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 上半身裸のまま固まるサクラ。

 固まるわたし。


 生で見たのは初めてだけど、わたしにだってわかる。

 女の胸なのか、男の胸かくらいは。


 サクラはわたしの腕をぐいと引っ張って、ドアを慌てて閉めた。

「ドロシー」

 顔に、いつものような笑顔はない。


「このこと、内緒にしてくれないか」

 このことって聖女様が男だったという話よね?

 わたしは混乱した。


 ヒロインが男……。

 ゲームの進行はどうなるのだろう。

(乙女ゲームじゃ、男同士は結ばれないからバッドエンド確定?)

 それともBL?BLゲームだったの?

 だとしたら、なんかショックだ。(BLが嫌いという意味でははなく)


「ドロシー……」

 サクラがこちらを不安げに見ている。

「あ、え、ええ。もちろんです。秘密にします」

 それを聞いてサクラは、ほっと胸を撫で下ろした。


 ゲームでは……ヒロインの他にもう一人、異世界から召喚された人物がいる。

 ヒロインの元の世界でのクラスメイトで、攻略キャラの一人だ。

 聖女の儀で、聖女と一緒に「男」が召喚されたと大騒ぎになり、そのキャラは幽閉されてしまうのだ。

 ヒロインは、その男の命を保障するならばと、魔王と戦うことを王に約束する。


 つまり聖女自身も男だとバレたら……サクラも殺されてしまう可能性が高いのだ。

(それは、絶対にダメ)


 そう、最初から彼の容姿には違和感があった。

 多くの乙女ゲームでは、ヒロインの顔は描かれない。

 プレイヤーがヒロイン=自分だと思えるように。

 ゲーム『憂国聖女』のスチルでも、ヒロインは後ろ向きにしか描かれていない。

 だが、『憂国聖女』のヒロインはロングヘアーなのだ。


 目の前にいる彼は、同じ黒髪ではあるものの、少しはねた短髪。

 いちプレイヤーの投影かと思っていたが、目の前の美少女は、見れば見るほど美少年にしか見えなくなってきた。


 ふと思い立ち、

「サクラ様、こちらで少々お待ちいただけますか?」

 そう断って、わたしは部屋を立ち去った。



 大荷物を持って、自室から戻ったわたしを見て、サクラは驚きの声をあげた。

「何、それ」

「化粧品ですわ」

 そう言って、鏡台の前にサクラを座らせる。

「それと、ウィッグにお洋服。メイドに用意していただきましたの。」

 化粧品の蓋を開けて、サクラの顔を見る。


 毛穴ひとつないツルツルのお肌に、長い睫毛。

(ファンデーションは要らなそうね……えっと口紅はこれかしら)

 赤いものを指につけ、サクラの形の良い唇につける。

(あら?ほっぺが真っ赤だわ、流石は高校生。血色がいいのね)

 ゲームの設定ではヒロインは16歳。

 ついでに言うと、ドロシーは17歳だ。


 なんとか化粧を施した。


「どうかしら!」

 これなら男には見えないはず。多少けばけばしい気もするが……。

「どうって……」

「だ、ダメ?」

「こんな女がいたら、近づきたくない」


 濃いアイメイクのせいでサクラの表情は読めない。

 ……呆れている気はする。

 だが、前のドロシーはメイドに任せっきりで……前世の地味なわたしにも、化粧の技術なんてなかった。

 どうしたものか。


 ふうとため息をつき、サクラは化粧を落とした。


「見せて」

 そう言って、サクラはわたしの顔を覗き込んだ。

 息が当たるほど、距離が近い。

 美形耐性ゼロの、わたしの心臓がバクバク言ってる。

「よし」


 サクラはわたしを見本に、自ら化粧をした。

「こんなもんだろ」

 美少女がいた。

 見たことないレベルの美少女がいた。


 男子高校生にすら女子力で負けるわたし。

「お、お洋服のコーディネートは、わたくしにお任せください!」

 これなら自信があった。


(イベントスチルで見てるもの!)


挿絵(By みてみん)

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