とりあえずこんな最初に出会ってもいいのか?
よろしくお願いします。
ま、魔王?
突然の告白に頭が追いつかない。
魔王って、ダメでしょ!転生してこんな早くに出会っちゃダメだって。
その場に無気力に留まる。
ぷかぷかと浮かぶその姿に魔王は笑顔を崩さない。
「魔王だよ。驚いた?」
驚いたってもんじゃない。
けれど今納得がいった。
あの膨大なオーラ、そりゃそうだわ。魔王ぐらいじゃなきゃ納得いかんわ。
「もしかして怖い?」
再び俺を掴みながら問いかける魔王ザラ。少し心配そうな表情をする。
しかし、その美しい姿に恐怖は抱かなかった。
怖くないですよ!!
「そうか、良かった〜。なら、とりあえず移動しよっか」
どうやって移動するんですか?空を飛んだりとか?
「うーん。それもいいかもしれないけど、私はもっと早くつく手段を持っているからね。【空間移動】」
瞬間、景色が変わった。
◆◆◆◆◆
あれ、ここどこ?
気づいたら広い部屋に来ていた。
高級感溢れる部屋で真ん中には高そうな横長の机、赤色の椅子。部屋の隅にある本棚には沢山の書籍が綺麗に整頓されて並べられている。
「ようこそ、私の部屋へ」
こ、ここが魔王様の部屋・・・。広いですね・・・。
前世の俺の部屋の五、六倍はある。それに部屋には扉が何個かついているからまだ部屋がありそう。
「さて、とりあえず。セリオッド」
「お呼びでしょうか、ザラ様」
セリオッドと呼ばれた白髪の執事服を来ており、丸メガネをかけたご老人が奥の部屋の扉から出てくる。肌の色は薄い褐色で耳が少しとんがっている。
ダークエルフ?なのかな?初めて見た・・・。
生ダークエルフに緊張する。
「紹介するね。この執事はセリオッド。執事長をしているんだ。ちなみに私専属だよ。セリオッド、この人魂はクロって言うんだ」
本名、クロサワ レイタですけどね・・・。
「人魂?もしやこちらが先程仰っていた?」
「うん、そうだよ。あ、今から大切な話があるんだ」
先程仰っていた?そういえば何でザラはあの場所にしてたんだろう?オーラがどうとか言ってたけど。まさか、俺から隠された力が出ていたとか!!
「大切な話・・・ですか?分かりました。少々お待ちください」
そう言ってセリオッドは部屋に戻っていく。
生執事すげ〜。話し方もThe執事だったよ。
「ふふ、セリオッドは執事歴が長いんだよ」
どれくらいなんですか?
「えーと、確か200年ぐらいだったかな?」
ブブゥゥゥゥ!!!!!!
は?に、にひゃくねん?ナ、ナガイデスネ・・・。
この世界でもエルフって長生きなんだ・・・。
「お待たせしました。・・・ザラ様、紅茶をご用意しました」
「お、来たね。クロ、そこの椅子に座って」
手を離され、椅子まで動く。
セリオッドはザラの目の前にカップを置く。
「クロ殿もこちらを」
そう言いながら目の前にカップを置く。
あ、ありがとうございます。口がないので飲めませんが・・・。
それを承知の上で置いたんだろう。ザラだけだしてお客である俺に出さないのは礼儀がなっていない。だからこそこんな姿の俺にも親切なんだろう。
なんて出来た執事なんだ!!
その親切さに感動を覚える。
「さて、セリオッド。今から話すことは他言無用だよ」
「心得ております」
「よし。・・・簡単に説明しよっか」
ザラは俺との出会いと俺が異世界人で前世の記憶を持ち、魂の姿で転生してきたことを話した。
◆◆◆◆◆
「なんと!!そんのようなことが・・・」
「うん。・・・ま!そういうこと。で、ここからが本題」
ザラは俺を掴み自分の膝の上に載せる。
「今度は声が響くようにしてあるよ」
「そうなんですか?・・・あ、声が響いてる」
なんでもありだな、魔王様。
「えーと、とりあえず、初めましてセリオッドさん」
「初めまして。いやはや、本当にクロ殿が元人間・・・異世界人とは。今こうして流暢に会話をすると疑いようがないですな」
「私が確かめたんだ。疑いようは最初からないよ」
そういえば俺、記憶見られたんだった・・・。
「さて、クロ。君に一つ聞きたいことがある」
「なんですか?」
「君はこの先、異世界で何をしたい?」
「え・・・」
そういえば何をしたいかなんて決めてなかった。とりあえず洞窟から出ることを考えていたからそんな暇なかった。
「えーと」
やりたいこと。
元の世界に戻る方法を探す?
多分向こうの俺、死んでると思うし可能だとしてもそれは出来ない。
とりあえず冒険する?
身体がないじゃん。一瞬で討伐されて終わり。
「うーん」
「迷ってる?身体がないからとか?」
「はい。それも悩む理由の一つですけど・・・」
「なら、クロ。私から一つ提案があるんだけど」
「提案、ですか?」
「提案というより取引。君の悩みの一つである身体の件、私が何とかしよう」
「え!本当ですか!!」
それは助かる!!まさか、こんなにも早く体が手に入るとは!!
「それで条件は一体・・・?」
まさか、ずっと働かせるとか?
「条件はね。私に異世界について教えてほしい」
「地球についてですか?それならお易い御用ですよ」
「そう、よかった!あともう一つ。またこうして私とお話をしようよ」
「お話ですか?」
そんなんでいいのか?明らかに俺の方がメリットがデカいが・・・。けど、それでいいなら喜んで。
「分かりました」
「うん。交渉成立だね」
ザラはニッコリとしながら俺を優しく撫でる。その姿を見て思う。
ー この人、本当に魔王様か? ー
次回もよろしくお願いします。