はじめてのうらぎり
やっべぇ筆が進む進む...
ターノフィーーー!!
勇者、という存在がいる。この言葉を聞いて皆が思い浮かべる人物といえば聖剣を持って、聖人君子で、さらに具体的にはパツキンのイケメンでお姫様と結婚...的なやつだろう。
まあ、なろうの住民の場合、復讐だとかハーレムだとか魔王と仲良くなっただとか勇者召喚側から裏切られてまた転生するとか..いろいろな勇者を想像するだろう。
魔王、という存在もいる。この言葉を聞いて皆が思い浮かべる人物といえば黒い!なんか黒い!角生えてる!めっちゃつおい!お前めっちゃ上から目線だよね...結局舐めプして勇者にボコされるかませ犬!!...的なやつだろう。
まあ、やっぱなろうの住民の場合、召還された勇者が裏切られた挙句に..とか、魔王というのが元は英雄と呼ばれていた...とか、敵軍からは魔王と呼ばれてるとか...こちらも、いろいろな魔王を想像するだろう。
これは、作者がノリと勢いで書いたストレス発散のための英雄譚である....
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ある男が暗い通路を音を立てて歩いている。
よく目を凝らしてみると、何かを引き摺っているようだ。
「ウゥ...ウゥ..」
引きづられる度に呻き声が聞こえるが男はその事を気にしない。
男は観音開きの大扉の前で立ち止まった。
ドゴォン!
扉はゆっくりと開こうとしていたが男はイラついたように扉に前蹴りを食らわせた。
「ウオォッ!」
扉が開いた先の階段の上、全てを見下すように配置されている王座でふんぞり返っていて「それっぽい」座り方をしていた大男が驚き、のけぞる。
男には天を突くように二本の角が頭頂部から生えており、黒い衣をまとっている。だが普段は不遜な笑顔を作っている顔は驚きと恐怖で固まっていた。
「扉が開くのがおせえっ!」
「そんな理由でムードぶち壊した勇者はお前が初めてだよ!..
ごほん...よく来たな勇者よ..どうだ?今、この場で吾輩と手を組むと言うのなら世界の半分をお前にくれてやろう...」
男はぶち壊されたテンプレムードを守ろうと、必死で声を作り、勇者に問いかける。
「....少し待て、考える!」
「ウォイ!」
だが無駄だったようだ。
「考えちゃダメだろ!お前勇者だろ!そこは『そんなわけにはいかない!俺は...お前を倒す!』的なこと言って戦闘が始まる流れだろ!考えるなよ!キャラ守ろうよ!」
「だが断る!」
「断るなよ!あとお前『やった!言えたこのセリフ!』みたいな顔してんじゃねえよ!」
「だって世界の半分だろ?そりゃ考えるよ。俺も人間だもん。」
「そうだけど...確かに悩むかもしれないけど...!『仲間が今まで助けてくれたこの命...お前を倒すために!』みたいな感じで進めろよ!あとそういえばお前の仲間どこ行った?!たしか神官と戦士と魔術師とあとー、なんだっけあのかわいい動物えと..キュウッ!て感じで鳴く可愛いやつ..」
「エンシェントドラゴンの幼生体?」
「そう!たしか【ミント】って名前のやつ!」
魔王はツッコミの勢いのまま勇者に問いかけた。先程とは全く違うテンションと声音だが気にしないようだ。
「あいつらは...いいやつらだったよ..」
勇者はあさっての方向を向いてそう言った。
「おい?すこしこっち向いて喋ろうか?ん?それに俺は【遠見の宝玉】でお前らの攻略は見てたけど少し前までは確実に居たよな!」
「いや...まあ..罠の階層で..ね?」
「なるほど、罠で全員やられたということか。やはり罠に対する備えはしてi「俺が身代わりにした」
「?!?!?!」
魔王は鯉のように口をパクパクさせた。さすがにその答えは想像していない。
「身代わり?!身代わり!?!えっ!お前!えっ!」
