とりあえず異世界
今回もよろしくお願いします。
ー 黒澤 玲太はトラックに引かれ、気づいたら異世界に転生していた ー
ひとまずそう結論づける。
そして次に自身の転生先。異世界ラノベでよくあるどっかの貴族の息子とか田舎の小さな村のとある一家の息子とかそんなのじゃない。
魂・・・今の姿は人魂と言った方がわかりやすい。先程から青白いオーラを出しながら中に浮かんでいる。
せめて身体はあって欲しかった。
しかし、一度死んだはずなのにこうして違う世界で生きてるわけだし、感謝しよう。それに、深く考えたところで今の自分に何か出来るわけでもない。
とりあえず・・・どうするかな。前に行くか、後ろに行くか・・・。
見渡しても分かれ道や扉等はない。この洞窟は一本道のようだ。
どうしようか・・・。
その場でじっくり考える。
別にどっちでもいいじゃん?とか思って油断しているところにモンスター・・・なんて洒落にならん。
ここは異世界だ。いてもおかしくないだろうし、せっかくの二度目の生を一瞬で失いたくない。
うーん。前か後ろか・・・。
そう考えていると、
ー ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ ー
背筋が凍るのを感じた(魂だから背筋ないけど)。
ナニ・・・コレ?
前の方からだ。とてつもないオーラを感じる。
コレが魔力か?・・・いやいやそんなこと今はどうでもいい!!
咄嗟にその場から離れ、今自分が出せる全速力で後ろに逃げる。
何だよこのオーラ!!絶対強キャラだろ!!一瞬意識が飛ぶかと思ったぞ!!
必死に飛んで逃げる。まだ動くのに慣れていないため前世の全力ダッシュよりも遅い。
動きにくい!!けど立ち止まるな!!とにかく奥へ!!
すると、光が見えてくる。
出口か!!
迷わず進んだ。
◆◆◆◆◆
ここは?何だ?
進んだ先に広がるのはなんとも神聖的・・・というべきか、そんな空間だ。
色とりどりの花々が美しく咲いており、上からは光が差し込んでいる。そしてその差し込んでいる先に大きな石版があり、その下には花束が置いてあった。そして、その石版には文字が刻まれてある。
なんて書いてあるんだ?分からないけど、この感じ。誰かの墓かな?
そうだとしたらこんな立派な所に建てるぐらいだ。王族とか伝説の勇者とかだったりして。
そんなことを考えていると、後ろから先程のオーラが近づいてくるのを感じる。
ヤバい!!とりあえず隠れるところは・・・。
とりあえず墓の後ろに隠れる。
誰のお墓かは存じませんが失礼します!!
謝りながら隠れさせてもらう。
どうか気づかないでください・・・。
「そこにいる奴、姿を見せなよ」
って気づかれている!!てか来るの早!!
・・・それよりも女性の声だ。
「もう一度言うよ?姿を見せなよ」
マズイマズイマズイマズイ!!どうしよう。今、人魂だよね!!出てきたところ攻撃されたりしないよね!?
「はぁ・・・仕方ない。最後のチャンスだよ。墓の後ろにいる奴。さっさと出てこい。私はこの場では出来れば争いごとはしたくない。けれど出てこなかった場合害のあるものとみなし、即座に殺す」
殺す!?・・・仕方ない。一か八かだ。
「はぁ・・・仕方ない。なら・・・」
すいませんでした!!!
俺は墓の横から姿を現す。そして思いっきりぺこりと地面に頭(頭無いけど)をつけ土下座のポーズをする。
魂だから土下座かどうか相手からしたら分からないけど・・・これが俺の気持ちだ!!命だけはどうかァァァァ!!!
決して相手の姿は見ない。もしかしたら全身ムッキムキの強者感溢れる女性かもしれないし、顔見た瞬間に『お?何見てんだ貴様。処す』なんてされたら嫌だ!!
「・・・オーラの正体は人魂?・・・そこの人魂。私の言葉が分かるならこっちに来なよ」
そう言われ、選択肢がない俺は少しずつ近づく。
「敵意はないか。さて、・・・少し見るか」
見る?・・・何を?
そう思った瞬間、その女性の手が俺に触れる。
すると、
「何だ・・・この記憶。この世界は一体・・・異世界か!?・・・転生した?」
ん?この人異世界とか転生とか言ったよね?相手の記憶を見れるのか?
