン様
あなたが、剣闘会に出場されたいという意向を耳にいたしました。
魔法杖としても使える剣を送ります。
勝てなかった際は、国へお帰りください。
ランスロット
また、なんという……。
セバス爺のニヤニヤが止まらないので、この手紙をわたす。
「読んでいいわ」
まったく、相変わらずなのね。
「なんじゃこれは、これでは決闘の申込みではないか!」
だよねー。
でも、あたしは知ってるのよ。
素材集めは、高難度クエスト。
これは、簡単に手に入るものではないの……。
世界でただ一つ、あたしのためだけに作られた武器。
彼の真意はわからない。
でも、その不器用さが、子供みたいにかわいくて、なんだか、とても愛おしい。
あたしは、剣を抱きしめた。
細かな装飾は、どれも雪の結晶を模している。
氷を象徴する剣。なのに、とてもあたたかい。
「お嬢さま、こんなので、よろしいのですか?」
「うん、うれしい!」
だから剣に名前をつける。ゲームと同じ名を、それは縁起が悪いかもしれない、だって、この剣を渡されたのは、あたしが死ぬルートだもん。
でも、それは、彼が、あたしを選んだルート。本当の意味は違うかもしれない……。
けど、それでもいい。
「この剣のことを、『六花』と呼ぶわ」
新しいお友達のガルムが、ワオーンと吠え、ほほをなめてくる。ほんと、くすぐったい。
「お嬢さまが、それで良いのなら……」
あら、セバス爺は納得がいかないのね。
「勝てばいいのよ」
この剣を使いこなしてみせる。
ランスロットは、高難度クエストをこなすほどの実力者。でも、負けない。勝ってみせるわ!