あまりの驚きに言葉が出ない魔王。
「一応言っとくけど俺はお前らのパーティなら確実に来れるくらいの罠しか置いてないぞ!時間かければ魔術師だったりが解読してくれるはずだろ!」
そうなのだ。魔王はバカなのか「おいちょっとまて語り手は語り手で俺に攻撃的過ぎないか?!」全ての難易度を高くはしていたが、ギリギリ全員が魔王のいる場所までたどり着ける程の難易度にしか調整していない。
「いや、だって、時間かかるじゃん?」
「?!なに?時間がかかるから時間短縮のために味方犠牲にしてまで急いだの?!え!」
「めちゃめちゃ時間かかるなら帰るの遅くなるし..帰って娼館でキャリーちゃんとイチャコラできなi...人類の平和が一秒でも早く訪れるようにだ!」
「いや、早くしなければ行けないのはわかるけど味方犠牲にしたらダメだろ!というよりお前本音隠して建前展開するの遅いからな!」
「とにかく!魔王!俺はお前を倒すっ!ヘンリーちゃんのためにもっ!ついでに仲間っ!」
「仲間の扱い雑っ!好感度が味方より娼館のいち娼婦のほうが上、って初めて聞いたわ!あとついでかよ!」
あぁ、やっと戦闘シーンに行ける。おっと失礼。つい本音が。だが双方が構えた時に魔王は勇者が引き摺ってるものに気づいた。
「え?お前引き摺ってるやつ...なに?」
魔王は震える声で勇者が引き摺ってるモノを指さし、問うた。
「え?...あぁ、お前の幹部。」
「え?死天王としてそれぞれの階層に配置することで簡単なやられ役にして盛り上げ役になってもらおうと思ってたのになんで生きてんの?え?」
「肉盾にしようかと」
「勇者がやっていい言動じゃねえだろこれ!」
「お前もやられ役にして盛り上げ役とか言って使い捨てする気満々だったじゃねぇか!」
「そうだねっ!よく考えたらどっちもひでぇなっ!」
引き摺られていた幹部は泣き出した。
「ひどいっ!...魔王様がそのように思っていらしたなんて..私は魔王様に無理やりっ..体までも奪われたというのに..」
「おいちょっと待てぇぇぇぇいっ!身に覚えがないことを言い出すんじゃねえ!」
「魔王...お前....」
「ちげぇよっ!俺は何にもしてねぇ!」
本当である。
魔王は基本的にチェリーボーイなのでそんな度胸もないし、無理やり犯すなんてことも出来るはずがない。
「勇者様っ!私を助けてっ!」
「この...魔王めっ!」
「おいイザベラお前さっきまでそいつ(勇者)がなんて言ってたか覚えてる?なあ。肉盾にしようとか言ってたんだぜそいつ。」
「根も葉もない言葉で俺の味方を騙そうとするなっ!」
「あっれぇ...おかしいな..そいつは俺の陣営だったんだがなぁ..なんでひどい仕打ちを受けた幹部が泣きついたみたいになってんの?あるぇ?」
確かにひどい仕打ちをしたことは間違ってはない。魔王は捨て駒に使ったも同然なのだから。だが、それで簡単に裏切る幹部-イザベラ-もどうかとは思うが。
「さあ!魔王!お前を倒す!観念するがいい!」
「いや、ごめんtake2だし熱くなってるとこ悪いけどさすがに尺が尺だから一旦切ろうぜ。また今度再戦しよーゆうしゃー」
ポチッ
「魔王お前適当すぎるだろ!さあ!すぐに戦いをっ...」
ガシャン
「アアアァァァァァァァァァァァ...」
「きゃァァァァァァァァァァァァ...」
魔王は落とし穴のようなものを事前に設置していたようである。尚きちんと落とし穴の底にはワープゲートが開かれているようで勇者達(イザベラ含む)は無事魔王城の1つ前の街に安全に転送させられたようだ。そういうところがつけこまれてるんだよあほか。
「えぇ....語り手の平等性はいずこへ..」
そんなもんは無い。とにかく今回のお話で勇者が魔王を倒すことは出来なかったようだ。次回のお話に期待しよう。
では。