勇者生誕 其ノ二
「これから、騎士団長会議を始める。
さて、皆も聞いていると思うがザルクレム皇国で『世界勇者選別戦』が行われることになった...」
もぐもぐ...パリッパリッ(葉野菜)ブチッ(恐ろしく硬い肉)ゴクンッ..ゴクッゴクッ...
「...というわけで、団長諸君には...が...で、....をしていただき、....を...」
もっしゃもっしゃ...あっコレうめぇ...ゴクッゴクッ...
「プハァ!ウッマ!」
「やかましいっ!」
「お?」
なんか第一団長から第五団長まで全騎士団長がこっち向いてんだけど...はっ!わかった!この第五団長が近いから聞いてみるか。
「食べます?」
「い、いや..遠慮しておくよ..ところでデスラン近衛騎士団長がすごい形相でこっち見てるけど...」
あっ、なるほど!
「デスランさんも食べます?」
「いるわけないだろうがこのアホっ!」
えっちがうの..?
「貴様...今何をしているか分かってるのか?」
「ん...?お昼ご飯....」
「違うだろうっ!今は騎士団長会議をやっているというのに、なぜ貴様だけ昼飯を食べておるのだ!」
なぜ...なぜ..?
「お腹が空いたから...」
「なぜだ..なぜこやつにはワシの言いたいことが伝わってくれんのだ...」
あっデスランさん...もうめんどいからハゲでいいや。ハゲが項垂れた..あれ?回答間違えた?
「えーっと..アルドルフ団長..多分デスラン近衛騎士団長が言いたいのは会議中にご飯を食べるなって言う至極真っ当な意見だと思うけど...」
なるほど!それが言いたかったのね!じゃあそういえよ(クソ野郎)
「えー...でもこの【エルム貝の悪夢】早いうちに食べなきゃ鮮度が...」
「なんだその恐ろしい料理名は...」
えー恐ろしいなんて...
「食べてみてくださいよ!」
『うぁァ..シニたクない..いやダァぁあ..やメてくレぇ...』
「.....これ喋ってないか?」
「え?」
何言ってんだこのハゲ食べ物が喋るわけがねぇだろうが...
「もー何言ってるんですかー...まったく..こんなに美味しいのに..」
パクっ..モグモグ...チュルッ...やっぱ身がプリプリしてんなぁ..ブチッ..パリッ..
『ァァァァあァああぁぁァァァぁ...』
「お、おう...(ちょくちょく食べてる肉も野菜もちゃんとしてるものなのか怪しいぞ..?)と、とにかく..先程言った概要を説明するぞ?」
「あ、はい。お願いします」
ふぅ..美味かった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「...というわけだ。」
なるほどね..騎士団長全員に招待状が来てるから先に騎士団長同士で一位を決めてもらって、代表という形で出すってことか...少しでも滞在戦力を残しておきたいのかね...?
「明日には訓練場に集まるように..さあ、どの騎士団長が武力の点で優れているのか..見せてもらおうか..このワシも気になるものだからな...しっかり見させてもらう...」
おおん?何様だこのハゲ...あっ一応上司か。明日が本番だったな..よし、色々と仕掛けさせてもらおうか...へへへ(ゲスい笑み)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「よし!これで全騎士団長は集まったか?」
「あのう...」
「どうしたガンファスト」
「アルドルフ団長は..?」
「あ..?あやつは確か開始前にここに集まっていた筈だが..ワシも「よく時間前に集合したな」と褒めていたというのに...」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
「「「「「.....」」」」」
「お呼びでない?お呼びでない?あらそう。ではっ!」
「ではっ!じゃないわい!」
ぐえっ..騎士甲冑着てるやつの首根っこつかんでぶら下げるとかどんな腕力してんだよ..
「うぐっ...」
「で?何をしていたのだ」
なにをしていたってそりゃ工作だよ。まあそれを馬鹿正直に言うわけじゃないんだけど
「少し..お花をつみに..///」
「気色悪いわ!全く...すぐに並べ..始めるぞ」
へっへっへ...ハゲめ..勇者になってグータラ生活を送るのはこの俺だっ...