そう思っていると、
「君、名前なんて言うの?」
ガシッ!!
両手で掴まれる。俺は反射的に女性の顔を見てしまう。
目の前には赤紫色の綺麗な長髪の女性。顔は人形のように整っている。顔だけで食っていけるだろうというレベルだ。
な、名前ですか!!えーと、黒澤 玲太といいます。・・・っていうか喋れないから聞こえないよね。
「聞こえているよ。へー、クロサワ レイタっていうのか」
え?なんで聞こえているの!?
「ふふん、私にかかればこのくらい楽勝だよ」
そ、そうなんですか・・・。異世界ってなんでもありですね・・・。
「なんでもあり・・・ね。やっぱり君は異世界人だよね?」
はい。精神だけですけど。転生したらこんな姿になっていて・・・さっき目覚めたばっかりなんです。
「なるほど、・・・うん、納得だね」
何がですか?
「こっちの話さ。あっ、自己紹介がまだだったね。私の名前はザラ・アビスリオン。よろしくね、クロ」
クロ?
「クロサワだからクロ。こっちの方が呼びやすいでしょ?」
はっ、はい!!
美人さんの笑顔には弱いクロです。先程まであんなにビビっていたのに美人とわかった今、先程の恐怖が嘘のようだ。
「私の事はザラでいいよ」
わかりました。
ザラは満面の笑みを浮かべる。
「とりあえずここで立ち話するのもあれだし、ひとまず出よっか」
出れるんですか!!よかった〜。
やっと出れる。そう思い安堵する。
「あ、その前に少し待っててね」
そう言ってザラは手を離し、大きな石像の前に行き、手を合わせる。
もしかしてザラの家族の墓なのかな?・・・聞かないようにしよう。亡くなったご家族の事を思い出させたら申し訳ないしな。
そう思いながらザラを待つ。
「お待たせ。出よっか」
◆◆◆◆◆
ザラと向かう最中、地球のことについていろいろと聞かれた。
「へー、チキュウは魔法とかないんだー。それで魔法の変わりにカガクってのが発展しているんだね。うんうん、ここまでは文献通り」
文献?もしかして俺以外にも異世界人いるんですか?
「そうだね。はるか昔に″召喚″されたっていう記録なら残ってる、けど当然、今は生きてないと思うよ」
そうですか・・・。
お互いに話している内にいつの間にか大きな扉の前に着いた。
思ったより広かったんだな、この洞窟。
「さて、出ますか」
ザラは手を扉に向ける。
すると、扉に何重もの魔法陣が広がり、
ー カチカチカチカチ ー
その音と共に魔法陣が無くなっていく。
もしかして鍵の役割なのかな?というか俺、ザラと合わなかったら出られなかったパターン?出会えてよかった〜。
「これでよし。さて、ようこそ異世界へ、クロ」
扉が開き目の前には広大な森が広がっている。
おおおおお!!!!!これが異世界!!
俺は外に飛び出す。
何ともファンタジー!!日本にはあんな大きな木とかないぞ!!あっ!あっちには見たことがないキノコ。食べたら多分死ぬな、紫色のドクロマークみたいな模様だし!!
「どうだい、異世界は」
ガシッ!!
両手で掴む。もしかして掴まないと俺の声が聞こえないのかも。
とりあえず反応を返す。
素晴らしいです!!
「そうか。私からすればいつもの景色なんだけどね」
ザラはこちらを見て笑みを浮かべる。
さっきまでのオーラはとっくんに無くなっている。
「さて、ひとまず国に帰るか!」
国?どこの国ですか?
「どこの国?もちろん私の国だよ」
あぁ、ザラが住んでる国か。
「うん、私が住んでいて、私が治めている国」
うん?
ザラをつい見てしまう。
今なんて言いました?治めている?
「そうだよ」
え、ザラさん。王様・・・王女様だったんですか?
問いかけにザラは笑う。
「あ!言ってなかったね。なら再度自己紹介をしよう」
ザラはハキハキと喋る。
「ここからずっと先にある国、名はアスタル。私は亜人連邦 魔王国 八代目魔王ザラ・アビスリオン。以後よろしく、クロ!!」
えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!
ー 異世界転生して最初に会った人が、どうやら魔王でした ー
次回もよろしくお願いします。