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転生悪役令嬢、ヒロイン♂に攻略されて暗躍中  作者: 阿部花次郎
第二章 ドロシーの婚約者
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 わたしは自室ベッドルームに帰るなり、大きく『死亡ルート回避案』と書かれた紙を取り出した。

 作戦を練り直さなくちゃいけない。

 友達のサクラのために。


 『憂国の聖女とフォルトゥナの騎士』はどんなストーリーだったか。

 前世の薄い記憶を必死で探る。


 好感度が一定値に満たないことで進むバッドエンドルートは、その時点で一番好感度の高いキャラに見送られて、ヒロインは一人で元の世界に帰される。ヒロインは無傷だ。攻略キャラは死ぬが。

 しかし大きな問題が一つある。

 『憂国聖女』は、半分がRPGパートで構成されている。

 攻略キャラの個別イベントでしか習得できない、上位の剣技や魔法。取りこぼすと戦いが厳しくなる。

(弱いままじゃ、サクラがザコ戦でやられてしまう可能性があるわ)

 コンティニューボタンなど、あるとは思えない。

 となると、個別イベントを無視してバッドエンドを目指すのは、なしだ。


 一方グッドエンドルートは、ヒロインに選ばれた攻略キャラが新しい王になり、ヒロインと二人で、この国を末永く治めるというもの。

 この国では、王の選出は血筋よりも預言が優先される。

 次の王は聖女に選ばれた人物。

 預言で、すでに国中に周知されていることである。



(でも、男の子だしなあ)

 サクラは、どんなに見た目が美少女でも、中身はゴリゴリの男の子だ。

 多分、絶対、男と結婚なんて嫌がる。


 ここまで書き留めて、

「そうなると、女王エンドかしら」


 女王エンド。

 いわゆるハーレムエンド。

 戦闘能力値と、全員の好感度をMAXにすることで進める、隠しエンドだ。

 確か、この世界に止まるか、元の世界に帰るかの選択肢もあったはず。


 そうなると、これまでと真逆のアプローチをするしかない。

 攻略キャラ全員をサクラに惚れさせるのだ。

(あの美貌があれば楽勝なのでは?)



 ちょうど考えがまとまったところで、ドアがノックされた。

「エルネスト殿下から伝書鳩で贈り物が届きました」

 メイドはそう言ってわたしに小箱を差し出した。

「ありがとう。後でお礼のお手紙をお送りしますわ」

 寮のメイドたちは、今のわたしにすっかり慣れた。

 小さくおじきをすると、すぐに退室する。


 エルネストとは、攻略キャラの一人で、わたしの、悪役令嬢の婚約者だ。

 ゲームでは知らなかったが、エルネストはドロシーに月一度、贈り物をしてくる。

 怒らすとめんどくさい、わがまま令嬢の機嫌取りのためだ。


 そういえば……

 ドロシーのヒロインいじめから発生する、エルネストとの出会いイベント。

 回避したままだった。

 果たして取り返せるだろうか。

 

 同じような状況を作れば、イベントが発生する可能性はあるが……。


(サクラをいじめるのは嫌だなあ)

 どうしたものか。




 翌日、特訓を終えてサクラと別れて寮に帰ると、長身の男性がいた。

「お嬢様、エルネスト殿下が会いにきてくださいましたよ」

 メイドが嬉しそうに手招きする。

 銀色の長い髪に、青い瞳。

 もちろん、イケメン。超絶イケメン。

 攻略キャラその1、エルネストだ。


 なんで?


 わたしは失礼のないように、挨拶をした。

「エルネスト様、なぜこちらに?」

 エルネストは怪訝な顔で、わたしの顔色をうかがった。


「君から、お礼の手紙をもらったから……」


 言われて、自分がドロシーらしからぬ行動をしてしまっていたことに気づく。

 いつものドロシーの手紙は、毎回50枚にも及ぶ。

 半分は日記、もう半分は自慢話。

 今回はビジネス的なお礼状を、ぺら一枚を送ってしまった。

(しまった。社会人の癖で)

 いつもと違うことをしたので、とてつもなく怒っているのではと、様子を伺いに来たのだろう。


 しかし、これはチャンスだ。

「エルネスト様、お時間があるようでしたら、紹介したい方がいるのですが」

 すんごいめんどくさそうな顔をされた。

 逃すものか。

「わたくし、その方に出会って変わりましたの。とっても素敵な方ですのよ」

 ふふふ。

 気になるでしょう?

 わがまま放題の傲慢令嬢を、まともに変えた女の子が。


 エルネストは驚いた顔をしてから、少し考えて、承諾した。

「わかった。会ってみよう」

 わたしは心の中でガッツポーズした。

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