「では、第一回戦。第五騎士団長ガンファスト、第二騎士団長エルグレイダ、前へ!」
ほう..ガンファストは【不動】とも言われる守りの名手であり、盾のように幅の広いガントレットを用いて戦う。そのため、守りに重きを置いているが、攻守共に優れた戦い方をする。非常にやりにくいやつだ。
エルグレイダはその逆。ほとんど攻撃に特化したような奴だ。なんでも『カタナ』などという片刃の反りのある剣を使うのだが、表面にまるで水面のような波紋があり、美しいものだった。
おっと、武器の方に思考が逸れてしまった。やつは女の身でありながら騎士団長までのし上がった剣豪だ。剣技では俺は逆立ちしても勝てないだろうな..
ちなみにあいつは人斬りの快感を覚えた危険人物なので、近づこうとする男は犯罪者扱いされ斬られる。おっそろし..
「両者位置につけ...始めっ!」
そのかけ声を合図にエルグレイダが走り出す。カタナは鞘に納めたままだが、そのまま近づいていく。早く抜かないと斬るものも斬れないと思うのだが...
「アーハッハッハッ!!くたばれっ!」
うーわ本性でたよ..なんであんな目付き出来んの絶対に世に出しちゃいけないタイプの人間だろあいつ..
エルグレイダはそのまま駆けていき、ガンファストがヤツのカタナの射程距離に入った瞬間、
「風斬ィィ!!」
そう叫びながら高速でカタナを抜き放ち、ガンファストのガントレットと火花を散らしていた。...あー、あれだ、どっかの国のサムライとかいう奴等が使うバットウジュツとかいうやつだ。技名を叫ぶのは何故か分からないけど..
「舐めないでもらおうかなっ!」
そんなくだらないことを考えている内に鍔迫り合いはガンファストの力に耐えきれなかったエルグレイダが後ろに下がり、仕切り直しとなった。ガンファストは見た目だけなら筋骨隆々の大男だからな。顔が優男で性格も体とは真反対の平和主義だけど、女性であるエルグレイダに勝るほどの腕力はある。
「フッ!」
次はガンファストの方から距離を詰めていく。対するエルグレイダはカタナを下段に構え、じっと待つ。
「よい、しょっ!」
ガンファストが取った攻撃方法はドロップキック。エルグレイダはさすがに想像していなかったようで受け流しのために用意していたカタナを下げ、回避行動を取った。そりゃそーだ。俺だって全身鎧着てる大男がドロップキックして来たらビビるわ。てか逃げるわ...
「ホッ!」
ガンファストはそのまま空中で体制を整え着地したかと思うと、最初の守りの動きとはガラッと変わった攻めの動きへと変わった。すぐさま、エルグランダの元へと距離を詰め、蹴りや拳で攻撃を重ねていく。
だがエルグランダも人を斬ってきた経験豊富なキチ〇イだ...経験豊富なキチ〇イってパワーワードだな..ともかく、エルグランダはガンファストの殴りや蹴りを時にはギリギリで見切って避け、時には刀で弾く、受け流すなどをして高速の戦闘を繰り広げている。うへぇ...俺は真面目に戦うなんてことしないから恐くて参加できませんねへっへっへ..(ゲス顔)
両者とも攻防を繰り広げて疲れが溜まり始めたその時、終わりは唐突に訪れた。
「くっ!」
エルグランダが苦し紛れに放った斬撃の途中でカタナをガッチリと捕まえられてしまったのだ。
「よっ!」
ガンファストはこれを好機ととらえ、エルグランダの手首を殴り付け、それにエルグランダが怯んだ隙にカタナを後方へ放り投げ
エルグランダの胸ぐらを掴み、持ち上げた...だからどんな腕力してんだよ。
「まだ、やります?」
「..流石だ、第五騎士団長。降参だよ..」
1回戦は第五騎士団長ガンファストの勝利で幕を閉じたのだった
みじかくなっちゃうなぁあ...区切りって難しい