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*挿絵が出ます

 悪役令嬢には、神の加護がなさそうなので……。

 聖女様と仲良くなるには自力しかない。


 授業中。

「サクラ様、研究課題、お手伝いいたしますわ」

 休み時間。

「中庭は人でいっぱいです。裏庭なら落ち着けますわ」

 単純接触効果。

 会う回数が多いほど、好意はもたれやすい。

「一緒にお花摘みに参りましょう」

「い、いや、それはちょっと…」

 これは断られた。


 だがドロシーは初期値が低いのだ。

 果敢に声をかけるのみ!


「サクラ様はこちらの文字が読めないですわよね。授業のこと、わたくしになんでもお聞きください」

「ああ、じゃあここ……」

 魔法学のテキストを差し出される。

 余白には、聞き取った日本語で、びっしりとメモ書きがしてある。

 さすが、努力家だ。


(あ、あら?)

 だが、テキストの内容が全然わからない。

 そういえば、前のドロシーは、全く勉強をしていなかった。

 「ま、先ずは音読いたしましょう」

 文字は一応、わたしでも読めるのだから。



 その晩、わたしは図書室から魔法関連の本を大量に借り、寮の自室に戻った。

 寮の自室と言っても、6畳間とかではない。

 例えるなら、タワーマンションのワンフロア。

 生家によって割り振られるので、侯爵令嬢には専属メイドもついている。

 そのメイドたちが、本を持って帰ってきたわたしを見て、頭を打っておかしくなったのかしら、と青ざめていた。

 無理もない。


 かまわず、持ち帰った本を読み進める。

 わたしは元々オタク気質。

 本を読むのは苦じゃない。

 魔法知識があれば、聖女様に近づく口実になる。

(ゲームの知識もあるしね)



 それから、わたしと聖女様は、裏庭で魔法の特訓をするようになった。

 舎屋から離れ、うっそうと木が生い茂る裏庭には滅多に生徒が来ない。

 いつもの学友たちは、面倒なことになるので、まいてきている。

「そうです。手のひらに集中して……」

 聖女様は、あっという間に、いくつかの魔法をマスターしてしまった。

 さすがは『憂国聖女』のヒロイン。

「完璧です!」

 わたしが褒めると、聖女様が柔らかく笑った。

 よしよし。仲良し作戦、いい感じ。



「ドロシーはどんな魔法が使える、ですか?」

「わ、わたくしですか?」

 木陰で休憩中。

 いつもと同じ、ちょっと不自然な敬語で聖女様がわたしに尋ねた。

「わ、わたくしは魔法適性が低くて……」

 わたしが使える魔法の数は、ゼロだ。

 自衛のためにも習得しておきたかったが、全く進歩しなかった。

 そもそも、魔力ってなに?


「適正がないのにこんなに勉強してるなんて、ドロシーは努力家なんだな」

 ドロシーが努力家?

 そうじゃない。聖女様は『わたし』を褒めているんだ。


「いつもありがとう。」

 聖女様はわたしに謝意を述べて、微笑んだ。

「ドロシーが友達になってくれて、本当に助かったよ」


 友達……?

 わたしに友達ができるのは、学生時代以来じゃないだろうか。

 社会人になってから、友達ができるようなことをしてこなかった。

 学生時代の友達も、新生活に遠慮してしまって、徐々に疎遠になった。

 自ら関わろうとしなかったのだ。


 わたしは浮かれた。


 友達!

 新しい友達!

 こんな美少女で!優しい!友達!!


(よーし、もっと仲良くなっちゃうぞー!)


 仲の良い友達って何をするかな。

 一緒にお出かけとか、パジャマパーティとか?

 あとは一緒に登校とか!


 ちなみにわたしの友達感は、学生時代で止まってる。



 翌朝、浮かれたままのわたしは聖女様、いや、友人サクラの部屋に向かった。

(思い切って、部屋に迎えに行っちゃお)

 聖女様の住まいだが、一般生徒と同じ、小さな部屋。

 ノックと同時に部屋を開けた。

「サクラ様、一緒に登校いたしましょう〜」


 そこには、着替え途中で上半身がはだけた、驚いた顔のサクラがいた。


 サクラの裸の上半身。


挿絵(By みてみん)


 ……胸がなかった。


(いや、貧乳という意味ではなく)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 5話まで読ませていただきました♪ よもやの男の娘!ってタイトルにあったね(笑) ブクマさせていただきます♪ [気になる点] 一点だけ。 二次創作にならないよう御注意ください。 [一言]…
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